House View Weekly

タカ派姿勢ピークアウトの見方が後退

米インフレ率はピークを過ぎ、FRBのタカ派姿勢は近く終わるとの楽観的な見方がこれまで相場上昇を後押ししてきたが、その見方は弱まりつつある。

今週の要点

FRBのタカ派姿勢がピークを過ぎたという楽観的な見方が後退

米インフレ率はピークを過ぎ、連邦準備理事会(FRB)のタカ派姿勢が近く終わることを示唆しているという見方が、これまで相場上昇を後押ししてきた。足元そうした楽観的な見方は弱まりつつある。

7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨によると、FRB高官はインフレ沈静化のため「しばらく」は金融引き締め政策の維持が必要と予想している。

同議事要旨では、利上げサイクルの停止が近いことを示す兆候はみられなかったと我々は考える。FRB高官は、「インフレ率がFOMCの目標を大きく上回って推移していることから、参加者は引き締め的な姿勢への移行が必要と判断した」と主張した。

また、FRBの政策担当者は、最近のコモディティ価格の下落を「持続的なインフレ率の低下の根拠として信頼することはできない」として重視しない意向を示した。これにより、FRBが利上げサイクルを終わらせるためには、ガソリン価格の急落が大きな影響を及ぼした7月の市場予想を下回るインフレ・データだけでは足りないことが示された。

最後に、労働市場が落ち着きを取り戻していると確信するためには、7月は低下した失業率が緩やかに上昇する必要があるとFRBは述べた。利上げ停止が正当化されるためには、3カ月連続で物価上昇率が減速すること(コアPCE物価指数の前月比上昇率が+0.2%以下)が最低要件となると考える。

要点:こうした依然不透明な環境の下では、ディフェンシブ資産や、歴史的に高インフレの局面でアウトパフォームしてきたバリュー株を推奨する。

原油価格は最近急落しているが、再び値を戻すだろう

原油価格は、6月につけた高値を23%下回っており、ロシアによるウクライナ侵攻前の水準にまで下落するなど上値が重い展開が続いている。こうした原油価格の急落は、景気後退懸念に加えて、核合意の再建によりイラン産原油禁輸解除の可能性が高まっていることが原因だ。

だが、原油価格の下落は世界的な供給制約という現状とは相いれない。石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」の加盟国は生産余力に乏しく、既存の協調生産の割当量の達成すらままならない国もある。OPECプラスによる9月の実際の増産量は、合意の3分の1ほどの量にとどまる可能性があるとみる。OPECプラスはまた、投資不足が「2023年以降の需要拡大に応じるために必要な供給能力に悪影響を及ぼすだろう」と指摘 している。

一方で、欧州諸国が年末までにロシア産原油と石油製品の輸入を1日当たり300万バレル程度削減する計画を推し進めているため、ロシアの供給に悪影響が及びそうだ。また中国が追加経済刺激策を講じることを踏まえると、いまの中国の需要低迷が長引くことはないだろう。

要点:原油市場のひっ迫は続くとみており、原油価格については前向きな見通しを維持する。我々は2023年半ばのブレント原油価格の見通しを1バレル当たり125米ドルとしており、これもまた我々のエネルギー株の推奨を裏付ける。

経済見通しは不安定だが、英国株は引き続き魅力的

英国では7月のインフレ率が1982年2月以来の2桁の伸びとなった。インフレ率の上昇が消費を圧迫しており 、4–6月期(第2四半期)の実質賃金はすでに3%下落している。こうした厳しい英国経済の見通しにもかかわらず、我々は引き続き英国株を推奨する。

FTSE100構成企業の売上高のうち、約75%は英国以外の地域で発生している。つまり、英国企業は国内景気懸念の影響を受けにくい。グローバル経済成長に対するリスクも高まっているが、力強い米国雇用の伸び、改善を示した全米供給管理協会(ISM)非製造業景気指数、底堅い中国の輸出成長といった最近の経済指標は、世界の経済活動は減速してはいるものの、依然として持ちこたえていることを示している。

また英国の株式市場は、バリュー株、資源関連株、ディフェンシブ株といった今年アウトパフォームしているセクターのウェイトが高い。エネルギー、資源、金融などのバリュー株セクターが、FTSE100種総合株価指数の約4割を占める。

我々は、英国企業の今年の利益成長率を12%と予想している。また、バリュエーションの観点からも魅力的で、FTSE100企業の12カ月先予想株価収益率(PER)は10.2倍と、MSCIオールカントリー・ワールド指数を34%下回っている。さらに、海外からの売り上げの4分の3を占め、米ドル建ての割合が高いため、予想される英ポンド安も企業利益をさらに押し上げるだろう。

要点:英国株式の推奨を継続しており、FTSE100種総合株価指数は年末までに3%ほどの緩やかな上値余地があるとみる。だが、今後数カ月はセクターの主要銘柄のパフォーマンスは強弱まちまちになるとみられるため、英国株式市場に対しては幅広く分散投資することを勧める。


本稿は、UBS AGが作成したUBS House View-Weekly Global (2022年8月22日付)を一部翻訳・編集した日本語版として2022年8月24日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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