Blog
日米が関税交渉で合意
トランプ米大統領は23日、日本と米国が関税交渉で合意に達したと発表した。今回の合意により、2025年と2026年の日本の実質GDP成長率は、自動車関税および相互関税が25%のままの場合と比べ、0.4ポイント程度改善するだろう。
2025.07.24
トランプ米大統領は23日、日本と米国が関税交渉で合意に達したと発表した。合意には、米国が日本からの輸入品に課す相互関税を15%とし、日本が米国に5,500億米ドル(約80兆円)を投資することが盛り込まれている。またトランプ大統領は、日本が自動車、トラック、コメおよび特定の農産品に関して米国に市場を開放すると述べた。自動車に4月3日から賦課されている25%の追加関税も引き下げられ、関税率は合計で15%となる。
日米の合意内容は、自動車関税の引き下げが予想外だったことで、市場の期待を上回るものとなった。東証株価指数(TOPIX)は23日に3.2%上昇し、円は米ドルに対して上昇した。
今回の合意により、2025年と2026年の日本の実質国内総生産(GDP)成長率は、自動車に対する関税と相互関税が25%のままの場合と比べ、0.4ポイント程度改善するだろう。特に、産業の裾野が広い自動車の関税引き下げの影響が大きいと考える。自動車は米国に対する日本の輸出の約30%を占めている。
しかし、15%の関税による輸出と企業収益の減少、それに伴う設備投資と消費の停滞は、相互関税なしの場合と比べ、実質GDPを年間0.4ポイント程度下押しするだろう。今後は、秋に補正予算が策定され、2026年に入れば現金給付や食料品に対する消費減税などが実行されて、景気は徐々に回復すると考える。
日銀に関しては、現時点では年内の利上げはなく、次回利上げは2026年半ば以降とみている。しかし、今回の関税交渉の結果と補正予算による景気刺激策を考慮して、利上げを前倒しする可能性もある。
我々は米連邦準備理事会(FRB)が年内に利下げを再開する可能性が高いとみており、ドル円は中期的に下落傾向を示すと予想する。短期的にはドル円の変動が大きくなるとみており、米ドルの余剰な保有分を他通貨へ分散することを勧める。
日本株については、自動車関税の引き下げによる日本企業の業績への影響が大きいと考える。今回の合意により、日本企業の1株当たり利益(EPS)は、今後1年間で2-3%押し上げられるだろう。自動車関税の引き下げと最近の円安を踏まえ、我々は2025年度(2026年3月期)の企業業績予想を前年度比2%の増益(従来は同1%の減益)、2026年度(2027年3月期)を前年度比5%の増益(従来は同4%の増益)に修正する。自動車、機械、ヘルスケアセクターの売られ過ぎかつ高クオリティな景気敏感株は、中期的なリスク・リターンが魅力的なため、投資妙味があると考える(詳細は7月1日付日本株式レポート「1Q決算に向け、売られすぎの高クオリティ銘柄を追加」を参照)。

UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント株式会社
チーフ・インベストメント・オフィス
ストラテジスト
小林 千紗
さらに詳しく
チーフ・インベストメント・オフィスにて、ストラテジストとして株式の調査分析、テーマ投資、SI投資などを担当。投資銀行部門での経験を活かし、幅広い業種についてマクロ・ミクロの視点から投資見解を提供している。
2013年11月に入社。それ以前は米系・欧州系証券会社にて株式アナリストを務める。

UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント株式会社
チーフ・インベストメント・オフィス
ストラテジスト
石井 一正
さらに詳しく
2024年9月より、UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメントにて、ストラテジストとして国内外のマクロ経済・政治情勢の分析を担当。
UBS入社以前は、内閣府にて経済財政白書の執筆等のマクロ経済の調査分析、「骨太の方針」をはじめとする政府方針の策定に従事。2011年ミシガン大学経済学修士課程修了。