Monthly Letter 2021年 3月号

スパイク列

ワクチン接種が始まり、入院患者数の急増は峠を越した模様である。経済の正常化は意外に早く実現するかもしれない。財政刺激策が実施されれば、復調し始めた需要に弾みがつくだろう。インフレの兆しが再び現れ始めたが、インフレ率の急騰は一時的と見込まれる。よって我々は市場の先行きを引き続き強気に見ている。相場が大きく変動する局面では、投資家にとってエクスポージャーを追加するタイミングになるだろう。地域別では、新興国市場を推奨する。

神経科学では、脳は神経細胞の活動における一連の「スパイク*」を通じて外部世界を知覚・認知する。これは「スパイク列」として知られている。今後数カ月、投資家はこのような「スパイク列」から目を離せないだろう。ここで重要になるのは、大局的に物事を捉えることに集中し、「脱線」しないことだ。

  • スパイク1:入院患者数:この1年間、政策担当者と金融市場はいずれも新型コロナウイルスの感染者数と入院率の急騰に何度も直面してきた。だが現在はワクチン接種プログラムが始まり、入院患者数の急増は過去のものになるかもしれない。経済の正常化は意外に早く実現する可能性がある。
  • スパイク2:景気刺激策:ロックダウン(都市封鎖)が解除されて消費者と企業の需要が盛り返していることに加え、もう一段の景気刺激策が実施されそうだ。現在、米国では記録的な規模の追加景気対策案の採択が近づいているからだ。景気循環を増幅するような刺激策が実施されると、経済成長率と企業利益の見通しが上振れする可能性がある。
  • スパイク3:インフレ率:供給が抑制されている中で累積需要が顕在化するため、少なくとも目先ではインフレ率が急騰するかもしれない。輸送費、食品価格、半導体価格の推移を見ると、こうした事態がすでに起きていることがわかる。インフレ率の急騰は短期間で収まりそうなので、投資家も政策決定者も冷静さを保つことが重要である。
  • スパイク4:ボラティリティ:上記の指標における変化は、ボラティリティ(相場の変動率)の断続的な急騰を引き起こす。大量に空売りされていた銘柄の先月の動きは、ボラティリティが突如跳ね上がる1つの事例を示したにすぎない。我々は、ボラティリティ上昇のタイミングを、リターンを獲得し、銘柄間格差から恩恵を受け、長期的なポジションを組む機会と捉えている。

*スパイク(活動電位):神経細胞はスパイクと呼ばれるパルスを生成する。

全体として、戦術的投資期間では市場に対する強気の見方を維持する。「スパイク列」でボラティリティは拡大するかもしれないが、我々はそれで上昇相場が崩れるとは考えていない。だが、市場の主要要素をめぐる不確定要因に直面して、投資戦略を諦めるか、その実行を先延ばししたくなる投資家もいるかもしれない。投資家が自らの資産を守り育てるには、余剰資金の運用計画を持ち、それを守り続けることが肝要だ。とりわけ、現在のような低金利、インフレ率上昇、莫大な景気刺激策が続く環境においてはなおさらだ。

どこに資金を配分すべきだろうか。我々は、世界的な経済活動の回復の恩恵を受けやすい市場として新興国を、さらに大型株よりも小型株を有望と考えている。さらに、ボラティリティの上昇局面での投資機会を物色すべく監視を続けている。とりわけ市場のゆがみが表れている米国市場が狙い目だ。クレジット・スプレッド(米国債利回りとの利回り格差)が縮小しているため、クレジット全体よりも株式のリスク調整後リターンの方が投資妙味はあると判断し、米ドル建て新興国国債の推奨を中立に引き下げる。ただし、低金利が継続し利回り物色の気運が強いことから、リスクの相対的に高いクレジットにさらなるリターンの余地があるとの見方を維持する。

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本稿はUBS AGが作成した“UBS Monthly Letter: Spike train”(2021年2月11日付)を翻訳・編集した日本語版として2021年2月18日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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