House View Weekly

「3つのR」によるボラティリティに備える

金利(rate)、景気後退(recession)、リスク(risk)の「3つのR」がより明確になるまでは、ディフェンシブ・セクターのポジションを高め、ヘッジを追加することを推奨する。

今週の要点

3つのR」が明確になるまではボラティリティに備える

先週のS&P500種株価指数は6週連続の下落となった。米連邦準備理事会(FRB)の積極的な利上げ観測、中国の新型コロナ感染拡大を受けたロックダウン(都市封鎖)、ウクライナ情勢などを背景に、リセッション(景気後退)懸念が高まった。13日(金)は大きく上昇したものの、週間としては2.4%の下落となり、1月につけた史上最高値からは約16%のマイナスとなった。

よりリスクの高い資産はさらに低迷している。主としてハイテク企業に投資する米ETFはパンデミック以前の水準を28%下回り、史上最高値からは72%下落している。一部の主要指数はパンデミック以前の水準を伺うか、もしくは下回っており、これは新興国市場、米国を除く先進国市場、米国中小型株式にも言えることだ。

こうした相場の下落により悪材料はかなりが織り込み済みとなったが、金利(rate)、景気後退(recession)、リスク(risk)の「3つのR」がより明確になるまでは、投資家のセンチメントの回復は難しいだろう。投資家は、中央銀行に対する積極的な利上げ圧力の弱まり、景気後退の回避、ロシアによるウクライナ侵攻や中国のロックダウンにかかるリスクの低下を示す兆候を注視するだろう。こうした先行き不透明感が解消されるまでは、ディフェンシブ・セクターのポジションを高め、ヘッジを追加することを推奨する。

要点:足元の先行き不透明の高い環境下では、1つ目に、高インフレと利上げ局面でアウトパフォームする傾向にあるバリュー株を推奨する。2つ目に、景気の変動の影響を受けにくいヘルスケア株式を組み入れることで、リセッション・リスクを低減することができると考える。3つ目に、コモディティにエクスポージャーを取ることで、地政学リスクを抑えることができると考える。ウクライナ情勢が一段と激化すれば、コモディティ価格も同時に急騰するだろう。

米インフレ率の鈍化ペースは予想よりも緩やか

4月の米消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率は8.3%と、約40年ぶりとなる高い伸びを示した3月の8.5%から減速した。昨年8月以降初めて前月から減速し、足元ピークをつけたと一定の安堵感が広がった。

だが、上昇率は減速とはなったものの、コンセンサス予想8.1%を上回ったことから、市場の失望を誘った。同指数は、物価抑制を目指す米連邦準備理事会(FRB)の急速な引き締めにより米国が景気後退に陥るという懸念が高まる中で発表された。

今後数カ月はインフレ率は極めて高い水準が続くとみているが、今回のデータは物価上昇率が年後半を通じて鈍化するという我々の見方を裏付ける内容となっている。

パンデミック後に消費パターンが正常化するに伴い、財価格の上昇率は既に鈍化し始めている。CPIコア指数を構成する財の価格上昇率は前月比0.2%に留まった。中古車、テレビ、スマートフォンの価格は3カ月連続で下落した。

ベース効果により前年比の物価上昇率は鈍化し始めており、この状況はこれからも続く見込みである。以降数カ月の物価指数は、コロナ規制により抑圧されていた状態ではなく、経済活動の再開が進んだ2021年の物価水準と比較するからだ。今後1カ月間、原油価格の上昇率が75%(2022年4月の前年比上昇率)を下回るようであれば、原油のCPI総合指数の上昇率への寄与度は低下するであろう。

要点: 物価上昇ペースの鈍化が続くと、FRBへの利上げ圧力は弱まり、景気後退懸念も和らぐ可能性がある。しかし、労働市場の逼迫を考慮すると、物価上昇率が市場予想を上回るリスクが残る。FRBが利上げサイクルの一旦停止を検討するためには労働市場の逼迫解消が確認される必要がある。よって、投資家は高インフレと金利上昇の環境への対応を続けることを勧める。我々はバリュー株がアウトパフォームすると考える。

暗号資産(仮想通貨)のポジション解消による教訓

現在の市場ストレスの高まりは株式市場に限られたものではなく、暗号資産(仮想通貨)のリスク・ポジションも急速に解消されている。ビットコインの価格は過去最高値から50%超下落し、暗号資産業界の最大手は取引高が大きく落ち込んでおり、先週は時価総額の3分の1を失った。また世界最大のステーブルコイン、テザーは米ドルとのペッグ(連動)を一時逸脱した。

こうした動きは、暗号資産をポートフォリオに組み入れる根拠を弱めるものである。

第1に、暗号資産は株式市場の下落とインフレ高進の局面で急落し、ポートフォリオの分散強化と物価上昇に対するヘッジという点で有効ではないという我々の見方を裏付けることとなった。ビットコインとイーサリアムのナスダック総合指数と、主としてハイテク企業に投資する米ETFの相関は0.95を超え非常に高い。その上、暗号資産は流動性が低く、ボラティリティ(変動率)が高く、暗号資産間の相関も高い。

暗号資産をインフレ・ヘッジ資産としてみる根拠も薄弱となっている。むしろ、暗号資産は中央銀行の金融緩和策が市場を支えてきた側面があるようだ。

第2に、規制リスクが引き続き高まりつつある。先週、イエレン米財務長官は、「デジタル資産は金融システムにとってリスクとなる可能性があり、規制当局による協調的な監視の強化が必要」と述べた。同財務長官は、年末までの規制導入を目指している。一方、米証券取引委員会(SEC)のゲンスラー委員長は、一部の暗号資産交換業者の顧客に対する不利益な取引慣行を批判し、監督が必要と述べた。多くの個人投資家が暗号資産で大きな損失を被ったことから、規制強化の動きは加速すると考える。

要点:投資家にはこうした投機性の強い資産についてボトムを狙って投資しようとしないことを勧める。暗号資産にかかわるテクノロジー(分散型台帳技術(DLT)など)へのエクスポージャーを追求する投資家は、一部のプラットフォーム企業およびイネーブラー(技術で目標を実現する企業)への投資、またはアーリーステージ(初期段階)企業へのプライベート市場投資により実現することが可能である。しかし、現在テクノロジー株に下落圧力がかかっていることから、そうした投資は長期的視点が求められる。

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本稿は、UBS AGが作成したUBS House View-Weekly Global (2022年5月16日付)を一部翻訳・編集した日本語版として2022年5月17日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。

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