ElectionWatch 2024

再対決のインプリケーション

財政政策や規制政策は、選挙結果次第で短期的には特定の資産クラスのパフォーマンスに影響を与える可能性があるため、注視していく必要がある。だが、長期的な投資判断は政治とは切り離して行うべきである。

11月に向けた見通し

バイデン米大統領は、2024年の大統領選挙で二期目を目指す表明をした時点で、民主党候補としての指名はほぼ確実視されている。一方、トランプ前大統領の共和党指名獲得への道のりは、ライバル候補の出馬が相次いだため当初は不透明であった。だが、トランプ氏は初戦のアイオワ州での党員集会(予備選挙)に続き、ニューハンプシャー州の予備選でも勝利し、共和党の指名はほぼ確実となった。元サウスカロライナ州知事のニッキー・ヘイリー氏は党指名争いを続けているが、苦戦を強いられている。

米国の大統領は外交と国家の安全保障に関しては広範な権限を有している。しかし、国内政策に関しては、長期的な政策の実現に向けて基本的には連邦議会と協力する必要がある。そのためには、大統領と上下両院の多数党が同じ政党である「統一政府」であることが重要になる場合が多い。2010年に民主党の統一政府下で成立した医療保険制度改革法(ACA、通称「オバマケア」)や、共和党のトランプ政権下の統一政府で2017年に実現した減税・雇用法などはその典型例だ。

2024年の大統領選挙では大統領と上下両院の議員が選出されるため、考えうる選挙結果は8通りとなる。理論的にはいずれも可能性があるが、より確率が高いのは4つのシナリオだと考える。上院については、民主党の方が改選対象の議席が多く、その中には当選が危ぶまれている候補者もいることから、共和党が優勢とされている。一方、下院は、現在僅差で共和党が多数派を維持しているため、いずれの党が多数派になるかを予想するのは上院よりも困難である。下院選挙区の区割り見直しが未だ進行中の州があるため、それが11月の選挙結果に影響を及ぼす可能性がある。

現時点で大統領選挙の勝敗を予想するのは時期尚早だが、バイデン氏とトランプ氏のそれぞれが2025年に大統領執務室に座った場合の、最も可能性の高い連邦議会選挙の結果を図表1にまとめた。シナリオは、現時点で実現の可能性がより高いと考えられる4通りに絞っている。実現確率については、今後時間を追って精度を上げて更新していく予定である。

9カ月は政治の世界では長い時間

政治の運気は、長い大統領選の期間中に大きく変わる可能性がある。バイデン氏とトランプ氏のどちらかが健康上の理由や法的な問題で予想外の辞退に追い込まれない限り、両候補は今後9カ月間、熾烈な選挙戦を繰り広げることになる。選挙結果を左右する6つの州はジョージア州、アリゾナ州、ウィスコンシン州、ミシガン州、ネバダ州、ペンシルバニア州だ。

米国の大統領選挙では、一般投票ではなく「選挙人団」の投票結果に基づいて大統領が選ばれるため、世論調査を額面通りに受け取ってはいけない。このため、総選挙では、どちらの政党が勝つのか事前に予想がついている州での得票差よりも、「スイング・ステート」と呼ばれる激戦州での有権者からの支持率の方が相対的に重要になる。とはいえ、選挙当日までの間に世論が大きく変化する可能性があることも忘れてはならない。したがって、2月の世論調査から選挙結果を占うことはまず難しい。

投資へのインプリケーション

選挙結果次第で投資のパフォーマンスに大きな影響が及ぶかどうかは、投資家にとって大きな関心事だ。財政政策や規制政策は短期的には特定の資産クラスのパフォーマンスに影響を与える可能性があるため、注視していく必要がある。だが、長期的な投資判断は政治とは切り離して行うべきである。株価が割安になり、魅力的な投資タイミングが到来しているその時に、政治的なバイアスがリスク回避を促し、長期的な投資パフォーマンスに逆効果をもたらす可能性があるからだ。

同様に重要なのは、1928年以降、大統領選挙は24回しか行われておらず、政党が市場行動に与える政治的な影響について、統計的に妥当な結論を導き出すにはデータが少なすぎる点だ。加えて、評論家が参照するデータは、暦年ベースのパフォーマンスに依拠している場合が多いが、これは誤解を生みやすい。なぜなら、現職の大統領は選挙実施年の12月末まで大統領の職に就いているからだ。どの選挙結果でも、一時的には株式市場のセンチメントに影響を及ぼしてきたかもしれないが、政権が交代した場合、現職の大統領も、次期大統領と同様に、あるいはそれ以上に、市場のパフォーマンスに対して責任があると言える。下の図表2は1928年以降の各選挙年におけるS&P500種株価指数の暦年ベースのパフォーマンスをまとめたものである。激しい選挙戦それ自体は、株式市場の調整を招く引き金にはなっていない。

前例のない世界金融危機が起きた2008年の大統領選を除けば、選挙年のS&P500種のパフォーマンスは、次期大統領の政党に関係なく、概ね同水準であったことが分かる(図表3参照)。

主要な政策争点

両党の大統領指名候補は共に有権者の知名度が高く、また政策綱領も大きく異なる。バイデン大統領は気候変動の影響や所得と富の格差問題を強調するだろう。また、人工妊娠中絶の権利を争点として前面に押し出し、民主党員や無党派有権者の投票率も上げたい考えだ。一方、トランプ前大統領は物価上昇の家計への影響や不法移民が流入する「穴だらけ」の南部国境が招く安全保障上の脅威を強調するだろう。また、包括的な関税の発動を交渉手段として新たな通商協定を結ぶ必要性も主張するだろう。

図表4に、議会の注目を集めると予想される、主要な政策争点をまとめている。個人税に関しては、遺産税の基礎控除額引き上げから、州・地方税の控除額の上限設定にいたるまで、広範囲にわたる時限措置が2025年末で期限を迎えるため、延長等をめぐって議会で議論が行われる見通しだ。選挙結果はこうした法規定の今後の対応にも影響を与えるだろう。

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本稿は、 UBS Financial Services Inc. (UBS FS)が作成した“ElectionWatch 2024: Implications of a potential rematch”(2024年2月2日付)を翻訳・編集した日本語版として2024年2月13日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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