ElectionWatch

議会のパワーバランス

11月に最も起こり得る結果は、大統領の所属する党と議会の多数党が違う「分割政府」だ。市場は選挙結果を冷静に受け止める傾向があるが、両党の政策の違いが明確になれば相場変動が高まるだろう。

現職大統領にとって、中間選挙は現実的に困難な戦いとなる。現職であることによる悪影響がより顕著に現れるのが下院議員選挙で、過去19回の中間選挙のうち17回で政権与党が議席を減らしてきた(図表1)。例外は1998年と2002年だが、いずれも異例の環境下で実施されたものである。1998年選挙の出口調査では、大半の有権者は、クリントン大統領の個人としての好感度は低いが、職務遂行能力は高く評価していることが示された。4年後の中間選挙では、2001年9月11日の同時多発テロを受けて、有権者はジョージ・W・ブッシュ大統領の下に結集する傾向があった。

この2回しか例外がないことから、政権与党が中間選挙で議席を減らすという法則は間違っていないだろう。大統領の任期をあと2年残して途中で行われる下院議員選挙では、行政府を担う政党は20以上議席を失うのが通例である。その理由については諸説ある。マスコミの絶え間ない報道が、大統領の失言や政策上の誤りを増幅させるのは確かだ。中間選挙の投票率も(大統領選挙に比べると)低い傾向があるが、投票者のモチベーションは高い傾向があることを示唆する。事実、野党に属する平均的な有権者は、投票日には現職大統領を支持する有権者よりも投票所に現れる可能性が高い2

有権者、特に野党支持者は、中間選挙を大統領の実績に対する国民投票とみなす傾向がある。この行動パターンはリアルタイムで展開されているようだ。米シンクタンクのピュー研究所が3月7日から13日に実施した調査によると、調査対象となった共和党登録有権者のうち71%が、11月には「反バイデン候補者」に投票する予定だと答えている。そして、米議会を掌握することが重要と考える傾向が民主党員よりも高かった。民主党の登録有権者のうち、自分たちの票を大統領への支持表明とみなすつもりだと回答した人の割合は半分に満たない³。

政権支持率の高さは、中間選挙での与党への逆風を完全には払拭できないとしても、時として鈍らせる場合がある。クリントンとジョージ・W・ブッシュ両大統領の支持率は高く、政権与党は下院で議席数を若干増やした(1998年と2002年)。1986年のレーガン大統領と1990年のジョージ・H・W・ブッシュ大統領は、どちらも高支持率を謳歌していたが、それでも、中間選挙では共和党は(わずかとは言え)議席を減らした。一方、支持率が50%を下回ると、与党はかなりの代償を支払うのが常である(図表2)。

過去のパターンは上院にはそれほど当てはまらない。というのも上院は2年ごとに3分の1ずつ改選されるからだ⁴。選挙結果は、選挙ごとの各党の改選議席数、および各州がどちらの党を支持する傾向があるかによって決まることが多い(上院は各州2名ずつの計100議席)。2022年の上院の勢力図は民主党に有利にはなっている。というのも、今回の改選議席は共和党の方が多く、しかも激戦州の現職共和党議員2名が引退するからだ。だが、再選を目指す現職の民主党議員4名も厳しい選挙戦に直面することになる。予測市場によると、中間選挙後には共和党が上院の過半数を握る可能性が高いが、結果はなお予断を許さない。

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本稿は、UBS Financial Services Inc. が作成した“ElectionWatch : The balance of power”(2022年4月21日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年5月11日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Solita Marcelli

UBSグローバル・ウェルス・マネジメント
米州最高投資責任者(CIO Americas)

Solita Marcelli

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2019年にUBS入社、現在UBSグローバル・ウェルス・マネジメントの米州最高投資責任者(CIO Americas)を務める。グローバルCIO および ウェルス・マネジメント米国のマネジメント・コミッティ、UBS House View (投資見解)の策定を行うグローバル・インベストメント・コミッティのメンバー。

前職はJ.P.Morganウェルス・マネジメントで債券・為替・コモディティのグローバル・ヘッド。ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスでMBA取得。CNBC、Bloomberg、Wall Street Journalなど数多くの金融メディアで取り上げられる。

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