House View Weekly

ECB、予想を上回る利上げを実施

欧州中央銀行(ECB)は予想を上回る0.5%の利上げに踏み切った。また、新たな伝達保護措置(TPI)の導入を発表した。

今週の要点

ECBが予想を上回る利上げを実施

欧州中央銀行(ECB)は予想を上回る0.5%の利上げに踏み切った。これにより、政策金利の1つである預金ファシリティ金利を0%に戻し、マイナス金利から脱却し、利上げに関するフォワードガイダンスを削除した。また同時に、金利上昇によるユーロ圏内の債券利回り格差の抑制を目的とした新たな伝達保護措置(TPI)の導入を発表した。物価が急激に上昇していることから、我々は9月に0.5%、10月と12月に0.25%の追加利上げを予想する。ユーロ圏が冬に景気後退を回避できる場合には、2023年にもさらなる利上げを見込む。だが、景気後退リスクが顕在化する場合には、12月は利上げをいったん中断するだろう。フォワードガイダンスを削除したことで資産価格のボラティリティ(変動率)が上昇する可能性がある。TPIの創設はユーロ圏内の債券スプレッド格差の拡大を抑制するとみられるが、発動条件はECBに委ねられており、依然として欧州周縁国の債券については大幅な評価損失が発生しかねない状況だ。

要点:ECBはインフレとの戦いと景気後退の回避との間のぎりぎりの線を歩んでおり、我々はユーロ圏の株式と欧州周縁国の債券については慎重な見方を継続する。ユーロ圏内では、金利上昇と景気後退に耐えうる高クオリティのバリュー株式を推奨する。ボラティリティの緩和には元本保全戦略やダイナミック・アセット・アロケーション戦略が有効だろう。

市場は反発したが、エネルギー不足は依然不安要因

運用を停止していたロシアの天然ガスパイプライン「ノルドストリーム1」が、先週、欧州向けロシア産ガスの供給を再開した。これを受け欧州経済の低迷への懸念が和らいだことから、世界株式市場(MSCIオール・カントリー・ワールド指数)および欧州株式市場(ユーロ・ストックス600指数)はそれぞれ3.2%、2.9%上昇した。同パイプラインの供給再開は明るいニュースではあるが、エネルギー供給が欧州経済にとって大きな懸念材料であることに変わりはない。ロシアは6月に同パイプラインによるガス供給を約60%削減しており、今回の供給再開も60%のままだ。この水準では、ドイツをはじめ欧州各国が冬に向けて十分なガスを備蓄するには足りず、欧州経済にとって大きな逆風になると考える。もっとも、欧州のガス不足は市場にとって1つのリスク要因にすぎない。経済、金融政策、政治リスクの見通しが立つまでは、市場センチメントの改善は長くは続かないとみている。

要点:経済的、政治的不透明感が極めて高いことから、さまざまなシナリオの下で高い耐性を示すようなポートフォリオを構築することを勧める。特に、株式ではディフェンシブ銘柄および高クオリティ銘柄を組み入れ、またLiquidity(流動性)戦略を適切に確保することを勧める。

ウクライナ産穀物の輸出合意には至ったが、食糧危機は終わらない

ロシアは先週、黒海を通じたウクライナ産穀物の安全な輸送を保証することでウクライナと合意した。だが、その週末にはロシア軍がウクライナの輸出拠点となるオデーサ港をミサイル攻撃しており、食料安全が引き続き懸念材料であることが浮き彫りとなった。黒海封鎖が解除されたとしても、ロシアによるウクライナ侵攻が穀物の生産や輸送を妨げていることに変わりはない。また世界的なエネルギー価格上昇と労働力不足が供給を制約する一方、異常気象も農業従事者を悩ませている。我々は、今年から来年にかけて供給の混乱が市場にさらに打撃を与えるとみている。将来的な供給の混乱に対する不安は、農業生産量の最大化と投入コストの低減に向けたソリューションへの投資をさらに促進する可能性がある。また、食料廃棄の削減や冷蔵、サプライチェーンの効率化を含む現地生産の拡大に機会があるとみている。

要点:投資家には、政府と企業が供給の安全性と信頼性をより重視するようになる「セキュリティの時代」に備えることを勧める。これにより、グリーンエネルギー、エネルギー効率、穀物生産量の向上、サイバーセキュリティへの投資にさらに弾みがつくだろう。

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本稿は、UBS AGが作成したUBS House View-Weekly Global (2022年7月25日付)を一部翻訳・編集した日本語版として2022年7月26日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。

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