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株式市場上期下落率は1970年来最大

先週は市場センチメントが再び悪化し、S&P500種株価指数は6月30日までの6カ月で20%下落し、上期としては1970年以来最大の下落率となった。

今週の要点

株式市場の下落率は上期としては1970年以来最大の下落

先週は市場センチメントが再び悪化し、S&P500種株価指数は6月30日までの6カ月で20%下落し、上期としては1970年以来最大の下落率となった。6月24日の週 にS&P500種が6.5%上昇(週間ベース)したことで株式市場に持続的な回復への期待が芽生えたが、この期待は削がれることとなった。

消費者信頼感指数と製造業景況感指数の低下が、投資家マインドを再び悪化させる主な要因となったようだ。コンファレンスボードの消費者信頼感指数は2013年以来の水準まで低下した。また、米サプライマネジメント協会(ISM)の6月の製造業景況感指数は、経済活動の減速を示唆した。

欧州中央銀行(ECB)主催の年次フォーラムに出席した主要中銀総裁のタカ派コメント も、市場センチメント悪化の要因となった。また、フィンランドとスウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)への加盟手続きの開始が決定されたこともあり、ロシアと西側諸国の間の緊張関係は続いている。

より広範にみれば、上期の株式市場の記録的なマイナス・リターンは、インフレ見通し、景気後退の脅威、ウクライナ紛争下で高まる政治リスクへの懸念を反映したものと考える。下期が始まる中、特定の1つのシナリオに注目してポジションを構築する戦略は賢明ではないと考える。様々なシナリオ下でも耐性を発揮するようなポートフォリオの調整を勧める。

底堅いLiquidity(流動性)戦略以外では、クオリティの高い高配当銘柄、ヘルスケア・セクター、耐性の高い社債、スイス・フランなど、景気のさらなる減速局面でもアウトパフォームが期待されるディフェンシブ資産を組み入れることを推奨する。

要点:景気の先行きについては、我々は依然ソフトランディング(軟着陸)を基本シナリオとして想定しているが(S&P500種の年末時予想水準は3,900)、主要米株式指数の上昇余地は、経済成長の減速と債券利回り上昇により縮小している。

各国中銀総裁が低インフレ時代の終焉を警告

6月末に開催された欧州中央銀行(ECB)年次フォーラムで、各国の中央銀行総裁は、インフレ率がパンデミック前の水準に戻ることはたやすくないとの見方を示した。ラガルドECB総裁は「低インフレ環境に戻るとは思わない」と述べた。すなわち、新型コロナウイルスのパンデミックとロシアによるウクライナ侵攻を受け、製造業者が製造拠点を選ぶ際、今後はコストや効率性よりむしろ、拠点を置く国が政治的に「敵か味方か」という観点から選択する傾向を強めるとの見方を示した。こうしたグローバル化の変容は、グローバル・サプライチェーンの分断と景気鈍化といったリスクをもたらすとも言及した。

パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、ここ数年物価上昇を抑えてきた環境は「すでに過去のものになったようだ」とし、安定した物価水準に戻るには「何らかの痛みを伴う可能性がある」と述べた。イングランド銀行のベイリー総裁は、新型コロナウイルスの感染拡大は、より低い雇用者数と過度な賃金上昇リスクの増大という「構造的な負の遺産」をもたらしたと述べた。

我々は、インフレ率は最近の数十年ぶりの高い水準からは低下するものの、当面は中央銀行の目標値を上回ると考える。そのため、インフレの悪影響を相殺するような流動性戦略のかじ取りを強いられる難しい局面が増えよう。最近の短期債利回りの上昇は、こうした戦略を実施する好機と考える。

要点:インフレ率が3%を超える期間は、エネルギー株などのバリュー株がアウトパフォームする傾向にあるため、高インフレ環境では株式の中で銘柄を厳選する戦略も適している。さらに、グローバル化の変容に向けたポジションも推奨しており、サイバーセキュリティ、食料生産の効率性向上、グリーンエネルギーといった分野にエクスポージャーを持つ企業を推奨する

最近の中国のアウトパフォームは継続する見込み

MSCI中国指数は長きにわたり各国市場に出遅れてきたが、6月は5.7%上昇、4–6月期(第2四半期)全体では2.3%上昇と、いずれの期間も主要株式市場の中で唯一上げている。現在、2022年初来のパフォーマンスはMSCIオールカントリー・ワールド指数が20.9%下落しているのに対して、MSCI中国指数は12.3%の下落にとどまっており、中国市場が世界市場をアウトパフォームしている。

こうした中国のアウトパフォームが年後半まで続くと予想する理由はいくつかある。6月は、中国のゼロコロナ政策がさほど経済成長の重石とならない可能性を示唆する明るい兆候が見られた。月初に上海市で大半の移動規制が緩和され、中国全土の交通や物流動向を示すデータも改善が続いている。定期的な集団検査の実施など早期の規制により、主要都市で長期にわたりロックダウンが施行されるリスクは後退している。

中国はまた、インフレの面でも欧州や米国とは一線を画しており、5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で2.1%の上昇にとどまった(米国は8.6%上昇)。そのため中国には追加的な政策緩和余地があり、あと1~2回の預金準備率(RRR)の引き下げに加えてさらなる信用緩和策を講じるだろうと我々はみている。今後開かれる政策会合では、特別国債の発行など追加財政刺激策も発表されるとみられる。

したがって、米国や欧州では景気後退懸念が再燃しているが、中国の経済成長はロックダウンで打撃を受けた第2四半期から、年後半には回復に向かうと予想する。

要点:5月の経済指標は改善しており、中国経済が最悪期を脱したとの我々の見方を裏付けている。中国はロックダウンから経済再開の途にあること、またその他主要国の景気が鈍化しているときに政策緩和に舵を切っていることから、引き続き推奨市場の1つとしている。

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本稿は、UBS AGが作成したUBS House View-Weekly Global (2022年7月4日付)を一部翻訳・編集した日本語版として2022年7月5日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。

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