金相場

金のさらなる上昇を予想

金はここ数週間で上昇の勢いを取り戻している。金と米ドルの逆相関が続くなか、FRBの利下げに対する期待や地政学リスクなどを背景に、金への需要はさらに高まるだろう。

  • 金(gold)は上昇の勢いを取り戻しており、年初来では本稿執筆時点で38%の上昇となっている。米雇用統計の鈍化を受けて、米連邦準備理事会(FRB)の利下げに対する期待がさらに強まったことや、それに伴う米ドルの下落見通し、そして地政学的不透明感の持続が、投資家による金購入の急増につながっている。
  • こうした最近の動きを反映し、我々は上場投資信託(ETF)による金の総保有量の見通しを引き上げ、2025年末までに3,900トン超の過去最高水準付近に達すると予想する。金価格の予想も2025年12月末を1オンス当たり3,800米ドル(従来は3,500米ドル)、2026年6月末を3,900米ドル(同3,700米ドル)に引き上げる。
  • ポートフォリオの観点からは、分散投資と適切なヘッジの確保が極めて重要である。我々は金に対する投資判断をAttractive(魅力度が高い)で維持し、グローバル資産配分にも金を組み入れている。ポートフォリオにおける金の配分は最大5%程度にすることを勧める。

金(gold)は4月中旬以降、比較的狭いレンジでの推移が続いていたが、ここ数週間で上抜けた。米雇用統計が予想を下回ったことで、市場参加者が米連邦準備理事会(FRB)の利下げ期待を急速に織り込んだことが背景にある。米国のターミナルレート(利下げの最終到達地点)予想は現在2.93%となり、金のように利息を生まない資産を保有する際の機会コストを示す米国の実質金利は、1カ月足らずで20ベーシスポイント(bp)超低下した。5年物米国物価連動国債(TIPS)の利回りも、2022年半ば以来の低水準となっている。インフレ率の高止まりが見込まれる中、年末にかけて実質金利はさらに低下し、金需要を下支えすると予想する。こうした動きは米ドルの逆風となり、米ドルは今後12カ月でさらに弱含むとみている。金と米ドルの逆相関が続くなか、米ドル安が続けば、市場参加者が金をヘッジ手段として活用することで、金への投資需要が高まるだろう。

マクロ経済以外の材料としては、地政学リスクや、米連邦政府とFRBの対立が挙げられる。トランプ米大統領が利下げを望んでいることも、金の魅力を高めている。こうした追い風や、上場投資信託(ETF)への流入が最近増加したことを受けて、我々は2025年の年間金ETF流入量見通しを700トン弱まで引き上げ、ETFによる金の総保有量は2020年10月に記録した過去最高の3,915トンに近い水準になると予想する。また、2026年6月の金価格の予想を1オンス当たり200米ドル引き上げ、3,900米ドル(従来は3,700米ドル)とする。中央銀行による購入量も今年は900-950トンと堅調を維持し、1,000トン超の高水準となった昨年に迫る見込みだ。金価格に対する主なリスクは、インフレの上振れでFRBが利上げを余儀なくされることである。

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本稿はUBS AG Singapore BranchおよびUBS Switzerland AGが作成した“CIO View: Gold - In gold we trust”(2025年9月11日付)を翻訳・編集した日本語版として2025年9月17日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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