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FRBが利下げ再開、今後の投資戦略は?

FRBは、17日のFOMCで政策金利を25bp引き下げた。我々はFRBが引き続き一時的なインフレ率の上昇よりも雇用市場の弱さを重要視すると考え、2026年第1四半期までに75bpの追加利下げを実施するとみている。

何が起きたか?

米連邦準備理事会(FRB)は、17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を25ベーシスポイント(bp)引き下げた。FOMC参加者による政策金利の見通しは、今後2回の会合で追加利下げが実施される可能性を示唆している。

FRBは7月実施の前回FOMCで、雇用市場は堅調な状況が続いているとしていたが、今回は雇用の下振れリスクが高まっていると判断した。インフレ率は上昇し、やや高い水準が続いているものの、上記の理由からフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を4.00-4.25%に引き下げた。2024年には計100bpの利下げが実施されたが、2025年の利下げは今回が初となる。新しくFRB理事に指名されたスティーブン・ミラン氏は、より大幅な50bpの利下げを支持し、FRBの決定内容に反対していた。

FOMC参加者による政策金利見通し(ドットチャート)の年末時点の中央値は、年内にあと2回の利下げが実施されることを示唆している。

今回の利下げは広く予想されていたため、決定を受けた市場の反応は限定的だった。17日のS&P500種株価指数は、パウエルFRB議長がFOMC後の記者会見で、今年はこれ以上の利下げを実施しないと見込んでいる参加者も一定数いると発言したことを受けて一時下落したが、その後上昇し、ほぼ横ばいで取引を終えた。米10年国債利回りは6bp上昇し、4.08%となった。金(gold)は0.8%の小幅な下落で1オンス当たり3,665米ドルとなり、米ドル指数は0.4%上昇した。

今後の見通しは?

我々の基本シナリオでは、FRBが引き続き、一時的なインフレ率の上昇よりも雇用市場の弱さを重要視すると考え、2026年1-3月期(第1四半期)までに75bpの追加利下げを実施するとみている。

パウエル議長は記者会見で、労働需要が軟化しており、最近の雇用創出ペースは、失業率を一定に保つために必要な水準を下回っているとの見解を示した。実際、5月以降の非農業部門雇用者数の伸びは、月平均で約27,000人にとどまっており、米労働統計局は、今年3月までの1年間における非農業部門雇用者数の伸びの合計が911,000人下方修正されるとの見通しを発表した。米失業保険申請件数も増加傾向にあり、2021年後半以来の高水準に達している。

FRBは雇用市場鈍化の懸念とインフレ率の動向のバランスを図るだろう。食品とエネルギーを除くコア消費者物価指数(CPI)は、8月に前年同月比3.1%の上昇となり、FRBのインフレ目標2%を上回って推移している。米サプライマネジメント協会(ISM)発表の非製造業(サービス業)景況感指数における仕入れ価格など、インフレ率の先行指標も高止まりしている。またFRBは、米連邦最高裁が一部関税の撤廃を命じた場合でも、関税による一部の物価上昇が粘着的なものとなる可能性に留意すると考える。

一方でFRBは、関税による価格転嫁のペースが想定よりも遅いと考えており、パウエル議長も、関税による価格上昇は一時的なものにとどまるとの見解を改めて示した。FOMCの経済見通しでは、2027年にインフレ率がFRBの目標である2%付近まで低下すると予想している。パウエル議長は、長期的な期待インフレ率を示す指標が、FRBのインフレ目標と整合的な水準を着実に示していると述べた。

投資戦略

25bpの利下げ自体は見通しに大きな影響を与えるものではないとみているが、金利が予想より大幅に低下する可能性があることに留意したい。我々の悲観シナリオでは、雇用市場の鈍化が想定より深刻だった、あるいは長引いた場合、FRBは200-300bpの利下げを行い、米国の政策金利は1.0-1.5%まで低下する可能性があると予想する。このような状況は、キャッシュの配分を見直す好機になると考える。

1) キャッシュを管理する

投資家には、キャッシュを管理してリターンを最適化することを勧める。

  • 1年以内の日々の支出に必要なキャッシュには、控えめな利回りと引き換えに相対的な安定性を提供する、マネーマーケットファンド(MMF)または譲渡性預金を勧める。
  • 1-3年の間にあらかじめ予定されている支出や緊急の出費に備えるための、コアとなるキャッシュに関しては、柔軟性と利回りのバランスを図ると良いだろう。債券ラダー戦略(満期が異なる複数の債券を組み合わせたポートフォリオ)は、予測可能なキャッシュフローを提供し、金利リスクを管理することができる。
  • 5年先までの支出に備えたキャッシュに関しては、ある程度の価格変動と流動性の低さを受け入れつつ、リターンを最適化することに重点を置くのが望ましい。中期国債や投資適格債、複数のセクターに分散された債券投資アプローチを勧める。過去のデータに基づくと、グローバル高クオリティ債(ブルームバーグ・グローバル総合指数)は、金利のピークから12-24カ月の期間で、キャッシュ(米1-3カ月国債)を2.7-4.1%アウトパフォームした。

