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FRB、緩和期待を退ける

7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合を受けて、市場は今後の利上げ幅が縮小し、利上げの終了が早まるとの予想に動いた。

今週の要点

FRB、緩和期待を退ける

7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合を受けて、市場は今後の利上げ幅が縮小し、利上げの終了が早まるとの予想に動いた。FRBのパウエル議長が、9月に「異例の大幅」利上げを行う余地を残しつつも、今後の経済指標次第との考えを強調し、また利上げの「ペースを緩めることが適切になる可能性が高い」と付け加えたためだ。米国10年国債利回りは、4カ月ぶりの低水準である2.55%近辺まで下落した。

しかし、FRB高官はこうした利下げ転換への市場の期待を退けた。サンフランシスコ連銀のデイリー総裁は、FRBのインフレ鎮圧への取り組みは「終了にはほど遠い」と述べ、またクリーブランド連銀のメスター総裁は、物価の前月比上昇率が減速していることを示す「かなり説得力のある証拠」を確認したいと述べた。

さらに、米労働市場は引き続き逼迫しており、FRBが積極的な利上げ姿勢を維持する必要があるかもしれないことが示唆された。7月の非農業部門雇用者数は前月比52.8万人増とコンセンサス予想の2倍超に達し、また失業率は3.5%とコロナ禍前の最低水準まで低下した。

先週は、米国の2年国債利回りと10年国債利回りがそれぞれ35ベーシスポイント、20ベーシスポイント上昇した。

長期のインフレ期待は鈍化したが、6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比上昇率が9.1%まで加速した。FRBは物価の安定回復に注力することを強調し続けると我々はみる。

要点:我々はFRBがインフレ鎮圧に注力する姿勢を維持するとみており、景気後退局面で耐性を示すことが期待されるヘルスケア株や高クオリティの高配当株など、ディフェンシブ銘柄に重点を置くことを勧める。歴史的に高インフレの局面でアウトパフォームしてきたバリュー株も推奨する。

原油価格の下落は続かない見通し

ブレント原油価格は先週、約6カ月ぶりの安値である1バレル94.9米ドルまで下落した。中国とユーロ圏で弱い購買担当者景気指数(PMI)が発表され、世界の原油需要に対する見通しに懸念が高まった。米国では予想外に原油在庫が上昇した。石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」は、9月の産油量を小幅に増産し、1日当たり10万バレル増とすることで合意した。

だが、原油価格の下落は反転する可能性が高いとみている。中国、インド、メキシコといったOPEC非加盟国からの旺盛な需要が、欧米の冴えない需要を相殺するのに一役買っているからだ。

供給も依然としてひっ迫しており、8月の供給余力は日量約200万バレルにとどまる。サウジアラビアとアラブ首長国連邦を除き、大半のOPECプラス加盟国にはすでに増産余地はないことから、9月の実際の増産量は合意した3分の1程度にとどまる可能性がある。加えて、欧州では年末までにロシアからの原油と石油製品の輸入量を日量約300万バレル削減する計画であり、これがロシア産原油の生産量を引き下げるきっかけになれば、OPECプラスの産油量は減少する可能性がある。

OPECプラスの加盟国によると、長期的に見て、石油部門に対する投資不足が「2023年以降の需要拡大にタイムリーに応じるに足る供給量に影響するだろう。」

要点:原油市場では需給のひっ迫が続いており、我々は原油価格の上昇を引き続き見込む。リスク許容度の高い投資家は、ブレント原油の期先物の買い持ちを積み増すことなどが可能だ。我々は2023年半ばのブレント原油価格を1バレル当たり125米ドルと予想しており、これもまたエネルギー価格に対する推奨を裏付ける。

今後のボラティリティ上昇に備える

ここ数カ月荒れた相場が続いていたが、市場のボラティリティ(変動率)は6月中旬以降、低下傾向にある。米国株式の予想ボラティリティを元に算出されるVIX指数は、依然として過去の平均を上回っているものの、6月半ばの34から直近で21に低下した。債券市場のボラティリティを表すMOVE指数は、7月の156から先週は123近辺に低下した。

ボラティリティは直近の高水準からは低下しているかもしれないが、年末まで高ボラティリティ環境が続くと考える。

景気とインフレ見通しに対する投資家の評価が相場を左右する展開が続くとみられるが、こうした投資家の認識は変わりやすい。景気後退のリスクが高まっており、欧州における冬場のエネルギー供給の確保などの課題はまだ解決していない。中国では、経済は年後半には持ち直すと予想するも、ゼロコロナ政策を講じており、経済がさらに減速すればボラティリティが一段と高まる可能性がある。世界的に地政学的緊張も高まっている。

以上のように、複数の分野で不確実性が高まっていることから、投資家にはさらなるボラティリティ上昇に備えることを勧める。

要点:投資家には流動性戦略を講じ、オルタナティブ資産で分散を図り、元本確保戦略とダイナミック・アセット・アロケーションでボラティリティを抑えることを勧める。ボラティリティが高い時期は、利回り獲得の機会でもある。

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本稿は、UBS AGが作成したUBS House View-Weekly Global (2022年8月8日付)を一部翻訳・編集した日本語版として2022年8月9日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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