日本株式
総裁選後急騰も、さらなる上昇を見込む
自民党総裁選後、日本株は急騰したが、悪材料が減少しつつあることからさらなる上昇余地があると考える。日本国内の構造改革がアルファの主な源泉としてますます注目されており、米国株式市場の堅調さもこれを下支えしている。
2025.10.16
- 我々は日本株式の投資判断を引き続きAttractive(魅力度が高い)としている。日本国内の構造改革がアルファ(超過収益)創出の主な源泉としてますます注目されており、国内市場を下支えする複数の追い風も見込まれる。
- 構造改革に加え、成長重視の政策を掲げる高市早苗氏が自民党総裁に選出されたことを受け、今後より緩和的な政策運営が期待される。加えて、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測や米国経済・市場の底堅さも、日本株式の支援材料となる。
- 主なポジティブ材料としては、次期政権ではより緩和的な政策が予想されることや、企業業績のコンセンサス予想が想定より早く底打ちしてきたこと、2026年に向けた自己資本利益率(ROE)の上昇によるバリュエーション拡大期待などが挙げられる。
我々の見解
自民党総裁選後、日本株は急騰したが、悪材料が減少しつつあることから、さらなる上昇余地があると考える。東証株価指数(TOPIX)の現在の株価収益率(PER)は15.9倍であり、選挙後の上昇を経ても相対的に魅力的な水準にある。我々は、日本国内の構造改革がアルファ(超過収益)の主な源泉としてますます注目されているとみており、米国株式市場の堅調さもこれを下支えしている。
高市早苗新総裁は、減税や景気刺激策、特に先端技術や国家安全保障に関連する分野への投資に注力すると予想している。これらの政策が企業業績を下支えし、来年にかけて生産性の向上を促すだろう。
短期的な政治的カタリストとしては、以下が挙げられる。
- 10月中旬:高市氏の具体的な経済財政政策の方向性が首相指名や所信表明演説を通じて明らかになると予想される。
- 11月から12月:補正予算が編成され、金額や配分の詳細が公表されることで、セクターごとの影響がより明確になるだろう。
- 高市氏の支持率が上昇すれば、衆議院の解散・総選挙が行われる可能性がある。これにより少数与党体制が解消されれば、市場はポジティブ材料と受け止めるだろう。
10月下旬から7-9月期の決算発表が本格化する。日本企業の業績は関税の影響で前年同期比で減益となるとみられるが、サプライズにはならないだろう。むしろ、投資家は関税による影響の一巡を見越して来期の利益回復を織り込み始めると考える。
直近の急騰を受けて決算期はボラティリティ(相場の変動率)が高まる可能性があるが、関税の影響の後退による2026年度の利益回復を見込むことで、株価調整があれば押し目となり得ると考える。

投資戦略
日本株式への投資は、分散投資を推奨する。特に内需関連や、設備投資・国家安全保障関連銘柄など、財政刺激策や構造変化の恩恵を受けるセクターに注目している。
短期的には、明確な成長ドライバーがあり、日本のインフレや財政刺激策の恩恵を受けるITサービス、不動産、医療系テクノロジー(メドテック)などのセクターを選好する。
中期的には、自社株買いの加速や構造改革に積極的なグローバル景気敏感株、政府の政策の恩恵が期待できる防衛、IT(半導体やAI関連銘柄など)、資本財、機械、自動車関連銘柄を選好する。これらの分野は、直近の円安の恩恵も期待できる。



UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント株式会社
チーフ・インベストメント・オフィス
ストラテジスト
小林 千紗
さらに詳しく
チーフ・インベストメント・オフィスにて、ストラテジストとして株式の調査分析、テーマ投資、SI投資などを担当。投資銀行部門での経験を活かし、幅広い業種についてマクロ・ミクロの視点から投資見解を提供している。
2013年11月に入社。それ以前は米系・欧州系証券会社にて株式アナリストを務める。