日本株式

2026年の主なカタリスト

日本株式は、2026年も実質賃金の上昇や持続的なインフレ環境への転換を背景に、堅調な1年になると予想している。ROEの拡大が日本市場の再評価につながり、海外資金流入の増加を促す鍵となる。

  • 日本株式についてAttractive(魅力度が高い)との見方を継続する。2026年も実質賃金の上昇や持続的なインフレ環境への転換を背景に、堅調な1年になると予想している。
  • 関税の影響が和らぐことで企業業績は回復に向かう見通しであり、自己資本利益率(ROE)の拡大が日本市場の再評価につながり、海外資金流入の増加を促す鍵となる。
  • 国内政策の恩恵を受ける分野(ITサービス、銀行、不動産、防衛、医療技術)や、グローバルなトレンドが追い風となる分野(テクノロジー、オートメーション、自動車)に分散して投資することを推奨する。注視すべきリスクとしては、急速な円安や金利変動が挙げられる。

CIOの見解

CIOでは、2026年も日本株式は堅調な1年になるとみている。マクロ面での注目点は実質賃金の上昇であり、日本の本格的なインフレ体質への転換を下支えする主な要因となると考える。ミクロ面では、関税の影響が一巡することで企業業績の回復が期待できる。自己資本利益率(ROE)の拡大は日本株の再評価を促す重要な要素であり、日本企業の構造転換を後押しし、海外資金の流入につながるだろう。

外部環境を見てみると、2025年は米国関税とそれを取り巻く政策の不確実性に大きく左右された年だった。2026年の米国経済は、緩やかに減速するものの底堅く推移すると予想する。UBS CIOのマクロチームは米国の実質国内総生産(GDP)成長率を、2025年は1.9%、2026年は1.7%と予想している。インフレ率は低下傾向が継続し、消費の底堅さが続く見通しであり、雇用環境は緩やかな減速を予想するが、景気後退を示唆するほどの悪化は見込まれていない。関税を財源とした減税、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ継続、規制緩和が11月の中間選挙を前に米国経済の底上げに寄与するだろう。その結果、S&P500種株価指数の1株当たり利益(EPS)成長率は2025年に11%、2026年は10%になると予想している。

実質賃金の上昇がマクロ面の主なカタリスト

日本国内では、2026年はいよいよ実質賃金が上昇する年になるとみている。連合による2026年春季労使交渉(春闘)の賃上げ要求は「5%以上」であり、2024年から3年連続で5%超の賃上げが行われる見込みである(図表1)。これは、日本も賃金が継続的に上昇する環境が定着しつつあることを示唆している。

一方で、賃金上昇率からインフレ率を引いた、実質賃金の上昇率は2022年以降マイナス圏で推移している(図表2)。その結果、消費者が賃金上昇のメリットを感じにくい経済環境がこれまで継続してきた。しかし食品値上げの一巡、エネルギー価格の低下、高市政権による物価高対策(2026年の経済対策として11.7兆円計上)の効果などにより2026年のインフレ率は低下し、その結果、実質賃金上昇率はプラスに転換すると考えられる。

2025年10月時点の実質賃金上昇率は-0.5%だったが、インフレ率が直近の3%から、0.5ポイント低下すれば実質賃金上昇率はプラス転換となる。CIOのマクロチームは日本の消費者物価指数(CPI)について、2025年の3.2%から2026年には1.8%へ低下すると予想している。

実質賃金の上昇は、いわゆる良いインフレにつながる重要な指標である。日本のGDPの約70%は内需中心のサービス業(非製造業)であり、実質賃金の上昇が消費を押し上げ、消費拡大が良いインフレの継続につながり、良いインフレが賃金の上昇を促し、賃金と物価上昇の好循環が定着すれば、日本株式のカタリストになり得る。

高市政権も、コストプッシュ型のインフレからディマンドプル(需要主導)型のインフレへの転換を目指しており、政策支援がインフレ率の低下を後押しするとみている。

ROEの拡大が日本株の再評価を促す

ミクロ面では、2026年度(2027年3月期)は関税による減益影響が一巡し企業の増益率が高まると考える。日本企業の業績は2025年度の3%増益から、2026年度には8%増益へ加速すると予想する。

