House View Weekly

米利下げ転換について市場の確信度が低下

市場はこれまで、金利見通しについてFRB高官よりもハト派的な見方を長く維持してきたが、ここ数日でその見方に変化が生じ、投資家はタカ派的な金利動向を予想するようになった。

今週の要点

FRBの利下げへの転換について、市場の確信度は低下

市場はこれまで、金利見通しについて米連邦準備理事会(FRB)高官よりもハト派的な見方を長く維持してきた。しかし、ここ数日でその見方に変化が生じ、投資家はタカ派的な金利動向を予想するようになった。つい先日の2月1日にフェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込んだ政策金利のピークは4.81%であったが、これが足元では5.2%まで上昇し、米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーの直近の予想中央値5.125%に概ね並ぶこととなった。

1月の雇用統計で失業率が53年ぶりの低水準となったことを受けて、FRB高官もタカ派的なトーンを強めた。パウエルFRB議長は7日 、この雇用統計が、インフレ鎮圧に「かなりの時間」を要するというFRBの見方を裏付けることとなったと述べ、また「これほど強くなる」とは予想していなかったと付け加えた。

こうした動きは、金利、経済成長、市場センチメントの転換点が到来するのはまだ先のことであるという我々の見方を裏付ける。過去数カ月の間にインフレは鈍化したが、労働市場が堅調なことから、FRBが目標とする物価上昇率2%の達成はほど遠いといえる。

また、2022年以降で425ベーシスポイント(bp)という過去数十年で最速の利上げによる遅行効果が経済および企業業績に及びつつある。全体の企業利益は市場予想を0.5%ポイント下回っており、1株当たり利益(EPS)は5.2%減の見通しだ。これは、特にマクロ経済上の逆風が強まることにより業績リセッション(後退)に陥るという我々の見方を裏付けるものである。

要点:米国株式市場は当面逆風を受けると引き続きみている。中国およびドイツの株式市場は、今年後半の世界経済成長の転換の恩恵をいち早く受けると予想する。

楽観的な市場環境においてもヘッジファンドは引き続き有効

2023年のグローバル株式市場は好調なスタートを切り、MSCIオールカントリー・ワールド指数は1月に7.1%上昇した。一方、ヘッジファンド指数であるHFRIファンド加重総合指数の上昇率は2.8%、うち、昨年のヘッジファンドのアウトパフォームをけん引したマクロファンドはわずか0.3%の上昇にとどまった。

だが、この状況についてはより幅広い視点から捉える必要があるだろう。昨年グローバル株式が19.8%下落したのに対して、ヘッジファンド全体の下落率は4.2%にとどまった。うち、マクロ戦略のリターンは9%のプラスだった。

上場市場のセンチメントは最近改善しているが、ヘッジファンドは、ポートフォリオの分散において重要な役割を引き続き担うと考えている。

1月の米雇用統計は、インフレ、金利および経済成長見通しに依然としてリスクがあることを改めて示唆する内容だった。2023年は企業利益が減速することを予想しており、その減速は2022年10-12月期(第4四半期)決算発表からすでに始まっている。

一方、経済成長見通しは各国・地域で乖離しており、この状況はアクティブ戦略の重要性を裏付ける。米サプライマネジメント協会(ISM)が発表した1月の製造業景況感指数は好不況の節目となる50をさらに割り込み 、2020年5月以来の水準へと低下した。一方、中国経済の急速な再開と欧州の暖冬を受けて、中国、欧州の両地域に投資機会が生まれるだろう。銘柄を厳選し、幅広い市場の中で最もパフォーマンスが優れた領域へ迅速に資産配分を行うことが、成長の転換点という追い風を受ける鍵を握ると考える。

要点:ヘッジファンドは柔軟性の高い金融商品であり、アルファの創出、ポートフォリオの分散、下落リスクの緩和に寄与する。さまざまな資産クラス、地域および金融商品に亘ってロング/ショート・ポジションを取る能力のあるマクロ戦略マネージャー、相関のないリターンを提供する株式ニュートラルファンド、分散アプローチを採るマルチ戦略ファンドを引き続き推奨する。だがヘッジファンドには流動性リスクがあるため、長期間投資し続ける意思と余裕が求められる。

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本稿は、UBS AGが作成したUBS House View-Weekly Global (2023年2月13日付)を一部翻訳・編集した日本語版として2023年2月14日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。

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