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FRB 高官、利上げ停止検討示唆で株価上昇

21日のS&P500種株価指数は2.4%、週全体では4.7%上昇し、6月以来最も上昇した週となった。米連邦準備理事会(FRB)高官が、FRBが利上げ停止を協議し始めたと示唆したことが影響した。

21日のS&P500種株価指数は2.4%、週全体では4.7%上昇し、6月以来最も上昇した週となった。米連邦準備理事会(FRB)高官が、FRBが利上げ停止を協議し始めたと示唆したことが影響した。11月2日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で4会合連続となる75ベーシスポイント(bp)の利上げが予想されているが、FRB高官は先週、早すぎる大幅利上げが経済に過度な痛みを与える危険性を警告した。

米シカゴ地区連銀のエバンス総裁は19日 、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標が現行の3~3.25%から4.6%以上に引き上げられた場合、「経済に大きな重石になり始める」と述べた。また、米サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁は21日、 高インフレにより利上げ停止の検討が「非常に難しくなっている」ものの、「今こそ利上げペースを緩めることを計画し始めるとき」と述べた。また、FRBは経済を「自発的な景気低迷」に追い込むべきではないとも語った。

こうしたFRB高官の発言を受けて、各市場では、FF金利が2023年5月までに約4.9%程度でピークをつけると織り込み、週初に初めて5%を超えていた水準から低下した。米2年国債利回りは、21日の日中取引時間中に世界金融危機以降の最高水準に近い4.63%に上昇していたが、4.49%まで低下して引けた。米10年国債利回りもまた日中ピークからは低下して4.21%で終えたが、依然として2008年の水準に近い。年初の1.63%から比べるとかなり高い水準である。

先日から始まった7-9月期(第3四半期)企業決算はまちまちながらも、上昇し始めた相場の足かせにはいまのところなっておらず、比較的慎重な市場予想通りの結果となっている。銀行セクターに注目が集まっており、大手米銀が発表した第3四半期決算では、金利上昇が追い風となり純金利収入が増加した。

投資見解

最近の相場上昇は、投資家は引き続き大きな相場変動に備えるべきとの我々の見解を裏付ける。インフレ率や労働市場に関連する経済指標の改善、経済の底堅さを示す指標、FRBからのハト派発言は、この数日見られたような株価反発をもたらす可能性がある。

FRB高官が利上げの終焉を視野に入れ始めたことは朗報だが、こうした利上げ停止には、インフレ圧力の後退や労働市場の軟化が依然として条件となる。だが、これらはまだ経済指標に現れていない。9月のコア消費者物価指数(CPI)は前月比0.6%増で2カ月連続の上昇となり、FRBのインフレ目標を大きく上回り、投資家にとって想定外の結果となった。28日にはFRBがインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)が発表される。一方、9月の失業率は50年ぶりの低水準となる3.5%に低下した。

企業利益も足かせになるかもしれない。金融引き締め策が経済および企業利益に与える影響はまだコンセンサス予想に全面的に織り込まれたわけではなく、この先失望につながる可能性がある。需要鈍化、労働コストの上昇、前年の企業利益が高かったことによる不利なベース効果といった厳しい環境に企業は直面している。我々は、2023年の世界の1株当たり利益(EPS)は3%低下すると予想しているが、ボトムアップで集計したコンセンサス予想は5%増だ。今週は時価総額でS&P500種株価指数の2割を占める米国IT大手4社の企業発表があり、最近の上昇相場の継続が試される。

投資戦略

厳しい環境ではあるものの、反発や相場変動の可能性も鑑み、すでに長期目標水準程度の株式ポジションを保有する投資家には、相場の上昇を見逃すことなく、短期的な下方リスクをヘッジする戦略を勧める。また、過去1年でポジションを徐々にディフェンシブに傾けており、今のところこの方針を転換する十分な理由は見当たらない。

その他の推奨戦略には以下のようなものがある。

株式と債券のディフェンシブ資産に注目。株式では、元本確保戦略、バリュー株、クオリティ・インカム銘柄を推奨する。セクターでは、グローバル・ヘルスケア、生活必需品、エネルギーを推奨し、グロース株やテクノロジー、資本財セクターを非推奨とする。地域別では、米国株よりも英国株やオーストラリア株を勧める。

債券では、ディフェンシブ資産として高格付債、投資適格債を推奨し、ハイイールド債やローンを非推奨とする。また、レラティブ・バリュー戦略として、フランス10 年債(OAT)に対し米国10 年債を、世界の市場流動性縮小の恩恵を受け得る点から推奨する。

ヘッジファンドを活用した分散投資。今年はこれまで、ヘッジファンドが稀に見る素晴らしい投資先となっており、とりわけマクロ戦略が好調だ。インフレ指標と中央銀行の金融政策から、短期的に株式と債券の相関が高い状況が続くと予想される。よって、こうした資産との相関が低いヘッジファンド戦略に分散することで、不確実な市場環境を切り抜けることを勧める。

安全通貨の活用。英ポンドとユーロに対して、「安全資産」として米ドルとスイス・フランの推奨を継続する。FRBの利上げサイクルは、依然として世界の主要中央銀行の中で最も急速に進んでおり、リスクオフ環境では米ドルとスイス・フランへの資金流入が続く見込みが高い。一方、英ポンドとユーロは比較的割安ではあるが、エネルギー供給のひっ迫が続く間は下落リスクが残る。

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本稿は、UBS AGが作成した“CIO Alert: Talk of Fed pause lifts stocks”(2022年10月23日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年10月24日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧くださ
い。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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