情報技術

TechGPT:AI業界の収益予想を40%引き上げる

AI業界の収益規模は2022年の280億米ドルから2027年には4,200億米ドルまで約15倍に急拡大し、年平均成長率は72%に達すると予想する。

AI業界の新たな成長予想とは?

我々は昨年、AI業界の収益規模の予測を開始し、2022年の280億米ドルから2027年の3,000億米ドルまで年平均成長率61%のペースで拡大すると予想した。また、AIインフラストラクチャー投資見通しが改善し、初期のトレーニング(学習)・インファレンス(推論)ブーム以上に拡大すると見込まれ、さらにAIアプリケーションとモデルへの需要が広がったことから、AI業界の収益規模予想を40%引き上げた。最新の予想では、AI業界の収益規模が2022年の280億米ドルから2027年には4,200億米ドルへと約15倍に急拡大し、年平均成長率は72%に達すると見込んでいる。これによりAI業界は世界のテクノロジー・セクターの中でも最速で成長し、収益規模も最大のセグメントの1つになるだろう。テクノロジー・セクターでは他に同様の成長を示すセグメントがないことから、今後10年のテクノロジー・テーマになるとみている。

収益規模予想の大幅上方修正は、コンピューティング技術のサイクルに基づいた我々のテクノロジー株戦略と整合している。いずれのサイクルでも高い成長見通しが奏功し、投資家は高リターンを獲得した。一つのコンピューティング技術のサイクルは少なくとも10~15年持続し、その間に年間出荷台数が10倍またはそれ以上のペースで拡大した。メインフレーム(汎用コンピュータ)の年間出荷台数は100万台程度に過ぎなかったが、1980年代になるとマイクロコンピュータがコンピューティングデバイスの主流になり、出荷台数は約1,000万台まで急増した。その後、パーソナルコンピュータ(PC)時代が到来するとコンピューティングデバイス市場は急拡大した。PCの年間出荷台数は1億台を超え、最終的に年間ランレートは3億台近くに達した。続くスマートフォンやタブレットPCなどのスマートデバイスは年間出荷台数が2010年代中盤に10億台を超え、足元では年間15億台に近づいている。そしてAIの登場で、この10倍ペースの成長トレンドは今後も続くと予想する。AIチャットボットとアプリケーションの導入数は年間100億件を超える可能性があるからだ。

当レポートでは大幅上方修正の基となったボトムアップ予想の前提を説明している。また、トップダウンで見た場合でも、AIによる大幅な費用削減と新たな事業機会の可能性を踏まえると、2027年の収益規模予想4,200 億米ドルは世界GDPの0.3~0.4%相当に留まり、保守的な水準と考える。AIの旺盛な最終需要見通しは、インフラストラクチャー・セグメントの見通しが改善し、AIアプリケーションとモデルへの需要も拡大していることが背景にある。

主なAIインフラストラクチャー投資として、AIモデルとアプリケーションの学習とその運用のための投資があげられる。これらには、画像処理半導体(GPU)をはじめとするAI半導体などへの投資や、ネットワーキングやエッジAIデバイス等のハードウェアへのインフラ投資が含まれる。AIインフラストラクチャー全体は、2022年の258億米ドルから年平均成長率50%(従来予想:38%)のペースで成長し、2027年には1,950 億米ドルに達すると予想する。アジアの大手AIサプライヤー(供給企業)の業績も強気の見通しだ。アジアでは、学習や推論に使用する半導体への旺盛な需要に加えて、画像処理半導体(GPU)クラウドやエッジAIなどを新たな成長ドライバー(原動力)とみている。

一方、AIアプリケーションとモデルの最近の本格的な展開は、AI業界に「App Storeモーメント」が到来したという見方を裏付けるものと考える。ChatGPTはユーザー拡大を後押しし、AIにとっての「iPhoneモーメント」が到来していると、多くの業界識者が指摘している。しかし、AIの収益化になお確信が持てず、具体的な裏付けを待っている悲観論者も多い。これについては、コパイロット(業務支援ツール)やGPT-4 Turbo with Visionなど多くのAI製品が2023年10-12月期(第4四半期)以降利用可能となったことから、AIの収益化に対する確信度がさらに高まった。こうした動きはスマートデバイス業界に「App Storeモーメント」が到来したといっても過言ではなく、数百万の開発者がアプリを開発し、それに伴いユーザーは従来型のPCや他の電化製品からスマートデバイスに乗り換えるものと考える。こうした状況の下、今後数カ月の間にAIアプリケーションが拡大し、ユーザーの導入が大きく増加するとみている。AIアプリケーションとモデルのセグメントは、足元の水準が低いこともあって急速に成長すると見込む。2022年の22億米ドルから 2027年には2,250億米ドルへと100倍超に拡大し、年平均成長率は152%(従来予想:139%)に達すると予想している。

我々の予想の前提については次章以降で詳しく述べる。総じて、短中期的には特に半導体とソフトウェア分野がAI急成長の波に乗り、中長期的にはインターネットも恩恵を受けるものと考える。

続きはレポートをご覧ください。

全文PDFダウンロード
本稿は、UBS AG Singapore BranchおよびUBS Financial Services Inc.が作成した“TechGPT: Raising AI revenue forecast by 40%”(2024年1月2日付)を翻訳・編集した日本語版として2024年1月15日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Sundeep Gantori

グローバル・テクノロジー担当株式ストラテジスト
UBS Global Wealth Management

Sundeep Gantori

さらに詳しく

UBS グローバル ・ ウェルス ・ マネジメント チーフ ・ インベストメント ・ オフィス( CIO )にて、グローバルのテクノロジーセクター担当株式アナリストを務める。特にインターネット、半導体、ソフトウェア・サービス、ハードウェアを専門とする。さらに、アジア(日本除く)地域についての投資テーマを担当する。
2007年2月に入社。UBS以前は、インド系証券会社で株式アナリストとして勤務し、インドのITおよび通信セクターを担当。

AI、フィンテック、ヘルステック、オートメーション、暗号通貨、ブロックチェーン等に関するレポートを数多く執筆し、ガントリの見解は主要メディアにも定期的に取り上げられている。

最新CIOレポート

UBSのウェブサイトに遷移します。

(3秒後に自動で遷移します)

×

三井住友信託銀行のウェブサイトに遷移します。

(3秒後に自動で遷移します)

×