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ChatGPT について語ろう!

ChatGPT-3 は現在、急成長を遂げる市場を主導しており、今後世界各地で有力な大手テクノロジー企業による大規模な投資と開発が行われるだろう。

  • ChatGPT-3はニュースの見出しを飾り、消費者は興奮と不安が入り混じった反応をみせた。ChatGPT-3は現在、急成長を遂げる市場を主導し、今後世界各地で有力な大手テクノロジー企業による大規模な投資と開発が行われるだろう。
  • 人間の労働に影響が及ぶ恐れがあるが、我々はChatGPTのようなAIツールはいずれ、経済において人手不足を補うためのソリューションの1つになると考える。経済の歴史は、テクノロジーが最後には、生産的な労働者の生産性をさらに高め、雇用と経済成長には正味でプラスとなることを示している。

ChatGPT-3はニュースの見出しを飾り、消費者は興奮と不安が入り混じった反応をみせた。ChatGPT-3は現在、急成長を遂げる市場を主導し、今後世界各地で有力な大手テクノロジー企業による大規模な投資と開発が行われるだろう。これまでの技術の進歩と同様に、最終的には人工知能(AI)が雇用と経済成長を押し上げることになると思われる。我々のレポート「ABC技術への投資」では、AI、ビッグデータ、サイバーセキュリティに焦点を置いている。これら3つの基礎的テクノロジーは転換点を迎えており、企業と政府がこれらの分野への投資をますます重視するなかで、今後数年にかけて導入が加速するだろう。

本レポートはChatGPTが書いたものではないが、それも可能だったかもしれない

ChatGPT-3は、米国のAI研究所が開発したチャットボットである。多くの消費者はチャットボットのことはよく知っているが、その基礎技術にはそれほどなじみがない。ChatGPT-3はGenerative Pre-trained Transformer(GPT)という深層学習の手法を用いた文章を理解し作成するための大規模言語モデルで、人間の会話にほぼ等しい文章を生成することができる。

大規模言語モデルの柔軟性は非常に魅力的だ。最低限の学習で、文章を完成させ、外国語を翻訳し、複数のソースから集めた情報を要約し、技術的な回答からユーモアのある寸劇に及ぶコンテンツを生成することができる。

学習にはさまざまなソースから集められた大量のデータが使われる。ChatGPT-3は書籍や学術論文、そしてウィキペディア全体から情報を摂取した。開発会社によると、ChatGPT-3は45テラバイトを超えるデータを学習した。システムは指示を受けることなく、文章の連なりの中で次の言葉を予測することを繰り返し学んだ。この指示なしの学習は分散コンピューティングのネットワークシステムを必要とした。これは、単一のコンピューターを使うよりも迅速に学習プロセスを成し遂げることを可能にした。大量の摂取データと高い計算能力が組み合わさった結果、1,750億個ものパラメーターを有するモデルができ、これまでに作られた中で最も規模が大きな言語モデルとなった。大規模言語モデルのパラメーターは、実質的にそのモデルが求める値を導き出す。

使用事例とソース

自分で推測するのではなく、ChatGPTに潜在的な使用事例を尋ねてみた。以下はその回答だ。「ChatGPTの潜在的な使用事例には、顧客サービスやメンタルヘルスサポートのためのチャットボットや、個人秘書、コンテンツ作成、翻訳、知識管理、教育・訓練など多くのものがある。」

我々は、ChatGPTが人間とコンピューターシステムとのインタラクションをより一般的で容易になる段階へと発展させる原動力になるとみている。ChatGPTが述べたように、大規模言語モデルは、数多くの垂直市場におけるさまざまなアプリケーションでのコミュニケーションエンジンとして機能させることが可能だ。

回答から明らかに漏れていたのは、検索エンジンでのChatGPTの利用だ。オープンAIに出資する大手IT企業は、ChatGPTの検索エンジンBingへの統合を進めている。大規模言語モデルを利用することで、より複雑で、広告を含まないより自然な検索が可能になり、ソース資料からより適切な意味と、より相応しい情報を抽出することが可能になる。このことから最終的にロバスト性が向上し、有用な検索結果が得られると期待される。

使用されているチャットボットはChatGPTだけでない

ChatGPTに注目が集まっているが、本格的に使用されている大規模言語モデルは他にも多数ある。

• BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)もトランスフォーマー*を用いた言語モデルで、翻訳やセンチメント分析、質問に対する回答を行うことができる。

• T5(Text-to-Text Transfer Transformer)トランスフォーマーベースの言語モデルで、翻訳や要約、質問に対する回答を行う。

• XLNetは、トランスフォーマーベースの言語モデルで、テキストプロンプトに対する回答の正確性と首尾一貫性を重視する。

• RoBERTa(Robustly Optimized BERT Pre-training Approach)もトランスフォーマーベースの言語モデルで、翻訳、質問に対する回答、テキストの分類を行うことができる。

