CIO Alert
米国ITセクターをNeutralに引き下げ
CIOでは、米国のITセクターをNeutralに引き下げた。これはAIへの投資機会が米国ITセクター以外にも存在することを意味し、テクノロジー銘柄全体、AI関連銘柄、米国市場全体への戦略的な投資を勧める。
2026.02.10
何が起きたか
テクノロジー株は先週、AI関連の設備投資額増加や、AIの進化がソフトウェア業界に与える影響への懸念から強弱入り混じる値動きとなったが、9日は買い戻しの動きが継続した。市場が特に懸念しているのは、対話型AI「Claude」などを手がけるAnthropicがコーディングの機能を向上させたAIモデルを発表したことで、一部ソフトウェア企業のビジネスモデルが崩れる可能性がある点だ。また、テクノロジー株への投資がより選別的になり、投資家はAI関連の巨額の設備投資を正当化できる力強い利益成長や収益化の可能性を重視している。加えて、テクノロジー株から他のセクターに投資対象を広げる動きも見られた。
今後の見通し
S&P500種株価指数の情報技術(IT)セクターは直近2営業日で6%上昇したが、以下の3つの理由から米国ITセクターに対する投資判断をAttractive(魅力度が高い)からNeutral(中立)に引き下げる。
1. ハイパースケーラーの設備投資拡大の減速が見込まれる
ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)のガイダンスによれば、2026年の設備投資額は7,000億米ドルに達する可能性があり、過去3年間で4倍以上の急増となる。この水準の設備投資額は、ハイパースケーラーの営業キャッシュフローのほぼ100%の金額であり、過去10年平均の40%という水準と比較して大幅に高い。設備投資拡大の持続可能性への懸念が投資家心理の重石となりつつあり、債券や株式の発行を通じた外部からの資金調達に頼る傾向が強まっている。
よってCIOでは、設備投資額の拡大は現時点の水準から鈍化する可能性が高いと考える。その場合、多額の設備投資を行ってきた企業への投資家の評価は改善するかもしれないが、イネーブリング層の企業にとってはネガティブ要因となり得る。収益化の進展が加速すれば、長期的にはエージェンティックAIやフィジカルAIの成長を支えるため、引き続き高水準の設備投資が必要となり、イネーブリング・アプリケーション両層の企業に恩恵をもたらすとみている。
2. ソフトウェア分野の不透明感が続く可能性
AIはソフトウェア業界に大きな影響を与える可能性があり、競合他社が既存ソフトウェアプロバイダーの領域に参入しやすくなる。競争激化の脅威により、投資家はソフトウェア企業の成長率や収益性に対する確信を持ちづらくなっており、業界の見通しに関する不透明感はしばらく続くと考える。
一方、ソフトウェア業界の混乱はAIの収益化の可能性を裏付けるものとも捉えられ、最終的にはインテリジェンス層やアプリケーション層の企業に恩恵をもたらすと考える。最近のソフトウェア株の売りは比較的急速かつ幅広く進行しており、下落した銘柄の一部は長期的に魅力的な価値を提供する可能性がある。
3. ハードウェア企業のバリュエーションは十分高い
ハードウェア分野はその大部分をスマートフォンメーカーが占めている。この分野は、既存端末の買い替え需要もあり、最近のスマートフォン出荷台数の力強い成長によって好調である。しかし、現在のハードウェア企業の12カ月先予想株価収益率(PER)は27.7倍で、過去10年平均の20倍、過去5年平均の24倍と比べて十分高い。買い替え需要が満たされれば、スマートフォンの出荷台数の伸びは鈍化する可能性もある。
投資方針
CIOではテクノロジー銘柄全体、AI関連銘柄、米国市場全体への戦略的(長期的)なエクスポージャーの維持を勧める。また、米国のITセクターをNeutralに引き下げることは、テクノロジー分野全体に対するネガティブな見方を示しているのではない。AIへの投資機会は米国ITセクター以外にも存在する。CIOで推奨する変革的イノベーションへの投資機会(TRIO)の投資テーマ「AI」のポートフォリオのうち、S&P500種株価指数におけるITセクターが占める割合は24%にすぎず、投資テーマ「AI」に対する投資判断はAttractiveで維持している。
米国経済は財政・金融両面の刺激策の恩恵を受けている。米連邦準備理事会(FRB)は年内に25ベーシスポイント(bp)の利下げを2回実施すると予想しており、金融環境は既に緩和的である。堅調な経済成長は生産性向上も支えとなって企業利益を押し上げており、2025年第4四半期の利益成長率は14%、2026年通年では12%と予想する。S&P500種株価指数の予想値は2026年6月末を7,300、12月末を7,700で据え置く。
ただし投資家には、米国ITセクターに対する現在のエクスポージャーを見直し、ベンチマーク指数に比べて配分が大きい場合は分散させることを勧める。なお、MSCI ACワールド指数のうち、MSCI米国IT指数は21%を占める。競争リスクの高まりを踏まえ、ソフトウェア企業の個別銘柄、とりわけビジネスモデルが多角化されていないソフトウェア専業企業への集中投資も見直しを勧める。
リスクを管理し、株価上昇の広がりから恩恵を受けるために、米国ITセクターの超過保有分を、銀行、ヘルスケア、公益事業、コミュニケーション・サービス、一般消費財といった推奨セクターへ分散することを勧める。
米国の金融セクターは収益性の改善や資本市場取引の活発化を理由に推奨する。イールドカーブのスティープ化(長短金利差拡大)や純金利マージンも更なる追い風となるだろう。ヘルスケアセクターは革新的な治療法の登場が恩恵になるとみている。長期的に見ても、両セクターはAI導入による効率化や業績向上が期待できると考える。公益事業セクターは電力需要の増加による恩恵が続く見通しである。

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management
Mark Haefele
さらに詳しく
プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。
ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。
