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FRB 0.75%金利引き上げで株価上昇

27日のS&P500種株価指数は、米連邦準備理事会(FRB)が2会合連続で0.75%の利上げを決定したにもかかわらず、2.62%上昇して引けた。

何が起きたか?

27日のS&P500種株価指数は、米連邦準備理事会(FRB)が2会合連続で0.75%の利上げを決定したにもかかわらず、2.62%上昇して引けた。これほど早いペースでの利上げは1990年代以来だ。ただし、6月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比9.1%増となったことで視野に入っていた1%の利上げは見送られた。

パウエルFRB議長は、次回9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも「異例の大幅な」利上げがあり得るものの、経済データ次第になるだろうと述べた。また、経済はすでに減速し始めており、「支出および生産に関する最近の経済指標は軟化している」と指摘した。だが同時に、力強い労働市場を踏まえ、景気後退には陥っていないとの見方を示した。

パウエル議長の発言を受けて、FRBが将来の利上げ幅を近々縮小するのではとの期待感が高まった。フェデラルファンド(FF)金利先物市場では、2022年の利上げ見通しが約0.1%低下し、現在の年末水準は約3.25%となっている。米10年国債利回りは横ばいで引け、2年国債利回りは0.06%低下し、逆イールド(長短金利の逆転)の金利差は縮小している。

パウエル議長の発言により、市場で既にみられていた株価反発の勢いが加速した。ハイテク大手の決算が恐れていたほど悪くなかったことから、S&P500種株価指数はFOMCの発表前にもすでに約1.4%上昇していた。米ハイテク製品大手は2023年度(22年7月–23年6月)の売上高が、企業の旺盛なIT投資需要が続いていることから2桁伸びるとの見通しを示した。米インターネット関連サービス大手の持ち株会社の決算も予想ほど悪くなかったが、マクロ経済環境がより「不透明」であることが強調された。こうした決算を受けて、情報技術セクターは3.3%上昇した。ほかにも米ハイテク大手2社が28日に決算を発表する。

今週初めに米小売り大手が通期業績見通しを下方修正した後だけに、こうした米国大手ハイテク企業の決算は投資家を安心させる一助となった。米小売り大手は物価上昇が消費支出の重石となっていると警告し、米国経済の見通しに対する懸念を表明した。だが、こうした事象は低所得者層に集中しており、消費支出品目内でのシフトにとどまっているとみられる。消費者の健全性を幅広く示す米クレジットカード大手の決算は、引き続き消費が底堅いことを示唆する内容だ。

27日に発表された経済指標も、経済に対する先行き不安を和らげる内容だった。6月の米国貿易収支は赤字幅が前月比5.6%縮小して982億米ドルとなり、4-6月期(第2四半期)の米国経済がマイナス成長となった可能性は低下した。貿易収支は7四半期連続でGDPを押し下げている。原油及び石油製品の輸出は先週、日量1,100万バレルと記録的な水準に上るなど増加しており、貿易収支にプラスに寄与した。こうしたデータから、米国はウクライナ紛争がエネルギー価格やエネルギー供給に及ぼしている影響を欧州ほどには受けにくいことが裏付けられる。ロシアは今週25日、天然ガスの欧州への供給をさらに削減することを発表している。

6月の企業の設備投資が増加したことも、米国経済のセンチメントにプラスに寄与した。設備投資の先行指標となる、航空機を除く非国防資本財の受注は、6月は前月比0.5%、前年同月比では10.1%増加した。

今後の展開

FOMCで27日に決定された0.75%という利上げ幅よりも、インフレが管理下にあるとFRBが市場を説得できるかどうかのほうが重要だと我々は考える。利上げの発表後、利上げ局面の終わりが見え始めたと市場が判断したことで、市場の期待インフレ率(米国10年物ブレイクイーブン・インフレ率)は0.08ポイント上昇して2.44%となった。上昇はしたが、4月につけたピークの3.1%より低い水準だ。

フェデラルファンド(FF)金利先物市場は年内に1%の追加利上げが実施されることを織り込んでおり、年末時点の金利水準を約3.25%としている。今後も利上げのペースはインフレ率の鈍化ペース次第だが、最近の経済指標が軟化を示していることを勘案すると、FRBが利下げに転じる時期はこれまでよりも近くなっているかもしれない。よって、米国株式市場は27日は上昇したが、インフレ率が減速してきたとFRBが判断し、利上げの一巡が視野に入ってきたことを示唆するまでは、市場のセンチメントが持続的に改善することは難しいだろう。

