House View Weekly
CPI予想ほど低下せず株式市場は下落
&P500種株価指数は先週4.8%下げ、1週間としては6月以降で最大の下落となった。
2022.09.19
米CPI予想ほど低下せず、株式市場は下落
S&P500種株価指数は先週4.8%下げ、1週間としては6月以降で最大の下落となった。13日に発表された消費者物価指数(CPI)で、インフレ率の迅速な低下により米連邦準備理事会(FRB)が速やかにハト派に転換する道が開かれるとの期待が後退したためだ。8月の食品とエネルギーを除くコアCPIの前月比伸び率は、7月の0.3%から0.6%に上昇した。
これまでFRBは、タカ派姿勢を弱めるには、コアインフレ率の前月比の伸び率鈍化と労働市場の鎮静化を数カ月確認する必要があると示唆してきたが、今回のデータはFRBにとって望ましい内容ではなかった。これにより、すでに弱含んでいる小売売上高が一段と腰折れする兆候にもかかわらず、FRBは金利を速やかに引き上げ続ける以外にほとんど選択肢がなくなった。市場は現在、2023年4月までにフェデラルファンド(FF)金利が4.45%のピークをつけ、さらに2%の追加利上げが行われることを織り込んでいる。
これは投資家に2つの重要な示唆をもたらす。1つ目は、FRBのタカ派政策によりボラティリティの高い相場が継続し、株式市場全体の上値が重くなる可能性だ。こうした背景から、我々は景気減速への影響を受けにくいヘルスケアや生活必需品などのディフェンシブなセクターのエクスポージャー追加を推奨する。また、市場が不安定な時期には安全資産としてのスイス・フランも推奨する。スイス国立銀行(中央銀行)は22日の会合で再び利上げを行うことが予想される。
2つ目に、FRBは最終的にインフレ抑制に成功するだろうが、インフレ率は当面2%の目標値を上回る可能性が高い。過去を振り返ってみると、こうした時期はバリュー株がグロース株をアウトパフォームしており、よってグローバル・バリュー株、エネルギー株、英国株式を推奨する。
要点:2023年6月まで株式の上値は比較的限られるとみており、投資家には銘柄の厳選を推奨する。
原油価格の戻りは遅いが、引き続き下値は堅い
景気後退懸念を受けてブレント原油は依然として弱含んでおり、最近1月以来の安値を付けた後の戻りは緩やかだ。9月19日現在、ブレント価格は1バレル当たり91米ドル近辺で取引されており、8月後半につけた直近高値の1バレル当たり105米ドルを下回っている。
軟調な原油価格は、マクロ経済全体に対する懸念以外にも、世界最大の石油輸入国である中国でゼロコロナ政策による追加的な移動制限が行われていることによる燃料需要の減退を反映している。欧州連合(EU)もロシア産原油からの脱却に予想以上に時間がかかっている。実のところ、12月5日の原油、2023年2月5日の石油製品の全面輸入禁止を前に、欧州によるロシア産原油の輸入量は増加している。
これらの要因を勘案し、我々は年末のブレント原油価格の予想を1バレル当たり110米ドル(前回予想は125米ドル)へと、緩やかな上昇に変更した。ただし、ブレント原油は2023年3月までに1バレル当たり125米ドルをつけ、年内ほとんどの期間はその近辺で推移するとの見方を変えていない。
こうした原油相場の回復を裏付ける要因はいくつかある。1つ目は、経済協力開発機構(OECD)の戦略備蓄の放出終了により、11月以降は供給が日量100万バレル以上減少する。2つ目に、ガスと石炭価格の上昇および供給量の減少を反映し、発電利用の増加により世界的に原油需要が大きく伸びると予想される。3つ目に、EUは依然として日量300万バレル近くのロシア産原油の輸入を停止する意向である。このすべてをEU以外の地域で売却できる見込みはなく、ロシア産原油の生産量は著しく減少するだろう。
要点:原油価格の回復は我々のエネルギー株の推奨を裏付ける。
化石燃料投資は拡大しつつ、グリーン・エネルギーの普及も進む
ウクライナ戦争によりエネルギー安全保障への懸念が引き続き高まっている。ここ数週間でウクライナが失地奪還したことは短期的に市場から好感されたが、一方でロシアによる攻撃激化または欧州へのガス供給のさらなる縮小に対する懸念も高まった。主要ガスパイプライン「ノルドストリーム1」の輸送停止により、ロシア産天然ガスの欧州への輸出は、すでに過去数年の水準の20%を下回っている。
その結果、代替化石燃料への投資に拍車がかかっている。例えば、ドイツは世界各国からの液化天然ガス(LNG)の輸入拡大を可能にする5隻目のLNG再ガス化設備の計画を直近発表した。同国では、今年前半の石炭火力発電が前年同期比で17%拡大した。
こうしたトレンドは世界的にみられ、国際エネルギー機関(IEA)は、石炭、石油、天然ガスの生産と消費への政府支援の急拡大を警告している。政府支援は2021年には前年から倍増の6,970億米ドルに達したが、2022年はさらに拡大するとIEAは予想している。
しかし、こうしたトレンドの一方で、同時に持続可能エネルギー源への投資の段階的拡大もみられる。EUでは、今夏の太陽光発電量が過去最高を記録し、前年から28%拡大した。世界第2位の太陽光パネルメーカーのデータによると、世界の太陽光発電設備の導入はおよそ10年間で最も速いペースで拡大し、今年は250ギガワットに達し、来年には前年比30%程度まで増加率が跳ね上がると予想されている。
要点: エネルギー安全保障の推進のため、化石燃料とともに再生可能エネルギーおよび省エネへの投資が拡大している。クリーンエネルギー、省エネ、炭素削減、グリーンテックなどの領域における魅力度が非常に高い中短期の投資機会に着目している。