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ドル円は1998年の高値に迫る

日米間の金融政策の乖離拡大により米ドルに対する上昇圧力が再び高まり、ドル円は数十年ぶりの高値にある。

  • 日米間の金融政策の乖離拡大により米ドルに対する上昇圧力が再び高まり、ドル円は数十年ぶりの高値にある。
  • ドル円は、短期的には価格上昇の勢いに乗り1998年の高値に達する可能性があるが、2023年にはピークをつけ、下落に転じると我々はみている。

1998年の高値に迫る

今年は、日銀と米連邦準備理事会(FRB)の間の金融政策乖離と貿易収支の動向がドル円上昇の重要な要因となっている。足元FRBは利上げ路線を維持すると見込まれる一方で、日銀は2023年を通してハト派姿勢を維持すると予想される。こうした金融政策の乖離を背景に、ドル円は1米ドル=140円の水準を突破した。天然ガスや石炭など資源価格の高騰や、中国経済の鈍化懸念などが日本の国際収支の悪化要因となった。輸出増加もエネルギー輸入額上昇の影響を相殺することはできず、貿易赤字がさらに拡大した。

これらは米ドルにとってはプラス材料であり、円にとってはマイナス材料であることから、ドル円は年末に向けて1998年以来の高値147.60円を試す可能性がある。日銀が近い将来に金融政策を転換する可能性は低そうだ。日銀が金融政策を変更するまで、または財務省が為替介入を行うまで、円安はさらに続くとみている。日本のインフレ率が1桁中盤から後半の水準まで上昇した場合は、為替介入への明確なシグナルとみており、ドル円の短期の上昇リスクは高まっていると考える。また、足元のドル円の上昇の勢いは投資家が主導しており、先物市場の投機筋による円のショート(売り持ち)ポジションは過度に積みあがった状態ではないとみている。よって、円のショートポジションはさらに拡大する可能性がある。

全ての要因が140円超えを正当化するものではない

しかし、最近のドル円の上昇は日米金利差だけで説明がつくものではない。ドル円の金利変動に対する感応度が大きく上昇でもしない限り(その可能性は低いと考えるが)、直近の上昇は金利差の観点からすると行き過ぎといえる。また、実質金利ベースでみると日本の利回りは米国の利回りよりも魅力度が依然高いが、足元の市場はそれを見過ごしているようだ。さらに、円が極めて割安な水準にあることも見過ごされている。これらの要因は2023年になると影響力が高まると考える。2023年はFRBの利上げサイクルが終わりを迎え、一方で中国の経済活動の活発化と共に、日本の経済再開が進むとみているからだ。そうした環境下では、ドル円は数十年ぶりの高値から反落するとみている。

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本稿はUBS AG Singapore BranchおよびUBS Switzerland AGが作成した“Forex and Commodities: USDJPY targeting 1998 highs”(2022年9月8日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年9月9日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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