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FRB、堅調な経済指標にタカ派色が再度強まる

FRBが懸念しているのは根強い高インフレだけではない。直近発表された経済データは、米国経済が予想ほど迅速に減速していないことを示唆した。

今週の要点

堅調な経済データにFRB高官の発言が再びタカ派色を強める

FRBが懸念しているのは根強い高インフレだけではない。直近発表された経済データは、米国経済が予想ほど迅速に減速していないことを示唆した。1月の雇用統計は失業率が1969年以来 の低水準を記録し、また1月の小売売上高は前月比で3%上昇し、過去20年 でも高水準の伸びを示した。

こうした経済データを受け、FRB高官のタカ派色がますます強まった。ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁は、「労働市場が強いことから、インフレ率が予想よりも長く高止まりする、または見通し以上の金利の引き上げが必要になるリスクが明らかに存在する」と 語った。また、セントルイス連銀ブラード総裁は、3月のFOMCでは(2月は利上げ幅を25ベーシスポイント(bp)に縮小したが)50bpの利上げの可能性も排除しないと述べた。同総裁は、「インフレとの戦いが長くなる」とも語った。クリーブランド連銀メスター総裁も、「利上げペースを速めることは可能であり、いかなる特定の会合でも利上げ幅を引き上げる可能性がある」と述べた。

こうしたことから、3月22日の次回FOMCで、FRBが2023年の経済成長率および利上げペースの見通しを引き上げる可能性が高まったと考える。直近の動きは、市場がインフレの転換点とFRBの利下げへの転換を過度に早く織り込んでいるという我々の見方を裏付けるものである。

要点:こうした状況を勘案し、株式市場の下落局面でのリスクを抑制しながら上昇局面でのリターンを捉える戦略を推奨する。高インフレ・景気減速の局面でアウトパフォームが期待される、ディフェンシブ株(生活必需品株など)、バリュー株、高インカム銘柄をポートフォリオに組み入れることを勧める。また、市場が転換点の到来を織り込み始めたときに堅調なパフォーマンスが見込まれる一部のシクリカル株も併せて組み入れることを勧める。

ロシアの減産に伴い原油価格は回復基調に

原油価格は今年も値動きの大きな展開が続いている。市場はFRBの利上げサイクルが長引くことへの懸念と、中国経済の再開による石油需要の回復をめぐる楽観論とに割れており、ブレント原油価格は足元では年初と同じ1バレル80米ドルをわずかに上回る水準で推移している。

だが、最近ロシアが3月に日量50万バレル減産すると発表したこともあり、今年は市場のひっ迫が原油価格をいずれ押し上げると考える。

欧州連合(EU)がロシア産原油の禁輸を導入した後、ロシアの石油生産量は当初は底堅く推移していたが、2月からの軽油など石油製品の禁輸措置が産油量に打撃を与えているようだ。欧州需要の喪失分を埋め合わせるに足る買い手を見つけるのはますます困難になるため、ロシアの産油量は2022年初めの日量1,000万バレル超、2022年12月の977万バレル超から、今年は日量900万バレル以下まで低下すると予想する。

また、中国が想定外に迅速にゼロコロナ政策を撤廃したことも、世界の石油需要を押し上げている。今年は石油需要の伸びの3分の2を、中国の経済活動の再開を追い風としたアジア新興国が占めるとみており、2023年後半の世界の石油需要は1億300万バレルを超えるだろう。加えて、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの非加盟国で構成するOPECプラス以外の産油国(米国等)については、今年の世界需要が日量160万バレル増加するのに対して、供給量は130万バレルの緩やかな増加にとどまることが予想される。

要点ブレント原油価格は今年1バレル110米ドル、WTI原油価格は107米ドルへと上昇するとの予想を維持する。

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本稿は、UBS AGが作成したUBS House View-Weekly Global (2023年2月20日付)を一部翻訳・編集した日本語版として2023年2月21日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。

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