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業績見通しテクノロジー企業不振が重石

米銀の堅調な業績発表を皮切りに決算シーズンが始まったが、テクノロジー・セクターの決算は期待外れとなった。

業績見通しはテクノロジー企業の不振が重石

米銀の堅調な業績発表を皮切りに決算シーズンが始まったが、テクノロジー・セクターの決算は期待外れとなった。米大手多国籍テクノロジー・コングロマリット数社はいずれも低調な決算およびガイダンス(業績見通し)を発表し、株価が急落した(米大手テクノロジー・コングロマリットは約20%下落)。米大手eコマースも年末商戦の予想が弱く、時間外取引で約20%下落した。また米大手多国籍テクノロジー・コングロマリットは米ドル高が強い逆風となると警告した。

こうした動きにもかかわらず、先週はS&P500種株価指数が4%、ハイテク株比重の高いナスダック総合指数が2.2%上昇するなど、株式市場は上昇した。しかし、決算発表がほぼ半分終了し、米企業の業績モメンタムは落ちている。

テクノロジー・セクターの不振は、景気が減速する中、広告およびクラウド化への企業の支出削減を反映している。テクノロジー企業は米ドル高の悪影響も受けている。海外売上高比率はS&P500種の40%対して、情報技術セクターは約60%と高い。

同セクターの業績予想は過度に楽観的と考える。我々は、個人消費の縮小、欧州の需要減退、米ドル高による半導体、ソフトウェア、ITサービス、ハードウェア企業のさらなる業績予想下方修正を予想する。バリュエーションは低下しているが、割安ではない。株価収益率(PER)が3分の1低下したが、同セクターの市場全体に対するプレミアムは依然21%と高い水準にある。

要点:テクノロジー・セクターは、金利上昇圧力が高まり、世界的に需要が縮小し、業績予想下方修正のリスクが高いことから、非推奨としている。一方、バリュー株、特にエネルギー株、またヘルスケア株などディフェンシブ株を推奨する。

中国株式の見通し改善を待つ

第20回中国共産党大会で習近平体制が強化された後、中国株式は急落した。習氏は異例となる3期目の続投を決めただけでなく、首脳部を側近で固めた。先週はMSCI中国指数が9%下落した。

習氏に一段と権力が集中したことにより、投資家がゼロコロナ政策の継続リスク、民間部門への支援低下、米国との地政学的緊張の激化、政策ミスの危険の高まりを織り込んだ可能性がある。また、中国政府が成長重視の経済政策から距離を置くとの懸念も高まった。

だが、全体として、政治的な不確実性に伴うリスクと、マクロ経済の回復による上振れは拮抗している。2023年度の国内総生産(GDP)は、力強いインフラ投資、底堅い製造活動、消費支出の拡大を軸に、依然として5%成長を見込んでいる。予想外に前向きな政策が打ち出される可能性もあり、その場合、こうした見通しをさらに明るくするだろう。一方、株式バリュエーション(株価評価)は10年ぶりの水準まで低下し、MSCI中国指数のPEGレシオ(予想株価収益率(PER)を1株当たり予想利益成長率(EPS)で割った数値)は現在0.59倍だ。これは過去平均を標準偏差1.6下回る。

要点:総じて、中国株式は中立を維持する。中国株式の保有比率は世界の株式時価総額における中国株の構成比率と同じく約3%水準が適切だと考える。この先さらに下落する可能性があることから、中国株式への配分が多い投資家はポジションを縮小し、その他新興国市場や先進国市場へ分散することを推奨する。

直近下落しているが、米ドル高は続く

米ドル指数は先週下落した。米連邦準備理事会(FRB)のタカ派姿勢の後退期待から米国債金利が低下する中、安全資産への需要が薄れた。財政慎重派のスナク氏が新首相に選ばれたことを受けて、英国財政の先行きに対する市場の信頼が高まり、英国資産へのセンチメントが落ち着いた。欧州ガス価格の低下もまた、ユーロに対する地合い改善に寄与した。

だが、米ドルがピークを打ったとみるのは時期尚早だ。米国のインフレ率は依然として高く、FRBは自身の信頼性が問われていることを自覚しており、正式なインフレ指標が沈静化するまで積極的な利上げを継続すると考える。米ドルは10-12月期(第4四半期)も引き続き上昇した後、投資家がFRBの利上げサイクルの終焉を織り込み始めるとみられる2023年第1四半期に、天井をつけると予想する。

一方、イングランド銀行と欧州中央銀行(ECB)の両中銀は、インフレを抑制するために、急激な景気悪化と引き換えに金利を引き上げるという厳しい状況に置かれている。アジアでは、日銀も政策を転換しない限り、日本の財務省による円買い米ドル売り介入で円安トレンドを変えるには不十分だ。また、中国が突如ゼロコロナ政策を転換する可能性は低く、短期的に人民元は引き続き下振れしやすく、人民元に対して米ドルが7.5以上に上昇する可能性もある。

要点:米ドルの推奨と、ユーロと英ポンドの非推奨を継続する。ユーロ/米ドルは今後数カ月のうちに0.90台前半まで下落し、その後、我々が予想するようにFRBが利上げ停止を示唆すれば、2023年3月末に0.96に反発するとみている。また、スイス・フランとカナダ・ドルも推奨する。


本稿は、UBS AGが作成したUBS House View-Weekly Global (2022年10月31日付)を一部翻訳・編集した日本語版として2022年11月1日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。

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