CIO Alert
相場変動局面でポートフォリオの分散強化
1月は市場が急速に動き、貴金属価格が急騰している。金(gold)価格の年初来上昇率は本稿執筆時点で25%に達し、ここ数日で大きく変動しており、銀も年初来で約60%上昇した。ブレント原油は16%上昇している。
2026.01.30
何が起きたか?
1月は市場が急速に動き、貴金属価格が急騰している。金(gold)価格の年初来上昇率は本稿執筆時点で25%に達し、ここ数日で大きく変動しており、銀も年初来で約60%上昇した。ブレント原油は16%上昇している。米ドルは弱含んでおり、スイス・フランに対して約4%、日本円に対して約2%、豪ドルに対して約5%下落した。ユーロ/米ドルは1.20に達し、4年半ぶりの高値を付けた。
米国ではS&P500種株価指数が28日の取引時間中に初めて7,000を突破した。世界に目を向けると、中国株式が好調な出だしとなり、MSCI中国指数は年初来で7.5%上昇しており、日本株式も堅調である。
債券の利回りは比較的安定しているが、長期債に関しては断続的に投資家の懸念が表れている。例えば日本国債は財政見通しへの懸念から変動が高まり、10年債利回りは年初来で18ベーシスポイント(bp)上昇している。
ポートフォリオ運用は予想値を見るだけではない
一部のトレンドは想定より速く進行しているものの、全体的にはCIOの2026年の見通し「Year Ahead 2026」で示した見解と合致している。資産クラスによっては、1月のうちに基本シナリオにおける年末時点の予想値に達したものもあるが、ポートフォリオの運用においては各資産クラスの予想値を見るだけでなく、ポートフォリオを構成する資産の相対的なパフォーマンスを検討し、リバランスを行い、更なる分散を図る必要がある。この点を踏まえると、相場が大きく変動している現在の局面は、多くの投資家にとって、資産配分のバランスを調整し、複数の資産クラスへの上昇の広がりを捉えるために投資先を分散させる機会となる。もしくは、下落局面での損失を抑制しつつ、上昇時には一定のリターンを獲得する手段も検討できる。
市場の大きな変動要因の1つは、地政学的情勢に対し、投資家の不安が高まっていることだと考える。通常、地政学的なニュースに囚われて投資すると、企業の業績成長や経済成長の理解に基づく投資と比べて資産価値の成長につながりにくい。それでも、政府による市場介入が増え、勝者と敗者が分かれることで、想定される市場シナリオの幅は大きく広がる。こうした幅広いシナリオに対応する最も有効な方法の1つは、より多くの資産クラスや地域に分散して投資することだと考える。
より幅広く効果的な分散投資を実現するために、ポートフォリオを構成する資産クラス別の見解を以下に示す。
コモディティ
CIOではコモディティに対して強気であり、今後も上昇する可能性が高いとみているため、投資家には金へのエクスポージャーを維持することを勧める。ポートフォリオの最大5%程度を金に配分することで、地政学リスクへの効果的かつ長期的なヘッジ手段になると考える。
一方、今回のような急騰を受け、金の下落リスクを管理したい投資家は、元本の保全や下落リスクを抑制する手段を用いることで、ポートフォリオの耐性強化を図ることも可能である。あるいは、コモディティ全般への分散も検討できる。現時点で、CIOでは銀を投機的資産と位置づけており、短期的に大幅な価格変動リスクがあるため、配分は慎重に行うことを勧める。
通貨
通貨については、戦術的(短期)な取引を行う前に戦略的(長期)な配分を見直すことを推奨する。まず、ポートフォリオの通貨を支出や債務返済に用いる通貨と一致させることが重要である。これにより、大きな為替変動によって資産目標を達成できなくなるリスクを低減できる。
また、ファンダメンタルズ(基礎的諸条件)の強固な主要国通貨に分散することで、為替変動による資産価値の目減りを抑えることができる。戦略的資産配分を考える際は、バリュエーションの動向、安全通貨としての評価、経常収支、準備通貨としての価値などを考慮することを勧める。戦略的通貨配分を最適化するためには、キャッシュや債券の配分の変更、株式の為替ヘッジ、直接的な通貨取引などの手段がある。戦術的には、人民元や豪ドル、ノルウェー・クローネに上昇余地があるとみている。また、キャリーが魅力的な新興国通貨のバスケットも推奨する。
テクノロジー株および株式全般
株価上昇を捉えるためのエクスポージャーを維持しつつ、機会を拡大し、特定リスクによる損失を低減させるために幅広く分散することが重要である。AI分野では、半導体関連企業などのイネーブリング層だけでなく、今後1年のリターンの牽引役になると予想するアプリケーション層への分散を勧める。
テクノロジー偏重の投資家には、米国の幅広いセクターへの分散を推奨する。具体的には、金融(活発な資本市場活動・イールドカーブの恩恵)、ヘルスケア(構造的成長)、一般消費財(景気循環・米政権のアフォーダビリティ(手頃さ)を重視する政策の恩恵の可能性)、公益事業(電力需要増加の恩恵)といったセクターが挙げられる。
また、欧州、中国、日本、米国の投資機会を活用するため、グローバルな視点も重要である。主要市場すべてに上昇余地があり、株式エクスポージャーの分散で機会獲得と地域固有リスクの管理が可能となる。
債券
債券市場は通貨やコモディティと比べて比較的落ち着いている。
クレジットスプレッドがタイトな低格付の債券よりも、高クオリティ債を勧める。長期債(10年以上)は財政政策の持続性やインフレ高止まりに対する懸念がイールドカーブの長期ゾーンに大きく影響する点に注意が必要なため、中期債を選好する。
オルタナティブ資産
オルタナティブ資産はポートフォリオの耐性を高める。ヘッジファンドへのエクスポージャーは、市場全体の動きへの感応度を下げ、アクティブ運用の柔軟性を加え、下落局面への防御力を強化する。特に、ノン・ディレクショナル戦略、ディスクレショナリー・マクロ戦略、マルチ戦略ファンド、合併アービトラージ戦略に注目している。プライベート・エクイティは依然として魅力的なエントリーポイントにあり、強い成長余地を持つ。最後に、不動産やインフラストラクチャーもリショアリング(生産拠点の国内回帰)やデジタル化などの長期トレンドに支えられ、魅力的な投資機会を提供する。

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management
Mark Haefele
さらに詳しく
プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。
ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。
