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リスクオフ再来で株価下落

S&P500種株価指数は4日から3日続伸していたが、9日に2.1%反落した。8日に行われた米中間選挙の結果は接戦となっている。

何が起きたか?

S&P500種株価指数は4日から3日続伸していたが、9日に2.1%反落した。8日に行われた米中間選挙の結果は接戦となっており、今のところ、共和党がわずかに優勢、民主党は予想以上に健闘している。

S&P500種の全セクターで広範にわたるリスクオフが強まり、エネルギー、情報技術、一般消費財が特に大きく下落した。公益事業やヘルスケアなどのディフェンシブセクターは小幅な下落にとどまった。

原油価格の下落がエネルギー株の重しとなっている。米国の原油在庫と中国のコロナ感染拡大に対する懸念から、ブレント原油価格は3%下落し1バレルあたり92.6米ドル、今週の下落幅は6%に拡大している。

米国債利回りは低下した。米10 年債利回りは3ベーシスポイント(bp)低下し4.1%、2年債利回りは3bp低下し4.64%となった。米ドル指数(DXY )は0.8%上昇した。

その他市場でもリスクオフの動きがみられ、米暗号資産取引所の流動性不安を受け、ビット コイン価格が15%下落し16,000米ドル近辺となった。同取引所は倒産の噂や資金流出急増に直面しており、8日、競合への米国事業以外の売却案に合意したが、翌日撤回された。

今後の展開

9日のリスクオフの動きは複数の要因を反映したものだ。米中間選挙の結果は、現時点では当初予想されていたような共和党の圧勝とはなっておらず、不透明な状況が長引いている。本稿執筆時点で共和党は下院では過半数議席をやや上回ると予想されるが、上院での過半数確保は微妙だ。ジョージア州では上院選の決選投票が行われる見通しとなり、結果が判明するのは決戦投票が行われる12月6日になるだろう。

1982年以降10回の中間選挙が行われているが、S&P 500種株価指数はいずれの中間選挙実施後も12カ月で上昇している。平均上昇率は13.5%程度だ。ただし、インフレ率の高止まり、積極的な利上げ、地政学的緊張の高まりなど様々な逆風が市場に吹き付けていることを勘案すると、今年はトレンド通りにはいかない可能性がある。

インフレ懸念も9日の下落を招く要因となったと思われる。鍵となる米消費者物価指数(CPI)が10日に発表されるのに先立ち、投資家の間でリスクポジションを減らす動きが広がったためだ。投資家はインフレの減速を期待しているが、クリーブランド連銀が公表するナウキャスト(CPIの予想値)では、10月の総合CPIは前月比0.8%増と予想されている。FRBが利上げ減速を判断するには高すぎる水準だ。

暗号資産の急落は、金融環境の引き締まりが続く中で投機的資産へのセンチメントを後退させたかもしれない。シカゴ連銀が算出する全米金融環境指数 (NFCI)は、パンデミック発生当初の急騰を除けば、世界金融危機以来の引き締まった水準にある。金融環境の引き締まりによる影響は融資状況にも表れている。

FRBが四半期ごとに発表する銀行上級貸出担当者調査(金融機関の貸出態度)によると、39%の銀行が商業及び産業ローンの融資基準を引き締めている。融資基準の動向は歴史的に企業利益の先行指標となっている。足元の引き締め傾向は昨年から急加速しており、S&P500構成企業の業績に今後数四半期に亘りさらなる圧力となるだろう。

総じて、こうした状況が株式市場の持続的な上昇を後押しするとは見ていない。FRBやその他主要中銀は、2023年1-3月期(第1四半期)まで金融引き締めを継続するとみられ、経済成長率は来年初めまで引き続き減速するだろう。金融政策の引き締めが続く中で、世界の金融市場はストレス要因による影響を受けやすい。また、こうした逆風はまだ企業の利益予想や株式

のバリュエーション(株価評価)に織り込まれていないと考える。2023年の世界の企業の1株当たり利益(EPS)は、ボトムアップによるコンセンサス予想では5%の増加だが、我々は3%の低下と予想する。

投資見解

今後3~6カ月はリスクに見合うリターン水準は期待できないだろう。ただし、一時的な相場上昇の可能性も考慮し、上昇局面を見逃すことなく、短期的な下方リスクをプロテクトする戦略を勧める。

現在の環境下では、新たな資産組み入れにはディフェンシブ資産に焦点を当てることを勧める。株式では、元本確保戦略、バリュー株、高クオリティ高配当株を推奨する。セクター別では、グローバル・ヘルスケア、生活必需品、エネルギーを推奨し、グロース株、資本財、情報技術を非推奨とする。地域別では、米国株式に対して割安でバリュー株比率の高い英国株式とオーストラリア株式を推奨する。米国株式は、情報技術銘柄とグロース銘柄比率が高く、バリュエーションも割高となっているからだ。

債券では、米ハイイールド債より高格付債、投資適格債を推奨する。通貨では、英ポンドとユーロに対し「安全資産」として米ドルとスイス・フランを推奨する。伝統的資産との相関の低いヘッジファンド、例えば年初来アウトパフォームしているマクロ戦略などの活用も勧める。

暗号資産に関しては、我々が長らく警告してきたように、コインやトークン取引は投資損失となる可能性がある。もっとも、暗号資産への長期投資を指向する投資家においては、既存ビジネスへのブロックチェーン技術の導入が可能な伝統的プラットフォームやイネーブラーなどを通して、暗号資産関連への投資機会を検討することも可能である。

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本稿は、UBS AGが作成した“CIO Alert: Stocks fall as risk-off mood returns”(2022年11月9日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年11月10日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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