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英減税案撤回や好決算で株価上昇

17日のS&P500種株価指数は2.65%上昇した。英国が財政拡張案のほぼすべてを撤回するとの報道や、予想を上回る企業決算を受けて市場センチメントが回復した。

17日のS&P500種株価指数は2.65%上昇した。英国が財政拡張案のほぼすべてを撤回するとの報道や、予想を上回る企業決算を受けて市場センチメントが回復した。

英国のハント財務相は450億ポンドの財源を伴わない減税案を撤回すると述べた。9月23日に前任のクワーテング元財務相が同計画を発表して以来、英国債利回りが急騰していた。ハント財務相は税制変更により年間320億ポンドの税収を確保する一方、エネルギー価格急騰に対する家計や企業への2年間の支援策を4月に終了すると述べた。英政府の大型減税策の撤回発表を受け、英ポンドは対米ドルで2%以上上昇し1.14となり、英国30年債利回りは17日始値金利4.59%から4.36%に低下した。10日には日中5.1%まで上昇していた。英国の財政持続性に対する懸念から各国市場で不安が高まっていた。一方、米銀大手が発表した7~9月期(第3四半期)決算は、純金利収入24%増と市場予想を上回る力強い伸びとなり、米連邦準備理事会(FRB)の利上げが追い風となっていることがうかがえた。17日発表のニューヨーク連銀製造業景気指数は予想を下回り、ニューヨーク地区製造業の経済活動鈍化と投入価格上昇が示されたものの、相場は反発した。

17日の動きは、相場変動が大きい時期という背景の中で捉えることが重要だ。9月も長引くインフレの高止まりを示唆する最近の経済指標を投資家はうまく消化しきれておらず、フェデラルファンド(FF)金利先物では、ピーク時金利水準が月初の4.5%から4.9%近辺に上昇している。13日の株式相場は2.6%上昇したが、翌日は2.37%下落した。米国株式相場の先週全体としては1.5%下落して終えている。

投資見解

我々は、相場の継続的な上昇条件が整っているとは考えておらす、今後3~6カ月の市場のリスクリワードは芳しくないとみている。2023年第1四半期までに主要中央銀行が利上げサイクルを終了するとは予想していない。世界経済成長は2023年初頭に向け引き続き減速し、各国中銀が金融政策の引き締めを行う中で、世界の金融市場はその影響を受けやすいだろう。

このことは、インフレ率と労働関連指標の漸次的な改善、FRBの引き締め政策緩和の示唆、経済の底堅さを示す指標、主要リスクの減少、あるいはインフレ、金利、経済成長の転換点を期待する投資家センチメントの好転、などを受けて周期的に相場が上昇する可能性を排除するものではない。

投資戦略

今後3~6カ月の見通しは厳しい。しかし、株式はそれほど割高ではなく、分散投資を実施している投資家においては、長期的な見通しはポジティブとみている。よって、上昇が見込めるポジションを保持しつつ、短期的な下方リスクの防御を組み入れる戦略を勧める。すでに長期目標水準程度の株式ポジションを保有する投資家には、相場の上昇を見逃すことなく、短期的な下方リスクをヘッジする戦略の検討を勧める。

その他の推奨戦略には以下のようなものがある。

米国株式ポジションにヘッジを追加し、ディフェンシブ・セクターに集中する。経済への短期的な逆風、S&P 500種株式の魅力に乏しいバリュエーションを受け、我々は最近米国株式を中立から非推奨に引き下げた。また、金利ボラティリテイ、景気の鈍化、米中の技術面での「デカップリング」進行に最も敏感なテクノロジー・セクターのエクスポージャーを減らしている。よって、下方プロテクションの追加を勧める。他方、減速する世界経済への連動性の少ない生活必需品やヘルスケアといったディフェンシブ・セクターを勧める。国債利回りも最近上昇していることから、魅力的なディフェンシブ資産となっている。フランス10年債(OAT)よりも米国10年債を推奨する。

ヘッジファンドを活用した分散投資。今年はこれまで、ヘッジファンドが稀に見る素晴らしい投資先となっており、とりわけマクロ戦略が好調だ。インフレ指標と中央銀行の金融政策から、短期的に株式と債券の相関が高い状況が続くと予想される。よって、こうした資産との相関が低いヘッジファンド戦略に分散することで、不確実な市場環境を切り抜けることを勧める。

安全通貨の活用。英ポンドとユーロに対して、「安全資産」として米ドルとスイス・フランの推奨を継続する。FRBの利上げサイクルは、依然として世界の主要中央銀行の中で最も急速に進んでおり、リスクオフ環境では米ドルとスイス・フランへの資金流入が続く見込みが高い。一方、英ポンドとユーロは比較的割安ではあるが、エネルギー供給のひっ迫が続く間は下落リスクが残る。


本稿は、UBS AGが作成した“CIO Alert: Stocks bounce”(2022年10月17日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年10月18日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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