ドル円

いまだ転換点に到達せず

米国債利回りの上昇を背景にドル円が150円台を突破すると、日本の財務省が再び為替介入に踏み切ったものと思われ、ドル円は147.7円まで下落した。

  • 米国債利回りの上昇を背景にドル円が150円台を突破すると、日本の財務省が再び米ドル売り円買いの為替介入に踏み切ったと思われ、ドル円は一時147.7円まで下落した。
  • 為替介入は今後も繰り返し実施される可能性が高い。ただし、米国の債券利回りがさらに上昇し、一方で日本の金融政策が据え置かれると、その効果は持続しないだろう。
  • 我々はドル円の見通しについて、2023年3月末を155円(従前予想は145円)、2023年6月末を150円(同142円)、同年9月末を140円(同135円)のドル高方向に変更した。

ドル円は極端な動きを見せているが、当面はこの水準にとどまりそう

ドル円が151円近辺で取引されるのは1990年代初頭以来だ。当時の日本は株式市場のバブルがはじけ始め、また対米ドルでの大幅な円高がすでに10年間続いていた。だが、今日の日本の状況は当時とは明らかに異なる。日本国債の米国およびその他国債対比での利回り格差の拡大と、日本の貿易収支の急激な悪化が円に大打撃を与えているからだ。円の年初来の対米ドルパフォーマンスは各国通貨の中で最悪となっている。

日米金利差と日本の交易条件の急激な悪化といった日本円への逆風は、2023年1-3月期(第1四半期)まで続くだろう。米国2年国債利回りが5%近辺まで上昇したり、エネルギー価格が再び上昇する可能性もある。さらに、世界の経済成長は2023年上期に鈍化すると我々はみており、日本の輸出には厳しい環境になることが予想される。日本銀行が政策転換に動かない限り、財務省の為替介入は円安の進行を減速させるだけで、米ドル高円安の方向性は変わらないと我々はみている。

見通し変更の一方で、2023年の円の回復はあり得ない話ではない。通貨市場に対する現在の変動要因は、総じて円に対して悲観的に見えるが、来年になるとその勢いが多少弱まる可能性があるからだ。我々はなお、米国金利は上限に近づいており、2023年第1四半期にはそれが明確化すると考えている。そして、中国が景気回復に向かい、日本に訪日外国人観光客増加の恩恵が及べば、対外収支の安定とともに、日本のインフレ率が予想外に上昇する局面がやってくるだろう。そうなれば、ドル円もいよいよピークを迎えるだろう。

投資判断

見通し:ドル円は2023年第1四半期に155円へ到達すると予想する。政府の為替介入によってドル円が140円台半ばから前半に押し下げられた場合には、そのタイミングを利用して米ドルのポジションを増やすことが望ましい。

レンジ:為替介入はドル円の上昇ペースを抑えるだろうが、数十年ぶりの高値更新を妨げることはないと考える。

リスク要因:米国の債券利回りがさらに大幅上昇する一方で、日銀がイールドカーブ・コントロール政策を維持した場合、ドル円は我々の予想水準である155円を超えて上昇する可能性がある。反対に、日銀が利上げ方向、米連邦準備理事会(FRB)が利下げ方向へと政策を転換させた場合には、ドル円の上昇基調に終止符が打たれる可能性がある。

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本稿はUBS Switzerland AG およびUBS AG Singapore Branchが作成した“USDJPY: Not yet at a turning point”(2022年10月24日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年10月25日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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