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インフレ高進で株・債券同時安

8月の米消費者物価指数が予想外に上振れしたことを受けて、13日のS&P500種株価指数は4.3%下落、米国債利回りは急騰(価格は下落)し、米ドルは上昇した。

何が起きたか?

8月の米消費者物価指数(CPI)が予想外に上振れしたことを受けて、13日のS&P500種株価指数は4.3%下落、米国債利回りは急騰(価格は下落)し、米ドルは上昇した。

8月の総合CPIは前年同月比で8.3%上昇し、7月の8.5%を下回ったものの、市場予想の8.1%を上回った。食品とエネルギーを除くコアCPIは、7月の前年同月比5.9%から6.3%に上昇した。前月比では7月の0.3%から0.6%に上昇した。

米連邦準備理事会FRB)の追加利上げ観測から、米2年国債利回りが17ベーシスポイント(bp)上昇して3.74%に急騰する一方、10年国債利回りは5bp上昇して3.41%となった。米ドル指数(DXY指数)は1.4%上昇し、ブレント原油は0.7%下落して1バレル当たり93.40米ドルとなった。

セクター別では、13日はS&P500種株価指数の全セクターが下落したが、金利上昇が特にグロース株の重石となり、通信サービス、情報技術、一般消費財が下げを主導した。米国株価指数はグロース株の比率が高いため、各国市場をアンダーパフォームした。欧州ではユーロ・ストックス50指数が1.65%下落した。

今後の展開

13日の下げにより、S&P500種株価指数の4日続いた上昇(5%)は途切れた。12日までの上昇の一因は、投資家が8月のCPIでインフレ圧力の後退を再確認できると楽観視していたことによる。

前年同月比で見れば総合インフレ指標のピークは過ぎた可能性があるが、13日に発表されたデータは、物価上昇が依然として広範囲にわたることを示した。帰属家賃が予想外に上昇したほか、一部の商品やサービス価格は想定ほど下落しなかった。例えば、中古車価格は前月から0.1%の下落にとどまり、航空運賃(-4.6%)も予想ほどには下落しなかった。労働市場のひっ迫も続いており、13日に全米独立企業連盟(NFIB)が発表した中小企業楽観指数では、中小企業が依然として労働力不足に悩んでいる状況が浮き彫りになった。

これらすべてを踏まえると、たとえ経済成長を犠牲にしても、利上げを継続する以外FRBに選択肢はほとんどない。市場は来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75%の利上げを完全に織り込んでいる。また、フェデラルファンド(FF)金利先物市場では、来年3月のピーク時のFF金利が前日の4%から4.3%に上昇した。

FRBは最終的に、利上げの断行とそれに伴う経済的な痛みを許容することで、物価上昇を抑え、労働市場を鎮静化できると我々は考える。テレビとスマートフォンの価格は前年から2割下落しており、今後数カ月のうちに中古車価格も同様に低下すると予想している。

FRBがタカ派姿勢を弱めるには、前月比コアインフレ率の数カ月に亘る低下と、労働市場鎮静化の追加的証拠を確認する必要があろう。今日時点でこれら要件はまだ充たされていない。

投資見解

ここ1週間の株価上昇は、実経済の大幅改善というよりは、市場センチメントにけん引されたものと考える。13日の株価下落は、株価の継続的な上昇にはインフレ低下傾向の明確な証左が必要であることを改めて示している。経済及び政策面での不透明感が高まる中、市場は今後数カ月にわたり変動の大きな展開が続くと予想する。そうした中で、我々はバリュー、ディフェンシブ、高クオリティに着目して投資することを勧める。

バリュー株式への投資。MSCIオールカントリー・ワールド指数によると、グローバル・バリュー株はグローバル・グロース株を年初来で12%アウトパフォームしている。インフレ率は当面中央銀行の目標を上回る水準で推移するとみられることから、バリュー株のアウトパフォームは今後も続くだろう。供給ひっ迫っが依然として続いていることから、再び上昇する原油価格による下支えが期待されるグローバル・エネルギー株を推奨する(ブレント原油価格の年末予想は1バレル当たり110米ドル)。また、英国株式市場はバリュー・セクターの比率が高いことから、英国市場も推奨する。

ディフェンシブ銘柄とクオリティ銘柄の追加。米国経済が潜在成長率を下回る可能性があり、ユーロ圏と英国が今後数四半期で景気後退入りしそうな状況下、投資家はディフェンシブ株式の追加を検討すると良いだろう。ディフェンシブ株式は景気の減速や一時的な失速局面で比較的高い耐性を示すことが多い。ディフェンシブなセクターであるグローバル・ヘルスケアおよび生活必需品セクターを推奨する。両セクターは今年に入ってグローバル株式を6%と7%、それぞれアウトパフォームしている。債券では、高格付債と高クオリティ銘柄を推奨する。通貨では、安全通貨とされるスイス・フランを推奨するほか、米ドルもユーロや人民元などの比較的景気に敏感な通貨に対して当面更なる上昇の余地があるとみる。我々はユーロ/米ドルの年末予想を0.96、米ドル/人民元を7.0ないしそれ以上とする。

ボラティリティの利用。米国インフレ率の上振れ、インフレ抑制に経済的犠牲を厭わないFRBの姿勢を受け、市場のボラティリティ(変動幅)は今後さらに高まる可能性がある。元本確保と機動的な資産配分は、よりディフェンシブなポジションを構築する効果的な手法だとみている。また、通貨、コモディティ、株式市場のボラティリティが上昇する中で、リターンを生み出す好機と捉える。

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本稿は、UBS AGが作成した“CIO Alert: Stocks and bonds fall as US core inflation rises”(2022年9月13日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年9月14日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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