日本株式

高市新政権の誕生、政治安定の見通し

高市早苗氏が日本の新首相に就任した。高市新政権の誕生は、日本株式にとって大きな転換点になる可能性を秘めていると考えている。今後、成長戦略がさらに明確に提示されていくことを期待したい。

  • 10月21日、自民党の高市早苗新総裁が日本の総理大臣に任命された。加えて、自民党と日本維新の会との連立成立により与党の議席数が増加し、政権の安定性が向上するだろう。
  • 高市氏は、短期的には経済対策を重視しつつ、既存政権と比較し緩和的及び成長重視の政策を掲げていることから、企業業績が下支えられ、2026年にかけて生産性の向上が促されるとみている。
  • 我々は日本株式の投資判断を引き続きAttractive(魅力度が高い)としている。日本国内の構造改革がアルファ(超過収益)創出の主な源泉としてますます注目されていることに加えて、国内政策が追加的な追い風として期待できる。

何が起きたか

高市早苗氏が日本の新首相に就任した。自民党と日本維新の会との連立成立により、公明党との連立時よりも与党の議席数が増加し、政権の安定性が向上するだろう。また、政策がより実行されやすくなるほか、政策の実効性向上にもつながる見通しであり、いずれも株式市場にとって好材料だと考えている。与党の合計議席数は、衆議院で231議席と過半数(233議席)まであと2席となり、公明党との連立時より大幅に増加した。参議院では120議席と過半数(125議席)まであと5席となった(図表1参照)。

高市新政権の誕生は、日本株式にとって大きな転換点になる可能性を秘めていると考えている。高市氏の自民党総裁選勝利を受け、日本株が大きく上昇した背景は、経済政策についての理解が深く、成長志向の新総理の下で、日本の構造的な変化がもたらされることへの期待を反映したものであると考える。今後、高市総理の日本の未来へのビジョンや成長戦略がさらに明確に提示されていくことを期待したい。

高市氏は、短期的には物価高対策としてのガソリン暫定税率の廃止や所得税基礎控除の拡大、中小企業支援などの経済対策に注力するだろう。中長期的には、国家・経済安全保障や成長投資が中核となるとみている。特に、「責任ある積極財政」のもと、インフラ投資、生産性向上、防衛力強化、最先端技術(AI、半導体、量子コンピューター)への積極的な投資を行うと考えられる。高市氏は経済安全保障担当大臣を務めた経験があり、日本の競争力向上を主導する立場にあると考える。

高市政権下における目先のリスクは、過度な円安進行による日本のインフレ率上昇と、それに伴う国民の支持率の低下だと考える。日本放送協会(NHK)による10月13日付の世論調査では、高市総裁に最優先で取り組んでほしいことの1位は、「物価高対策」であり、回答者の43%が最優先課題として挙げている(図表2参照)。高市氏自身も、コストプッシュ型のインフレではなく、賃金上昇により需要が増える、ディマンドプル型のインフレがもたらされることが重要と述べている。UBS CIOのマクロチームは、日本の消費者物価指数(CPI)は2025年の3.4%から2026年は2.1%へ低下すると予想しており、ドル円は緩やかな円高(2026年6月時点で148円)を予想している。

投資戦略
日本株式への投資は、分散投資を推奨する。短期的には、業績が堅調なITサービスや、インフレの恩恵を受ける不動産セクターを選好する。中期的には、機械、自動車関連銘柄など、来期に増益転換を見込むことのできるグローバル景気敏感株、政府の政策の恩恵が期待できる防衛、IT(AIや半導体、電力関連銘柄など)、医療系テクノロジー(メドテック)を選好する。これらのセクターは、直近の円安の恩恵を受けるとみている。

全文PDFダウンロード
本稿は、UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント株式会社が作成した“Japanese equities:Political stability expected with PM Takaichi’s appointment; pro-growth and fiscal expansion likely”(2025年10月21日付)を翻訳・編集した日本語版として2025年10月22日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
小林 千紗

UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント株式会社
チーフ・インベストメント・オフィス
ストラテジスト

小林 千紗

さらに詳しく

チーフ・インベストメント・オフィスにて、ストラテジストとして株式の調査分析、テーマ投資、SI投資などを担当。投資銀行部門での経験を活かし、幅広い業種についてマクロ・ミクロの視点から投資見解を提供している。


2013年11月に入社。それ以前は米系・欧州系証券会社にて株式アナリストを務める。

最新CIOレポート

UBSのウェブサイトに遷移します。

(3秒後に自動で遷移します)

×

三井住友信託銀行のウェブサイトに遷移します。

(3秒後に自動で遷移します)

×