通貨に関しては、米ドルは今後数カ月で下落傾向に戻ると考える。FRBが他の中銀よりも速いペースで利下げを行う可能性が高いことや、依然大きな双子の赤字(経常赤字と財政赤字)が米ドルの重石になるだろう。我々は、ユーロと豪ドルを推奨する。投資家には、負債の返済や支出計画を考慮して通貨配分を見直し、過度な米ドル保有分を他通貨へ分散させることを勧める。

2) 余剰なキャッシュを分散ポートフォリオへ段階的に投資する

過去のデータに基づくと、長期的には、投資した場合のパフォーマンスがキャッシュを保有し続けた場合を上回る可能性が高い。1945年以降、キャッシュを1年間および5年間保有した場合のパフォーマンスは、それぞれ保有期間の約74%と約83%で、株式と債券の分散ポートフォリオへ段階的に投資した場合を下回っている。金利の低下が見込まれる中、投資家は余剰なキャッシュを投資に回す時期に来ていると考える。バランス型ポートフォリオに加えて、現在、余剰なキャッシュを活用するための具体的な投資機会が数多く見られる。

  • 株式を押し目買いする:金利の低下、企業の力強い利益成長、人工知能(AI)の追い風が、今後1年間のグローバル株式のさらなる上昇を支えると考える。株式の保有比率が低い投資家は、段階的な投資や、市場の押し目を利用した我々の推奨分野へのエクスポージャーの追加を検討することを勧める。
  • 変革的イノベーションに投資する:AI、電力と電源、ロンジェビティ(健康長寿)といった変革的イノベーションへの投資機会(TRIO)の投資テーマは、長期的に市場全体をアウトパフォームすると予想する。こうした投資テーマに加え、米国のテクノロジー、ヘルスケア、公益事業、金融セクターも選好する。欧州では、スイスの高クオリティ配当株、欧州の高クオリティ株、資本財セクター、投資テーマ「欧州投資の6つの方法」を勧める。その他の地域では、中国のテクノロジー・セクター、シンガポール、インド、ブラジルを推奨する。
  • (gold)を選好する:年初来の力強い上昇を経ても、金はポートフォリオの効果的な分散手段であり、政治・経済リスクに対するヘッジ手段であると考える。米ドル安、中央銀行による堅調な需要、実質金利の低下、そして政府債務水準の上昇や金融抑圧の可能性、地政学的リスクの継続に対する投資家の懸念が、金の追い風になると予想する。
  • オルタナティブ投資で分散を図るオルタナティブ資産をポートフォリオに追加することで、ポートフォリオの分散効果を向上させ、成長可能性を広げ、下落リスクに備えることができる。オルタナティブ投資には、低い流動性や透明性、レバレッジの使用等、さまざまなリスクやデメリットもあることに留意したい。

3) 収益源の代替先を検討する

金利低下を考慮し、キャッシュによる定期的な収入に代わる収益源を探している投資家は、株式インカム戦略などを検討することができる。こうしたアプローチはキャッシュや債券戦略と比較してリスクが高いものの、同等かそれ以上のリターンをもたらすだろう。

  • 株式インカム戦略:米国株式の配当利回りは総じて比較的低いが、魅力的な配当利回りを持つ一部の銘柄に投資機会があると考えている。アジアでは、インカムとポートフォリオの耐性を重視する投資家にとって、東南アジア諸国連合(ASEAN)市場の今年の平均配当利回りは4.6%と魅力的だ。スイスの配当銘柄も平均配当利回りが約3.0%で、健全なバランスシートと収益性からは、スイス市場全体で配当が持続可能であることが示唆される。
  • 資金計画を考慮する:資金計画を踏まえた選択肢を検討することで、ポートフォリオのインカムを改善し、過剰なキャッシュへの依存を減らす方法を見出すことができる。例えば年金は、持続可能なインカムの確保が可能だ。また、借入枠を広げることで、予期せぬ事態に備えて過剰なキャッシュを保有する必要性を減らすことができる。

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本稿は、UBS Switzerland AGが作成した“CIO Alert - The Fed cuts rates: What to do next?”(2025年9月17日付)を翻訳・編集した日本語版として2025年9月18日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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