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米国株上昇、米小売売上高や中国ハイテク企業支援で

17 日の米国株は先週の相場反転の流れを継いで上昇した。S&P500 種株価指数は生活必需品を除く全セクターが上昇して取引を終えた。

何が起きたか?

17日(火)の米国株は先週の相場反転の流れを継いで上昇した。S&P500種株価指数は生活必需品を除く全セクターが上昇して取引を終えた。情報技術、素材、金融、一般消費財・サービスの各セクターは2.5%を超える上昇となった。

米国2年国債利回りは14ベーシスポイント(bp)、10年国債利回りは11bp上昇し、2年物と10年物の利回り差は28bpに縮小した。市場は引き続き2022年末までに200bpを超える追加利上げがあると織り込んでいる。

株価上昇を牽引する新たな材料には欠けたが、17日に公表された米国の小売売上高と鉱工業生産指数は底堅さを維持した。米国以外では、中国のハイテク企業規制の緩和に関するニュースや上海のロックダウン措置緩和見通しといった好材料がリスクセンチメントを支えた。

今後の展開

こうした市場全般にわたる回復は、投資を継続することの意義を改めて裏付けるものだ。株価は大きく下落した後に大きく反発することが多い。S&P500種はわずか5日間で直近底値から4%超上昇し、ナスダック総合指数は同約5.5%回復した。

投資家のセンチメントと信頼感は依然として不安定で、金利(rate)、景気後退(recession)、リスク(risk)の3つのRがより明確になるまでは、荒れた相場展開が続く可能性が高い。したがって、高インフレ、利上げ、高ボラティリティという環境下でアウトパフォームすることが期待されるバリュー株、コモディティ、コモディティ関連銘柄、ディフェンシブ銘柄のポジションを増やすことを引き続き推奨する。

金利:4月の米消費者物価指数(CPI)は、エコノミストのコンセンサス予想を上回ったものの、インフレのピークが過ぎた可能性を改めて示唆する内容だった。我々は引き続き、パンデミック下で急増した商品需要が鈍化するとともに、昨年基準値が低い数字だったことによるベース効果も薄れ、インフレ率は年後半にかけて低下すると予想する。

後退(リセッション):最近発表された経済指標は強弱まちまちである。米国の2022年1-3月期GDP成長率がマイナス成長となり、英国の同成長率は下振れした一方、17日に発表された4月の米小売売上高と鉱工業生産指数はともにコンセンサス予想を上回った。また、3月の小売売上高が大幅に上方修正されるなどし、向こう6-12カ月で米国がリセッション入りする可能性は低いとする我々の見解をさらに裏付けた。

リスク:中国では、ハイテク企業規制とパンデミック規制について明るいニュースが報じられた。こうしたニュースに加え、我々は追加景気刺激策が行われると予想しており、また先日発表された初めて住宅を購入する人向けに住宅ローン金利を引き下げる措置などが、中国市場のセンチメントの改善に寄与するだろう。欧州では、ウクライナでの紛争が継続しているほか、フィンランドとスウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)加盟申請を正式決定したことを受け、高い緊張状態が続きそうだ。

投資見解

この先インフレ率が低下し、成長は持続すると予想されるが、主要経済指標や債券市場が大きく変動する中、投資家は株価ボラティリティ(変動性)のさらなる上昇に備える必要があると考える。高インフレ率の環境下で堅調なパフォーマンスが見込まれる以下の投資行動を勧める。

バリュー株に投資する。相対的にバリュエーションの低い銘柄(バリュー株)は、実質金利の上昇の恩恵を受けやすい。1975年以降、インフレ率が3%を超える局面では、バリュー株はグロース株をアウトパフォームしてきた。長年のアンダーパフォームによりバリュー株への配分が低下している投資家には、グローバル・エネルギー株や英国株式など、バリュー株への長期ポジションを積み増すことを勧める。

ポートフォリオのヘッジを強化する。過去を振り返ってみると、インフレ時にはコモディティ全般のパフォーマンスが好調に推移している。また、足元で高まる供給混乱リスクを考えると、コモディティへの投資は地政学リスクのヘッジとしても効果的な手段である。

短期的には、米ドルも引き続きポートフォリオの効果的なヘッジとして機能するだろう。安全資産への資金流入に加え、米国の実質金利の上昇、さらには米国がエネルギーの純輸出国であることなどからも、米ドルの需要が高まることが見込まれる。

ヘルスケアのようなディフェンシブな株式セクターを追加することで、ポートフォリオ全体のボラティリティを低減することも可能である。医薬品銘柄は伝統的にリスクオフ局面で比較的底堅く推移するうえ、バリュエーションにも割安感がある。

金利上昇と高インフレ率に対処する。債券では、ここ数週間で、金利上昇により投資妙味のある分野が出現している。環境・社会・ガバナンス(ESG)に注力するハイイールド債に投資機会があるとみる。中小企業向け第1順位抵当権付ローンなど、プライベート・クレジットの分野も引き続き推奨する。

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本稿は、UBS AGが作成した“CIO Alert: Stocks rally”(2022年5月17日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年5月18日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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