通貨市場

荒波を航海する

米国金利が着実に上昇し、世界経済に対する懸念が高まる中、米ドルが引き続き上昇基調にある。

  • 米国金利が着実に上昇し、世界経済に対する懸念が高まる中、米ドルが引き続き上昇基調にある。2023年1~3月期(第1四半期)まで、特に対欧州通貨でこうした米ドル高が続くと予想する。
  • 2023年第4四半期までの為替予想を行った。短期的には米ドル高を見込むが、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを停止すれば米ドルは天井をつけるだろう。
  • 米ドル、スイス・フラン、カナダ・ドルを推奨し、ユーロと英ポンドを非推奨とする。円と人民元を含むアジア太平洋通貨のポジションについては、2023年第1四半期にかけて下落リスクをヘッジすることを勧める。

FRBの積極的な金融政策とその経済成長への影響を受け米ドル高が進んでおり、これが今度はその他通貨を揺るがしている。こうした状況は、FRBが利上げペースを大幅に減速させるか、世界経済が安定してくるまで続くとみられる。FRBは2023年第1四半期に政策を転換し、世界の国内総生産(GDP)成長率は来年半ばまでに底を打つと予想する。よって米ドルは、2022年第4四半期までは引き続き強含み、投資家がFRBの利上げサイクル終焉を織り込み始める来年第1四半期に天井をつけると予想する。

さらに、利下げ見込みが高まれば、米ドル見通しは反転するだろう。だが、ユーロ、英ポンド、円といったその他主要G10諸国通貨が大きく反発するとは考えておらず、適正価値を大きく下回る状況が続くとみている。よって、2023年3月のユーロ/米ドルを0.96、英ポンド/米ドルを1.10、ドル円を155と予想する。豪ドル/米ドル予想は同0.67に据え置く。

12カ月先為替予想は、これら国々の経済成長が来年は安定するが、本格的回復には至らないとの見方を反映したものだ。だが、世界経済が我々の想定を上回る成長を示せば、ユーロ、英ポンド、円という3つの準備通貨だけでなく新興国通貨も時間をおかずに下落分を取り戻すとみられる。結局のところ、ほぼ全ての指標から見て、足元の米ドルは極めて割高である。

何が重要な問題なのか?

世界はいま複雑な政治環境に置かれており、未解決の多くの問題が我々の見通しにとってリスクになる可能性がある。金融市場は今もパンデミックの影響を受けており、ロックダウン中に各国政府が実施した巨額の財政・金融刺激策やサプライチェーンの混乱が、1970年代以降で最悪のインフレの波をもたらしている。物価上昇に対処するため世界的に協調した金融引き締めが進行中で、これが世界的な景気後退を招きかねない。ロシアによるウクライナ侵攻とそれに伴うエネルギー供給不足も景気後退リスクを高めている。

では、足元の状況はどのくらい続くのだろうか?中央銀行はじきに金融緩和策を再開するのだろうか?それとも、さらに積極的な引き締めにより深刻な景気悪化に向かっているのだろうか?今年の展開は、経済成長とインフレ見通し、つまりは金融政策をめぐる不確実性が依然として高いことを表している。為替市場と我々の為替戦略は、こうした不確実性に対峙しなければならない。我々は、足元のマクロ経済と地政学的動向を反映し、通常よりも大幅な予測変更を行った。

戦略:引き続きトレンドに乗るか、反転に向けたポジションを取るか?

FRBは、我々および市場全体が年初時点で予想していた以上の大幅利上げを実施した。こうした利上げ期待はまた、想定以上に大きく米ドルを押し上げた。米ドル指数は8~9月に大きく上昇した後、10月は概ね横ばいで推移している。目下の問題は、利上げによる影響が最も大きい通貨はどれか、FRBが利上げサイクルを終了すると米ドルは下落するか、という2点だ。

我々は当面、米ドル、スイス・フラン、カナダ・ドルを推奨する一方、ユーロと英ポンドを非推奨とする。これは、我々の予想、想定ボラティリティ、相関性、マクロ経済環境を勘案した今後3~6カ月間の推奨である。この推奨は、足元の潮流が継続することを示唆しており、よって米ドル反転に向けたポジションではなく、米ドルの保有継続を勧める。

米ドルから、ユーロ、英ポンドあるいはその他リスクオン(比較的リスクが高い)通貨にすでに組み替えた投資家には、今後3~6カ月はこれら通貨の下落リスクに積極的に備えることを勧める。ユーロ、英ポンド、円の下落リスクのヘッジ指向のない超長期投資家ならば、さらなる下落にも耐えられるだろう。これら通貨は今後12カ月かそれ以上の一定期間、弱含みが続くというのが我々の基本シナリオだ。


本稿は、UBS Switzerland AG、UBS AG Singapore Branch、UBS AG London Branch、UBS Financial Services Inc.、およびUBS AG Hong Kong Branchが作成した“Currency markets: Sailing in rough waters”(2022年10月20日付)の一部を翻訳・編集した日本語版として2022年10月27日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

最新CIOレポート

UBSのウェブサイトに遷移します。

(3秒後に自動で遷移します)

×

三井住友信託銀行のウェブサイトに遷移します。

(3秒後に自動で遷移します)

×