技術的ディスラプション

デジタル・サブスクリプションへの投資

サブスクリプション型サービスが急速に広がりを見せています。デジタル・ディスラプションと新型コロナウイルスの感染拡大で働き方や生活が一変し、消費者も企業もデジタル・サービスを定期購入や前払い制で利用することに抵抗がなくなりつつあります。デジタル・サブスクリプションへの流れは、ハイテク・セクターをはじめとする幅広い業種の企業に、長期にわたって大きな収益機会をもたらすものと期待されます。

新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、サブスクリプション型サービスが急速に普及している。サブスクリプション型ビジネスモデルは、消費者側の利便性と企業側の安定的な収益という利点により、コロナ禍においても底堅さを発揮した。こうした状況は、eコマース、ビデオストリーミング、ゲーム、クラウド・アプリケーションなど、幅広い業種・業態で見て取れた。サブスクリプションは、1人の顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益、すなわち「顧客生涯価値(ライフタイムバリュー)」を収益基盤とするビジネスモデルである。こうした仕組みを強みに、サブスクリプション企業は、昨年のコロナ禍の中でも、安定的な収益と着実なキャッシュフローを創出し、財務内容が大幅に改善している。

「サブスクリプション・エコノミー」の需要をけん引しているのは消費者だけではない。従来よりも予測可能で安定的なキャッシュフローが見込めることから、企業もサブスクリプション・モデルを積極的に導入している。例えば、これまで自社で構築して管理していたITインフラ(サーバー、ストレージ、ネットワーク)も、クラウドへの移行が進んでいる。実際、市場では既に、最も基本的なIaaS(サービスとしてのインフラストラクチャー)から、ウェブやアプリケーション開発(サービスとしてのプラットフォーム:PaaS)、総合オンデマンド型企業向けソフトウェア(サービスとしてのソフトウェア:SaaS)に至るまで、費用対効果が高く、高性能なクラウドサービスが幅広く展開されている。

サブスクリプション・エコノミーは始まったばかりであり、今後、技術開発にともない利用事例もさらに広がるだろう。なかでも成長要因として期待されるのが5Gで、その超低遅延の特徴が活かされるクラウドゲームや自動運転などの領域で、サブスクリプション・ビジネスをけん引するものとみられる。また、企業にも利点が多いことから、サブスクリプションを導入する業種の裾野も広がっている。例えば、製造業では、モノのインターネット(IoT)の普及にともない、生産プロセスにおいてデジタルツイン・サービス*やサービスとしての機器(EaaS)モデルが注目を集めている。また、資源効率を最大化し廃棄物を削減するサブスクリプションは、長期的にはサステナビリティの推進にもつながる。

サブスクリプションの市場規模は2020年の約6,500億米ドルから2025年には1兆5,000億米ドルへと、年率平均18%の急成長が見込まれる。特にeコマースは、現時点でまだサブスクリプションの浸透度が相対的に低いため、2020~2025年の年平均成長率は25%と、先行き最も力強い成長が見込まれるサブセクターである。eコマースに続き、ビデオ、音楽、クラウド・コンピューティングのサブスクリプションも2020~2025年の成長率は10%前半から半ばが見込まれる。ここ数年、大半のサブスクリプション企業の株価は堅調に推移してきた。だが、安定的な収益成長、利益率の大幅な改善、着実なキャッシュフローの創出による株主還元の向上、といった長期的な恩恵が顕在化するのはこれからだと考えている。従って、サブスクリプション・エコノミーのリーダー企業への投資が生み出すリスク調整後リターンは、今後継続的に増加してくものと見込まれる。

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本稿はUBS AG Singapore BranchおよびUBS Financial Services Inc.が作成した“Tech disruption: Investing in digital subscriptions“ (2021年3月10日付)を翻訳・編集した日本語版として2021年3月26日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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