House View Weekly

原油価格の下落は一時的となる見通し

先週、北海ブレント原油価格は1日の下げ幅としては3月以来となる下落を記録した。世界経済の減速に対する懸念が高まる中、6月上旬の直近ピークから約15%下落した。

今週の要点

原油価格の下落は一時的にとどまる見通し

先週、北海ブレント原油価格は1日の下げ幅としては3月以来となる下落を記録した。世界経済の減速に対する懸念が高まる中、6月上旬の直近ピークから約15%下落した。

景気の弱さが原油需要を押し戻すのではないかという不安は、中国・上海での新型コロナ感染再拡大と、経済に打撃を及ぼすロックダウン(都市封鎖)の再導入懸念により一層高まった。一方、ノルウェーで起きた石油・ガス業界の労働者によるストライキは政府の介入により終結し、この影響による石油・天然ガス供給への不安は払しょくされた。

もっとも、我々は原油価格はじきに反発すると予想している。供給サイドでは、産油国連合OPECプラス内の多くの産油国が生産目標の達成に引き続き苦戦している。OPECプラスは8月に日量64.8万バレルを追加増産することで合意したが、実際の増産量はその半分程度に留まるとみている。余剰生産能力は縮小しており、日量200万バレルを下回ると予想されることから、今後起こりうる供給障害に対応することは難しいと考える。

中国が厳格なロックダウン措置を再び導入する可能性は低いと我々はみている。今のところ、上海市当局は的を絞った制限措置とノンエッセンシャル(非必須)サービスの営業停止措置にとどめている。最後に、ロシア産原油の供給への懸念は、ロシアの裁判所による「カスピ海パイプライン・コンソーシアム」(世界最長の原油パイプラインの1つ)の30日間の操業停止命令発令との報道を受け、一段と高まった。

要点今後数カ月は供給の伸びが需要の伸びを下回り、原油価格は上昇するとみている。北海ブレント原油価格は9月までに130米ドル/バレルまで上昇し、2023年年央に向けて125米ドル/バレル近辺で推移すると見込む。この予想は、エネルギー株に対する我々の楽観的な見通しを裏付けてもいる。

債券市場は景気鈍化懸念の高まりを示唆

先週、米10年国債利回りは2年国債利回りを下回り、ここ数カ月で3度目の逆イールドとなった。こうした逆イールドは多くの投資家が思っているほど、すぐさま景気後退が訪れる予兆ではない。これまでをみると、逆イールドが発生してから景気後退に陥るまでには9~34カ月かかっている。言えることは、過去10回の米景気後退時には、その前に必ずこうした逆イールドが発生していたということだ。

債券市場では、こうしたイールド形状の変化以外にも、景気に対する信頼感の揺らぎが見え始めている。先週米10年国債利回りは上昇したが、先月中旬につけた約3.5%のピーク時からは低下し、現在は3.07%である。足元の先物市場の動きも、景気浮揚のため、2023年5月ごろには米連邦準備理事会(FRB)が再び利下げに向かわざるを得ないであろうことを示唆している。

我々としては、まだ、景気後退は避けがたいとまでは考えてない。米国景気鈍化の兆しはあるものの、6月のISM非製造業景気指数は55.3と、景気の拡大と縮小の境界線となる50を優に上回っている。6月の非農業部門雇用者数も37万2,000人増と、市場予想より10万人ほど多かった。加えて、中国では世界的な景気鈍化傾向を尻目に、6月の財新(Caixin)サービス業購買担当者景気指数(PMI)が54.5となり、5月の41.1からこの1年で最速の回復をみせている。

もっとも、景気を阻む材料は引きも切らない。不確実な状況下において投資家には、インフレ上昇の悪影響を和らげる高利回り商品を追加しつつ、強制切りリスクを緩和するための十分な流動性を保有することを勧める。

要点3~5年程度の支出ニーズを充たす規模の現金、債券などを組み合わせたLiquidity(流動性)ポートフォリオ*を推奨する。景気減速が続く一方で、インフレ退治に向けたFRBのさらなる積極的引き締めが検討されるような場合にはとりわけ、このポートフォリオは有用だろう。

再び米ドル高基調が強まる中、通貨の変動幅が拡大

米ドルが再び上昇している。米ドル指数は年初から約12%上昇し、2002年以降で最高水準をつけている。また、再び米ドルが上昇したことで、ユーロ/米ドルは1ユーロ=1米ドルのパリティ(等価)に近付いている。エネルギー不足と欧州周縁国の債券スプレッドの拡大が、欧州中央銀行ECB)のインフレ抑制策効果を弱めるのではと投資家が懸念したためだ。英ポンドも、パンデミック時の安値であり、2016年のブレグジット後に見られた水準以下まで再び下落した。

最近の市場でのリスク回避の一連の動きは、短期的に米ドル高がさらに続く可能性を意味しているが、米国景気の鈍化と、FRBが2023年に再度利下げを始めるとの思惑から、長期的なドル高は抑えられると予想する。

代わりに、対米ドルで強さを堅持しているスイス・フランを推奨する。スイス・フランは現在、2015年の一時的な急騰後初めて1ユーロ=1フランのパリティを越えて上昇している。スイス国立銀行(中央銀行)はインフレ政策においてECBほどの制約は受けず、打つ手はより多く残されている。事実、6月には0.5%の突然の利上げで市場を驚かせた。また、スイス・フラン高は輸入価格の低下を通じて物価高を抑える戦略の一環であることも、スイス国立銀行は明らかにしている。

要点:米ドル高継続を想定したポジションではなく、逃避通貨としてスイス・フランを勧める。また、直近下落しているコモディティ価格が反発すれば恩恵が期待できる資源国通貨も推奨する。

*時間軸は様々です。戦略はお客様の目標・目的と適合性によって変わります。このアプローチは、資産構築あるいは何らかの投資利益の達成を約束または保証するものではありません。

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本稿は、UBS AGが作成したUBS House View-Weekly Global (2022年7月11日付)を一部翻訳・編集した日本語版として2022年7月13日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。

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