マンスリーレター3月号

転換点の乖離

対話型AIチャットボットChatGPT(チャットGPT)にマンスリーレターの導入文を書いてもらった。文章作成にあたり指示した内容は「ChatGPTとこれをどう捉えるか定かではないことについて述べている私のマンスリー投資レターについて、ウィットに富んだ(知的で気の利いた)導入文を作成してほしい」というものだ。

  • 転換点が前倒しに:直近のデータによると、転換点は地域によってさまざまなスピードで到来している。中国と欧州は予想よりも早い。
  • 米国のリスク:米国経済は堅調さを維持しているが、米連邦準備理事会(FRB)が是が非でもインフレを抑制しようとするあまり、景気後退が先送りされ、更に深刻化するリスクが高まりそうだ。
  • 選別して投資する:転換点の到来のタイミングが乖離することで、リスク資産への投資判断には地域ごとの選別が重要になる。戦術的には、投資家は米国株およびグロース株以外にも分散投資をするのが得策と考える。
  • 資産配分:新興国株とバリュー株を推奨する。ディフェンシブ・セクターでは、ヘルスケアよりも生活必需品の方が投資妙味があるとみている。

対話型AIチャットボットChatGPT(チャットGPT)にマンスリーレターの導入文を書いてもらった。文章作成にあたり指示した内容は「ChatGPTとこれをどう捉えるか定かではないことについて述べている私のマンスリー投資レターについて、ウィットに富んだ(知的で気の利いた)導入文を作成してほしい」というものだ。

こんにちは!マンスリー投資レターを通じて皆さんとここで再びお会いするにあたり、ChatGPTをどう捉えればいいのか?と考えを巡らせています。チャットボットを装った金融の天才か、もしくは、時折全くの偶然で予言を的中させるデジタルの「マジック8ボール」なのか。皆さん、これに関して結論はまだ出ていません。わかっているのは、ChatGPTがある種の興味深い回答をするコツを知っていて、時にはユーモアのある表現をするということです。*

*上記のChatGPTの回答には、わずかな編集を加えています。ChatGPTは2021年以降の世界と出来事について限られた知識しか有しておらず、必然的に本レターの残りの部分は人間である著者が作成しています。

勿論、このところ結論がまだ出ていないのは、ChatGPTだけではない。投資家にとってより切実なのは、最近のデータが、米国経済の「ハードランディング(硬着陸)」のリスクと「ソフトランディング(軟着陸)」のリスクを同時に高めているように見えることだ。

小売売上高、雇用の伸びとサービス業の景況感は、金利上昇という逆風にもかかわらず景気がよく持ちこたえていることを示している。しかし同様に、1月の消費者物価指数(CPI)インフレ率が前月から若干減速し、労働市場も依然ひっ迫していることから、米連邦準備理事会(FRB)は、インフレ率を目標水準に引き下げるために利上げを続ける必要があるだけでなく、利上げ幅がかなり拡大する可能性がある。株式市場は、このような相反するシナリオにはさまれ、2022年10月の安値は大きく上回りながらも、ここから大幅に上昇するほどの確信も持てていない。

さて、ここからの展開をどう読めばよいのか?『Year Ahead 2023』では、2023年が「転換点となる年」であり、経済成長率は一旦減速した後、年の半ば頃から再加速すると述べた。我々は、世界全体の動きとしてみればこの見方を変えてはいないものの、最新のデータによると、転換点は地域ごとにさまざまなタイミングで起きている模様である。

この冬にかけて低成長が続いた中国経済と欧州経済は、それぞれゼロコロナ政策の終了とエネルギー価格の大幅な低下によって、どちらも予想より早く転換点を迎えている。これに対し、米国経済は底堅く推移しているため、景気後退入りはおそらく先送りされ、しかも予想より深刻化するリスクが高まっており、先行き不透明な時期が一段と長くなっている。

投資家にとっては、転換点の地域差により、市場と経済のさまざまなシグナルを読み間違えるリスクが高まっていることになる。したがって、戦略的(長期的)なポートフォリオ運用を行う上で投資判断を誤る可能性を減らすためには、ポートフォリオ管理への体系的、包括的、専門的なアプローチがとりわけ重要になっている。

戦術的(6カ月程度)には、現在のような環境では、投資家は米国株およびグロース株以外にも分散投資を確実に行うことが重要である。インフレ率と金利の先行きが不確実であることから、我々は引き続きバリュー株がグロース株をアウトパフォームすると予想する。さらに、欧州と中国の転換点の前倒し、新興国株式と、ドイツなど欧州市場の一部が米国株式よりも高パフォーマンスを上げるとの我々の見方を裏付ける。米国経済の下振れリスクを考慮し、我々はある程度のディフェンシブ銘柄の保有継続も引き続き推奨するが、ディフェンシブ・セクターの中ではヘルスケアよりも生活必需品の方が投資妙味があるとみている。

その他、金利上昇を受けて、高格付債、投資適格債、新興国債など債券全般でさまざまな投資機会が引き続き見いだせる。ただし、我々はハイイールド社債については慎重姿勢を崩していない。一方、コモディティは、供給制約と旺盛な需要を背景に、全般的に上昇するだろう。また、株式市場と債券市場は現在も中央銀行の政策への期待に左右されながら互いに相関しているため、それらと相関の低いヘッジファンド戦略はポートフォリオ内で重要な役割を果たすと考える。

米国の見通し:ファット・テール*拡大-マクロ経済主導の極端な相場変動に備える

米国経済は年初来、予想よりも底堅く推移している。1月には雇用者数が50万人以上増加し、失業率は53年ぶりの低水準に達した。小売売上高は12月よりも3%増加した。これは月次ベースでは過去20年で最も高い増加率の部類に入る。サービス・セクターも予想外に反発した。米供給管理協会(ISM)非製造業景況指数は12月に景気拡大・縮小の節目となる50を下回ったものの、1月には55.2に上昇した。

投資家が現在直面している問題は、これが良いニュースなのか、悪いニュースなのかということだ。

勿論、予想以上の経済成長は、それ自体は良いことであり、金利上昇に対する耐性が強いことは、米国経済がソフトランディング、つまりインフレ率が目標水準に戻ってプラス成長となる確率が高まる可能性が高いことを示唆している。

*ファット・テールは、金融商品のリターンの極端な変動の頻度が増えることで、リターン頻度の正規分布が通常とは異なり、分布のすそ野が広がった状態を示す。金融市場の調整時にみられる。

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本稿はUBS AGが作成した“Monthly Letter: Inflections diverge”(2023年2月23日付)を翻訳・編集した日本語版として2023年3月2日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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