*2017年に発表された自然言語処理(NLP)の分野で画期的な進化をもたらした深層学習モデル

現時点では最新にして最大

ChatGPT-3が最良の大規模言語モデル(LLM)である可能性はある。その理由は単純で、それが最新型のLLMであるため、最新のデータソース、新しいAI技術、高い計算能力がより安価で利用できることによる恩恵を受けるからだ。その結果、公開情報に基づくと、ChatGPT-3のパラメーターの数は、2番目のライバルの少なくとも2倍になった。

ChatGPT-3への熱狂ぶりの理由には、高い能力以外に、単に消費者が容易にアクセスできる初めてにして唯一のLLMであることが挙げられる。上述した他のLLMは毎日一般消費者や企業によって使用されているが、他のアプリケーションに統合されているため、あまり目立たず、そのためにユーザーの目にはほとんど触れない。

ChatGPT-3は今日最先端のソリューションであるように思われるが、市場の動きは速く、世界的に主要な大手テクノロジー企業のすべてが大規模な投資と開発を行うと考える。また、大手クラウドサービス事業者は、統合されたソリューションを提供することができるという点で、もともと強みを持っている可能性がある。また、LLMの利用は今後増える一方で、使用事例を広げながら、数々のアプリケーションに深く統合されていくだろう。

あなたの仕事にAIは導入されるか

新たな創造的破壊的技術の波が押し寄せるたびに、自動化による大量失業の不安が煽り立てられてきた。そして我々はすでにAI、特にChatGPTに関する不安を目にしてきた。

新しいテクノロジーが導入されたために解雇が行われたケースは過去には確かにあり、ChatGPTは一部の事務職と顧客サービスの仕事を奪うかもしれない。しかしながら、AIツールは最終的には概ね、経済において人手不足を補うための解決手段の1つになると考える。

しかしながら、経済の歴史は、何らかのテクノロジー(製造技術、コミュニケーション技術、情報技術)が最後には、生産的な労働者の生産性をさらに高め、雇用と経済成長には正味でプラスとなることを示している。

機会はどのくらい大きいか

IDCとブルームバーグ・インテリジェンスのデータによると、広範なAIのハードウェアとサービスの2020年の市場規模は約360億米ドルだった。我々はこの市場が年平均成長率20%で、2025年までに900億米ドルにまで拡大すると予想する。対話型AIが収益化の比較的初期段階にあることを考慮して、我々はこのセグメントが2020年時点で広範なAIの潜在市場の10%を占めていたと見積もる。これは主に企業と個人の定期利用によるものである。とは言え、ユーザーによる導入は急速に進んでいる。ChatGPTのユーザー数は1週間で100万人の大台に到達し、この数に達するまでの速さはアプリケーションの中ではインスタグラムを抜いて1位になった。同様に、企業の間では、対話型AIを既存事業のエコシステムに統合することへの強い関心が見られる。結果的に、広範なAIの潜在市場に占める対話型AIの割合が2025年までに20%(180億~200億米ドル規模)に上昇する可能性があると予想するが、これは控えめな数字かもしれない。対話型AIの進歩(計算能力、機械学習、深層学習の能力の進歩)、AI人材、企業の導入、政府支出、インセンティブが予想を上回った場合、この数字はより大きくなる可能性がある。

定期利用による収益増加に加えて、AI生成コンテンツ(AGC)広告の潜在性は広がりを見せると考える。コンテンツ生成は過去10年ほどで、極めて速いペースで変化してきた。2010年代前半のコンテンツ制作のプロフェッショナルによる生成コンテンツ(PGC)から、一般ユーザーがコンテンツを制作しユーザー間で共有することで影響力を発揮するユーザー生成コンテンツ(UGC)へと時代は変化した。我々は、対話ベースの検索とAI生成記事・動画で、AGCが新たな時代の到来を告げると考える。

AIへの投資方法

我々は人工知能を、多くのアプリケーションと産業に渡って重要な使用事例を持つ、水平的なテクノロジーと見ている。より広い観点から見て、AIはビッグデータ(Big Data)とサイバーセキュリティ(Cybersecurity)とともに「ABC技術」を形成する。これら3つの基礎的テクノロジーは転換点を迎えており、企業と政府がこれら分野への投資を強化するなかで、今後数年にかけて導入が加速すると考える。

対話型AIは現在、収益化の初期段階にあり、その運用には高額な費用がかかるため、コストは依然として高い。これらのプラットフォームに直接投資する代わりに、投資家は興味があれば差し当たって半導体企業や、生成AI (ジェネレーティブAI)の普及・発展に必要な基盤を提供するクラウドサービス事業者を検討することができる。

中長期的には、ヘルスケアや伝統的な製造業などさまざまな業種で生成AIを導入して利益率を向上させることができる。

投資家は上場株式の他に、プライベート・エクイティでの投資機会を検討することもできる。テクノロジーセクターは、12~18カ月間の業績不振を経て、新たなイノベーションのサイクルに入っている。プライベート・エクイティ・ファンドは初期段階で投資することにより得ることのできる、興味深い新たな機会を提供すると考える。

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本稿は、UBS Financial Services Inc. (UBS FS)、UBS AG Singapore Branch、UBS AG Hong Kong Branchが作成した“Information technology: Let's chat about ChatGPT”(2023年2月22日付)を翻訳・編集した日本語版として2023年3月20日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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