ドル円

過去の為替介入の効果は?

日本銀行のハト派姿勢を受けてドル円が145円を上抜けた後、財務省は円を下支えするために1998年以来初の為替介入を行った。

  • 日本銀行のハト派姿勢を受けてドル円が145円を上抜けた後、財務省は円を下支えするために1998年以来初の為替介入を行った。
  • 過去の円買い介入では、ドル円は4.4~8.8%下落したが、その後反発し、1~2カ月後には高値を更新している。
  • 日銀がハト派姿勢を維持する限り、為替介入でドル円の上昇トレンドを止められる可能性は低い。そのため、我々はドル円の見通しについて、2022年12月を145円(従前予想:140円)、2023年3月を142円(同136円)、同6月を135円(同132円)に変更する。

1998年以来初の円買い介入を実施

22日、金融緩和政策を維持するとの日銀の決定を受けて、ドル円は当初日中の最高値の145.9円をつけた。だが、この上昇を受け財務省がドル売り円買い介入を行った結果、ドル円は日中最安値となる140.4円にまで下落した(本稿執筆時点)。

市場は介入への警戒感を怠っていた。超緩和政策をとる日銀(黒田総裁は記者会見で、向こう2~3年の金融政策のフォワードガイダンスを変更する必要はないと述べた)と、円安にかなりの懸念を示している財務省との間で、スタンスに明らかな開きがあったからだ。

この明らかな開きが、財務省による為替介入の効果に対する信頼性を損ねているように思われる。日銀が緩和政策(10年国債利回りをゼロ近辺に固定する)を維持する限り、米連邦準備理事会(FRB)がタカ派姿勢を維持し、米国の利回りが上昇するなかで、ドル円への上昇圧力は続くだろう。

円買い介入が行われるのは稀で、1997~1998年(図表1参照)以降実施されていないが、過去の例を見ると、円買い介入後のドル円の下落が持続していないことは明白で、その後1~2カ月で高値を更新している。図表2では、介入後のドル円の下落幅が4.4~8.8%であることが示されている。これを基準にして考えると、ドル円は139.5円(4.4%下落したと仮定)~133.1円(8.8%下落したと仮定)まで下落する可能性がある。これらの水準まで下落した場合、実質的に米ドル(円に対する)のポジションを追加する戦術的機会となりうる。実際に、日銀が金融政策スタンスを維持したことに加えて、FRBが今週開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)会合でタカ派寄りの姿勢を再度強調したことから、我々はドル円の見通しについて、2022年12月を145円(従前予想:140円)、2023年3月を142円(同136円)、同6月を135円(同132円)に変更する。

投資判断

見通し:過去に為替介入が行われた際の変動幅に基づけば、ドル円は133~139円の水準に下落する可能性がある。この水準は戦術的に米ドル(円に対する)のポジションを追加するのに魅力的だ。

レンジ:145円が短期的な上値になりそうだ。投機筋がこの水準を上抜けた場合に日銀が再び介入を行う可能性を引き続き警戒するためだ。

リスク要因:米国の利回りがさらに上昇すれば、財務省による為替介入の効果・持続可能性が弱まり、ドル円は145円を上抜ける可能性がある。

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本稿はUBS AG Singapore BranchおよびUBS Switzerland AGが作成した“USDJPY: How much has USDJPY fallen in past interventions?”(2022年9月22日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年9月26日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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