House View Weekly

インフレ鈍化も、ハト派転換は視野外

先週のS&P500種株価指数は2.7%上昇した。12月のCPIがさらに鈍化の兆しを示し、それがFRBに再び利上げペースの減速を促すのではないかとの思惑が広がった。

今週の要点

インフレは鈍化するも、FRBのハト派転換はまだ視野の外

先週のS&P500種株価指数は2.7%上昇した。12月の消費者物価指数(CPI)がさらに鈍化の兆しを示し、それが米連邦準備理事会(FRB)に再び利上げペースの減速を促すのではないかとの思惑が広がった。12日に発表されたCPIはその期待を裏切らない内容だった。総合CPIは前年同月比6.5%増と1年以上ぶりの低い伸びに減速し、ピークの9.1%から6カ月連続で低下した。食品とエネルギーを除くコアCPIは、11月の前年同月比6%から5.7%へと伸びが鈍化した。

インフレに関する最近のニュースは明るい材料となっているが、市場がFRBの政策転換点に向けて勇み足になっているとの我々の見方は変わらない。

その理由の1つ目は、市場が織り込んでいるハト派姿勢への転換を、FRB高官が一貫して否定していることだ。直近ではアトランタ連銀のボスティック総裁とサンフランシスコ連銀のデイリー総裁が、政策金利は5%を超えるとの予想を強調した。ボスティック総裁は、政策金利を「長期」に亘り5%超に維持するべきだとの見解を示し、自身は「政策転換を考えていない」と述べた。こうしたFRB高官の発言は、政策金利が4.95%近辺をピークに2023年末までに4.5%に低下するとの市場の織り込みとは相反する。

2つ目に、賃金の伸びが鈍化している証拠が依然として暫定的なことだ。市場は12月の平均時給の伸びが減速したことを好感した。ただし、この指標では職業構成の変化が調整されていない。一方、アトランタ連銀の賃金トラッカー、求人件数、失業率などの他のデータは依然として人手不足を示唆している。

要点:FRBは今年後半に政策転換に踏み切ると我々は予想する。リスク許容度の高い投資家は、この政策転換に備えることができるだろう。だが、政策や経済成長の転換点にはまだ到達していないと考えており、株式、債券市場ともにディフェンシブ寄りのポジションを引き続き推奨する。

FRBはサステナビリティの推進と一線を画す

FRBのパウエル議長は、FRBは政治と一線を画す必要があると述べ、気候変動政策への関与に消極的な姿勢を見せた。議長は「FRBは現在も将来も、気候変動に関する政策担当者にはならない」と述べた。

だが、FRBはこの点において、主要中銀の中で少数派になりつつある。欧州中央銀行(ECB)のシュナーベル専務理事は最近、ECBは恐らく数兆ユーロの保有債券を活用し、より気候に優しい発行体の債券を組み入れることを検討すべきだと述べた。

EUのロシア産化石燃料依存からの脱却計画である3,000億ユーロのリパワーEU計画や、3,700億米ドルをエネルギー安全保障と気候変動対策に充てる米国のインフレ抑制法など、各国政府も排出量削減の取り組みを引き続き強化している。オーストラリア政府も先週新たな排出規制強化計画の詳細を公表した。この計画では、オーストラリアで排出量が多い上位215施設に対して、2030年まで温室効果ガス排出量を少なくとも28%(年間約5%)削減することを求める。

要点:昨年のサステナブル投資のパフォーマンスは冴えなかったが、長期的に見れば絶対、相対リターンともに依然として好調だ。サステナブル投資の長期パフォーマンスを推進する構造的なトレンドは変わらないと考えている。2023年は、バリュー型企業、サステナブル・ボンド、ESGインプルーバー(企業業績にも影響を与えうる排出量削減のような問題で継続的に改善を示している企業)など、サステナブル投資戦略に対してさまざまな好機があるとみている。

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本稿は、UBS AGが作成したUBS House View-Weekly Global (2023年1月16日付)を一部翻訳・編集した日本語版として2023年1月17日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。

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