また、債券利回りがピークアウトしたことで、株式市場では最近はグロース・セクターが市場をけん引している。MSCIワールド・グロース指数は7月月初来で4.8%上昇しており、同バリュー指数の1.6%をアウトパフォームしている。ただし、この傾向が今後も続くとは我々は考えていない。インフレ率は今後数カ月で減速に向かうとみているが、FRBのインフレ目標を上回る水準にとどまる可能性が高い。1975年までさかのぼって見ると、インフレ率が3%を上回っている局面ではバリュー・セクターがアウトパフォームする傾向がある。我々は、当面その傾向が続くと予想する。さらに、グロース株はいまだバリュー株より割高である。ラッセル1000グロース指数の株価収益率(PER)は同バリュー指数より70%高い。このバリュエーション(株価評価)の格差は長期平均である35%の倍の水準だ。

これまでのところ、米国企業の第2四半期決算は、増益率は低下したが、マイナスには落ち込んでいない。時価総額ベースで半分程度の企業が決算発表を終えており、その内75%が業績予想を上回る増益率となった。業績ガイダンスでは、第3四半期の企業の1株当たり利益(EPS)予想は1%程度低く、若干の増益率低下を見込んでいるが、過去のパターンと一致している。

投資見解

投資家は引き続き、市場センチメントの改善を慎重に見極めることが重要だ。より持続的な回復に確信が持てるようになるには、インフレ率の低下を裏付ける説得力のある証拠、各国中央銀行によるタカ派姿勢の軟化、持続的な経済成長を裏付けるより多くのデータを確認するまで待つ必要があるだろう。最近のロシアによる欧州への天然ガス供給量の削減は欧州経済成長の重石となり、一方米国では、決算シーズンを迎え市場のボラティリティ(変動率)がさらに高まる可能性がある。時価総額ベースで50%程度の企業が今週決算発表の予定だ。

経済・政治面の不透明感が強い中、様々なシナリオ下でも耐性(レジリエンス)を発揮するポートフォリオを構築することを勧める。

ディフェンシブとクオリティ銘柄を組み入れ、バリュー株を選好し、さらにボラティリティを利用する。

経済指標の軟化が企業業績見通しを圧迫し、さらなる株価の下落を招く「スランプ」(景気低迷)シナリオに陥る可能性に備えてディフェンスを強化するため、クオリティの高い高配当銘柄、ヘルスケア・セクター、耐性の高い社債、スイス・フランを組み入れることを勧める。インフレ率が高止まりしていることから、エネルギー株や英国市場といったバリュー株も推奨する。また、元本確保戦略を利用することで、ボラティリティを利用した利益獲得と同時に、株価下落局面では想定されるリスクの軽減が期待できる。

Liquidity(流動性)戦略*を活用し、ヘッジファンドで分散投資を図る。

強固なポートフォリオを築くための基盤として、強制売りのリスクを低減し、利回りを獲得し、将来的な投資機会に備えるために、今後3~5年で必要となる支出ニーズを賄う資金を確保するLiquidity(流動性)戦略ポートフォリオ*を構築することを勧める。現金・現金等価物、短期債などがこの戦略の投資対象となる。また、債券・株式ともに下落した場合でも良好なパフォーマンスが期待できるヘッジファンドを一部組み入れることも勧める。

セキュリティの時代に備えたポジションを構築する。

ロシアが今週、欧州への天然ガス供給をさらに削減すると発表し、欧州だけでなくその他の地域においても、エネルギーの安全保障問題がさらに重視されることになるだろう。政府や企業の間では効率性や価格より安全性や確実性を重視する動きが強まっており、エネルギー、食料、サイバーセキュリティなど幅広い分野にその影響は及ぶと考える。

*時間軸は様々です。戦略はお客様の目標・目的と適合性によって変わります。このアプローチは、資産構築あるいは何らかの投資利益の達成を約束または保証するものではありません。

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本稿は、UBS AGが作成した“CIO Alert: Markets rally as Fed refrains from hawkish surprise”(2022年7月27日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年7月28日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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