日本株式

貯蓄から投資へ:日本株に上昇の波は来るか?

海外投資家は9月に様子見姿勢だったが、高市総裁の選出以降、再度日本株を買い越している。一方、日本の個人投資家は歴史的に逆張りの傾向にあるが、9月以降の株価上昇時にも売り越しに転じていない。

  • 海外投資家は9月に様子見姿勢だったが、高市早苗氏が10月に自民党総裁に選出されて以降、再度日本株を買い越している。日本株式の投資判断はAttractive(魅力度が高い)を維持し、海外投資家からの資金流入が継続すると予想する。
  • 日本の個人投資家は歴史的に逆張りの傾向にあるが、9月以降の株価上昇時にも売り越しに転じていない。個人投資家の姿勢がより強気となれば、日本株への新たな流入資金となるため、2026年に向けて動向を注視していく。
  • 日本の家計資産の半分は現金で保有されている。仮にその1%が株式投資にシフトした場合、資金流入額は2025年年初来の海外投資家による買い越し金額の3倍以上となり、大きなインパクトをもたらすと予想する。

CIOの見解

海外投資家は日本株のトレーディング額の60-70%を占めるため、その動向が日本株の方向感を決定するといえる。一方で、日本企業は淡々と自社株買いを行っている。また、日本の個人投資家は歴史的に逆張りの傾向にあるが、足元の好調な市場環境にもかかわらず、ここ数カ月で売り越しに転じていない。

海外投資家は11月末時点で年初から累計3.5兆円の買い越しと、2年ぶりの買い越しとなった。4月の大底から8月まで大きく日本株を買い戻した後、9月は一旦様子見に転じ、10月に高市早苗氏が自民党総裁に選出されて以降、再度買い越しとなっている。海外投資家の間でも、日本の新たなリーダーに対する期待値の高さがうかがえる(図表1)。日本株の投資判断は2026年もAttractive(魅力度が高い)を維持し、海外投資家の資金流入が続くと考えている。

興味深いのは、日本の個人投資家が9月以降売り越しに転じていない点である。9-10月の2カ月間で東証株価指数(TOPIX)は8.3%、日経平均株価は22.7%上昇した。11月まで含めると3カ月間でTOPIXは9.9%、日経平均は17.6%上昇した。通常の日本の個人投資家の逆張り傾向を考えれば、9-10月に大きく売り越しに転じていても驚きはない(図表2)。

新政権への期待が日本の個人投資家の投資行動を変化させたのかは、まだ定かではない。しかし、投資行動が変化するのであれば日本株への新たな流入資金となるため、注視していきたい。

日本の家計資産は9月末時点で2,238兆円であり、その50%の1,126兆円が現金で、株式及び投資信託の比率は19%である(図表3)。2020年は現金比率が54%、株式及び投資信託比率が15%であったので、徐々に貯蓄から投資へ資金シフトが起きている(図表4)。

しかし、欧米と比較すると、依然として現金保有比率が高いことが分かる。欧州と米国の家計は現金比率が各32%、12%、株式及び投資信託比率は各36%、55%である。

仮に日本の家計の現金のうち1%(約11兆円)が株式投資にシフトした場合、日本株の時価総額の約1%程度に相当する。フローで考えると、海外投資家の2025年年初来の買い越し金額の3倍以上となり、企業の年間自社株買い金額も上回るため、かなりインパクトは大きいと試算される。

もちろん、そうした現金が全額日本株に投資されることはないだろう。ただ、個人投資家の投資行動および日本株に対する逆張り姿勢が変化するのであれば、2026年の注目点となる。

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本稿は、UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント株式会社が作成した“Japanese equities - From cash to capital inflows: Is a new wave emerging for Japanese equities in 2026?”(2025年12月5日付)を翻訳・編集した日本語版として2025年12月15日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
小林 千紗

UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント株式会社
チーフ・インベストメント・オフィス
ストラテジスト

小林 千紗

さらに詳しく

チーフ・インベストメント・オフィスにて、ストラテジストとして株式の調査分析、テーマ投資、SI投資などを担当。投資銀行部門での経験を活かし、幅広い業種についてマクロ・ミクロの視点から投資見解を提供している。


2013年11月に入社。それ以前は米系・欧州系証券会社にて株式アナリストを務める。

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