マンスリーレター9月号

スーパーマン 対 ビザロ

DCコミックス『スーパーマン』の中に、「ビザロ」という超悪党がいる。ビザロはスーパーマンの不完全なクローンとして登場し、やることなすこと全てがスーパーマンとは正反対のキャラクターだ。

DCコミックス『スーパーマン』の中に、「ビザロ」という超悪党がいる。ビザロはスーパーマンの不完全なクローンとして登場し、やることなすこと全てがスーパーマンとは正反対のキャラクターだ。架空の惑星「ビザロ・ワールド」に住んでおり、そこではあらゆることが通常とは真逆になっている。「上」が「下」で、「速い」ものは「遅く」、「良い判断」は「悪い判断」になる。あるエピソードでは、トレーダーが「ビザロ・ボンド」を販売する。これは「損することを保証する」債券で、買い手は先を争ってそれを購入する。

今日の金融市場は「正常な世界」なのか、それとも「異常な世界(ビザロ・ワールド)」なのか。米国債利回りは逆イールドになっているにもかかわらず、米国では先月、50万人以上の雇用が生み出された。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、40年ぶりの高水準近辺にあるインフレ率の抑制への強い姿勢を打ち出しているのに、市場は来年初めの利上げ終了を織り込んでいる。

私が話す多くの投資家たちは混乱しており、昨年に引き続き、今年もポートフォリオ構築で失敗したくないと考えている。新型コロナ禍の相場急落で、あまりにも多くの投資家が手持ちのポジションを売却し、買い戻せなかったのは市場の回復が早すぎたためだ。そしてウクライナ危機が起きて売った際も、相場の戻りについていけなかった。今や市場が最近の底値から脱したところで、ナスダック市場に再び戻るべきか尋ねてくる投資家もいる。

来年の今頃には、FRBの歴史書の中で、パウエル議長がスーパーマンとして描かれるか、ビザロとして描かれるのかが明らかになっているかもしれない。FRBによる段階的な利上げが、今日の激しいインフレを冷やす効果を発揮すれば、パウエル議長はスーパーマンとして来年にかけての相場上昇に寄与する可能性がある。だが、FRBあるいは市場がインフレの方向性と変動要因を見誤ると、悲観的な結果になることを投資家は覚悟した方がよいかもしれない。

FRBは、ソフトランディング(経済の軟着陸)の達成は「非常に難しい」と警告している。つまり、段階的な利上げではインフレ率を9%前後から2%まで引き下げられないかもしれないことを認めている。ところが市場を見ると、投資家はFRBよりもはるかに自信を持っているかのようだ。

市場タイミングを見計らっているうちにポートフォリオに損失が発生してしまった投資家は多い。こうした投資家にとっての最悪の「ビザロ」シナリオでは、コモディティ価格の下落や供給問題の緩和といった一時的要因で足元インフレ率が低下するものの、その後に、市場タイミングに固執してきた投資家がソフトランディングを確信して市場に戻るときには、賃金や住居費といった頑固なインフレ要因、あるいはコモディティ価格の再騰が問題になり始める。

FRBがあらかじめ警告したことだけを忠実に実行し、景気抑制的な領域まで利上げを進めると、来年には景気減速に拍車がかかると思われる。すると資産価格は下落し、多くの市場タイミング派が「取り残される不安(FOMO)」による行動に走り、大規模なレバレッジ解消が起きて本格的な景気後退に陥ってしまう。このシナリオでは、パウエル議長はビザロになる。なぜなら、段階的にインフレ率を抑制しようという一見正しい判断が、結局は経済と多くの投資家にとって悪い結果をもたらしたことになるからだ。

このシナリオにおける朗報は、複数の結果を考慮して対策を講じていれば、投資家が市場タイミングを見誤り、パフォーマンスが大幅に悪化するのを防ぐことも可能ということだ。ただし、投資家が慎重さを失わず、選別的な銘柄選択を行い、分散投資を実行していても、常に短期的なアンダーパフォーマンスのリスクに晒される。

本レターでは、今後1年間の相場がどのような経路をたどるのか、投資家はそれをどのように乗り越えて行けのるかについて、シナリオを検討する。

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本稿はUBS AGが作成した“Monthly Letter: Superman vs. Bizarro”(2022年8月25日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年9月1日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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