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イスラエルとイラン停戦合意、状況は流動的

停戦が維持されない可能性があるにもかかわらず、市場の楽観ムードは損なわれなかった。S&P500種株価指数は上昇を続け、24日は前日比1.1%上昇し、2月19日の過去最高値まで1%程度という水準にある。

イスラエルとイランの停戦合意の一報を受け、24日のアジア株式市場は上昇。ブレント原油価格は地政学的リスクの高まりによる上昇分を吐き出し、23日の取引時間中の高値から一時14%下落した。

トランプ米大統領は23日、イスラエルとイランが「完全かつ全面的な」停戦に合意したと発表し、日本時間24日午後には停戦が発効された。イスラエルは、イランが新たな攻撃を行わない限り、停戦に合意するとの意向を示した。イランのアラグチ外相は、イスラエルの行動次第で停戦に応じると示唆した。しかし、停戦開始後も、両国間でミサイルによる攻撃の応酬が続いたと報じられ、状況は非常に流動的だ。

しかし、停戦が維持されない可能性があるにもかかわらず、市場の楽観ムードは損なわれなかった。S&P500種株価指数は上昇を続け、24日は前日比1.1%上昇し、2月19日の過去最高値まで1%程度という水準にある。ブレント原油価格は本稿執筆時点で1バレル当たり68米ドルとなり、先週の高値の78.9米ドル近辺から5%下落している。これは、投資家が紛争によるエネルギー供給の混乱を想定していないことを示唆している。

中東情勢の緊張の高まりと、その後の停戦への期待を反映した市場の反応は、地政学的ショックがグローバル市場に与える影響は限定的で、短期間で収まることが多く、投資家はファンダメンタルズ(基礎的諸条件)に再び注目する可能性が高いという我々の見解と合致する。我々は、今後12カ月間は堅調なファンダメンタルズが株式を押し上げると考える。しかし、ボラティリティ(相場の変動率)上昇につながるリスク要因は依然として残っている。

地政学的緊張はなおも高まる可能性がある。市場は米国、イラン、イスラエルをめぐる情勢がこれ以上悪化しないことを織り込んでいるとみられるが、紛争再開やホルムズ海峡を中心としたエネルギー供給混乱のリスクは排除できない。停戦協議が続くなか、イスラエルとイランの紛争には当面の間注目が集まると考えられる。今後も、紛争の影響が原油を通じてグローバル市場に広がることが想定され、投資家は、エネルギーインフラに損害が出ないか、あるいは原油輸出に混乱が起きないか注視するだろう。原油の供給が大きく混乱する兆候が見られれば、市場センチメントの急速な悪化が見込まれる。

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本稿は、UBS AG Singapore Branch、UBS Switzerland AG、UBS Financial Services Inc. (UBS FS)、UBS AG London BranchおよびUBS AG Hong Kong Branchが作成した“Daily Asia: Market fundamentals remain supportive amid Middle East developments” (2025年6月24日付)および、“Daily Europe: Market mood lifted amid tentative Middle East ceasefire” (2025年6月24日付)を翻訳・編集した日本語版として2025年6月25日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Min-Lan Tan

UBSグローバル・ウェルス・マネジメント
アジア太平洋地域チーフ・インベストメント・オフィス責任者

Min-Lan Tan

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2002年にシンガポールにてストラテジストとしてUBSに入社。アジア金融専門誌「アジアマネー」のアナリスト・ランキングで、2003年から2012年まで10年連続で在シンガポール・アナリスト1位。2012年9月よりUBSインベストメント・バンクのマクロ・ストラテジー・リサーチのグローバル・ヘッドを務める。2013年8月、UBSウェルス・マネジメントCIOのアジア太平洋地域ヘッドに就任。UBS以前はメリルリンチに7年勤務し、シンガポール・アジア地域の株式ストラテジスト、東南アジア地域のエコノミスト等を歴任。それ以前には、シンガポール金融通貨庁(MAS)でシニアエコノミストを務める。

Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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