EPSの拡大がROEの上昇につながり始めた。東証株価指数(TOPIX)のROEは直近、過去10年間のレンジの上限である9.5%程度まで上昇している(図表3)。2026年は更に上昇するとみており、ROEの拡大は株価収益率(PER)の上昇につながるため重要なカタリストとなる。

日本のPERは過去10年超12-16倍の間で推移してきたが、ROEがレンジの上限(約9.5%)を超過し10%に近づけば、PERのレンジも上方シフトすると考えられる(図表4)。

日本のROEが横ばい圏で推移してきた一方で、米国(S&P500種株価指数)のROEは2015年は15%だったのに対し、直近21%まで拡大した。その結果、米国のPERは2015年の15-17倍から2025年に22倍程度まで上昇した。つまり、米国株は企業業績の拡大に加えて、バリュエーション(PER)の拡大が株価の上昇につながったといえる。2026年は、日本も米国のような株式市場の構造へ転換できるか節目の年となるだろう。

日本のROEが現在のレンジ上限を抜ければ、株式市場に織り込まれ、日本株の構造的な変化として注目され、海外投資家の資金流入につながると考えられる。

投資戦略:物色の広がりがみられるか?

投資家の物色がAI関連や不動産、銀行、建設などのインフレの恩恵を受ける銘柄以外にも広がるかが焦点とみている。2026年度に利益の回復が期待できる機械や自動車といったグローバル景気敏感株や、出遅れているヘルスケアなどのセクターに資金が向かうのか、また、実質賃金が上昇する場合は、消費関連や中小型株にも物色が波及するのかが注目点である。

CIOでは、国内政策の恩恵を受ける分野(ITサービス、銀行、不動産、防衛、医療技術など)や、グローバルなトレンドから恩恵を受けるセクターに分散して投資することを推奨する。

グローバルなトレンドとしては、電力需要の拡大やデータセンター関連のテクノロジー、電子部品が挙げられる。自動化投資の拡大でオートメーション関連の機械セクターは恩恵を受けており、出遅れ感のある自動車セクターにも注目している。

リスク

日本固有のリスクとして、国内金利の上昇や急激な円安が挙げられる。急激な円安の進展は輸入物価の上昇を通じてインフレ率上昇につながり、家計負担を押し上げ、高市政権の支持率や政策実効性を低下させる可能性がある。

しかし、円安が更に進行したとしても、2023年前半から2024年半ばにかけて、130円から160円まで20%超円安が進展した局面とは状況が異なる。仮に現時点でドル円が160円に達したとしても3%程度の上昇にとどまる。CIOの為替チームは、2026年6月までにドル円は徐々に円高方向(150円)へ向かうと予想している。

10年国債利回りから期待インフレ率を引いた実質金利は0.2-0.3%と低水準にあり、現時点では株式市場の大きな足かせにはなっていないが、引き続き注視する必要がある(図表6)。

加えて、米国のインフレ率や金利の上昇もリスクである。米国の雇用市場は力強さを欠いており、採用も解雇も少ない状況が続いている。株式市場は、FRBの利下げが景気を下支えすることを期待しているものの、インフレ率が上昇すれば、利下げの実行確度が低下する。また、最高裁で関税に違憲判決が下された場合、一時的とはいえ米国財政の持続性に対する懸念が高まる可能性がある。

全文PDFダウンロード
本稿は、UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント株式会社が作成した“Japanese equities:Key catalysts in 2026”(2026年1月5日付)を翻訳・編集した日本語版として2026年1月8日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
小林 千紗

UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント株式会社
チーフ・インベストメント・オフィス
ストラテジスト

小林 千紗

さらに詳しく

チーフ・インベストメント・オフィスにて、ストラテジストとして株式の調査分析、テーマ投資、SI投資などを担当。投資銀行部門での経験を活かし、幅広い業種についてマクロ・ミクロの視点から投資見解を提供している。


2013年11月に入社。それ以前は米系・欧州系証券会社にて株式アナリストを務める。

最新CIOレポート

UBSのウェブサイトに遷移します。

(3秒後に自動で遷移します)

×

三井住友信託銀行のウェブサイトに遷移します。

(3秒後に自動で遷移します)

×