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FRB金利0.5%引き上げで株価上昇

米連邦準備理事会(FRB)は4 日、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を50 ベーシスポイント(bp)引き上げ、0.75~1%とすることを決定した。

何が起きたか?

米連邦準備理事会(FRB)は4日、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を50ベーシスポイント(bp)引き上げ、0.75~1%とすることを決定した。50bpの利上げは2000年5月以来となる。また、6月から保有債券の満期償還分の再投資を停止することでバランスシートの縮小を開始することも発表した。当初は毎月475億米ドルペースで縮小を開始し、3カ月後には縮小幅を950億米ドルに拡大する。

こうした決定は市場の予想通りで、当初の反応は限定的だったが、会合後に行われたパウエル議長の記者会見を受けて株式相場は大幅高となった。パウエル議長は、今後「数回」の会合で決定する利上げ幅については50bpが適当だと述べ、またその後、質問に対して、75bpの利上げは積極的に検討されなかったと回答した。会合に先立ち、市場は6月に開かれる次回の会合で75bpの利上げが決定される確率を約35%と織り込んでおり、また向こう4回の会合(今回の会合を含む)で200bpを超える利上げがあると織り込んでいた。パウエル議長のコメントは市場の織り込みに対して想定外にハト派的であったことから、債券市場と株式市場の双方にプラスとなった。米国2年国債利回りは14bp低下して2.64%になり、S&P500種株価指数は3%上昇した。

今後の展開

我々の予想はFRBの予想と概ね一致している。パウエル議長が記者会見で述べたように、ロシアのウクライナ侵攻や中国の新型コロナ感染拡大を受けたロックダウンを新たな供給混乱要因にインフレ圧力が高まっており、FRBのインフレ抑制は困難を増している。しかしながら、パウエル議長の見解と同様に、我々は経済のソフトランディング(軟着陸)への道筋はあると考えている。家計と企業のバランスシートは概してともに強固であり、金利が上昇する中でも消費と投資の継続的な成長が容易な環境にある。また、ここ1年でインフレ率を大きく押し上げてきた一部の財における急激な物価上昇は、今後数カ月で下落に転じると予想する。それが全体的なインフレ率の低下に寄与し、FRBは中立金利をはるかに上回る水準にまで政策金利を引き上げる必要がなくなる。我々は、個人消費支出(PCE)価格指数は3月の前年同月比6.6%から年末までに4%を切るまでに下落すると予想する。そうなれば、FRBは2.5%前後の中立的な水準にまで金利を引き上げたあたりで利上げサイクルを停止することができるだろう。

投資見解

我々の基本シナリオであるインフレ率の低下と緩やかな経済成長見通しに基づき、株式市場はここから年末に向けて上昇すると予想する。我々は引き続き高インフレ率、金利上昇、ボラティリティ拡大という環境下で堅調なパフォーマンスが見込まれる以下の投資行動を勧める。

バリュー株に投資する。高インフレ率と金利上昇の局面では、経済および市場環境はバリュー投資に有利になると見込まれる。長年のアンダーパフォームによりバリュー株への配分が低下している投資家には、バリュー株への長期ポジション、具体的にはグローバル・エネルギー株や英国のバリュー株を積み増すことを勧める。

金利上昇と高インフレ率に対処する。債券では、金利上昇により投資妙味のある分野が出現している。ハイイールド債の中では環境・社会・ガバナンス(ESG)に注力する銘柄に投資機会があるとみる。中小企業向け第1順位抵当権付ローンなど、プライベート・クレジットの分野も引き続き推奨する。

ポートフォリオのヘッジを強化する。ポートフォリオのヘッジを強化することでボラティリティとリスクを低減することが可能だ。過去を振り返ってみると、インフレ時にはコモディティ全般のパフォーマンスが好調に推移しており、足元で高まる供給混乱リスクを考えると、地政学リスクのヘッジとしても効果的な手段である。今後6カ月間でコモディティ指数にはさらに10%程度のトータルリターンの余地があると我々はみている。投資家には特にアクティブ戦略を勧める。

また短期的には、米ドルも引き続きポートフォリオの効果的なヘッジとして機能するだろう。4日に米ドルは下落したが、地政学リスクや経済の先行き不透明感の高まりによる安全資産への資金流入に加え、米国の実質金利の上昇、さらには米国がエネルギーの純輸出国であることなどからも、米ドルの需要が高まることが見込まれる。

ヘルスケアのようなディフェンシブな株式セクターを追加することで、全体的なボラティリティを低減することができる。伝統的に医薬品はリスクオフ局面では比較的底堅く推移するうえ、バリュエーションも割安である。

ボラティリティを乗り切る。4日の米国株式市場の急騰は、市場が今後の金融政策状況、経済指標やニュース次第でいかに素早く方向転換しうるかを示唆するものだ。短期的にはボラティリティ(市場の変動幅)の高い状況が続く可能性が高く、投資家は不安に駆られて感情的な投資判断を下してしまう場合がある。こうした状況下、投資家には、UBS Wealth WayのLiquidity. Longevity. Legacy.戦略(流動性戦略、老後戦略、資産承継戦略)の考え方に照らして自身の投資計画の見直しを行うことを勧める。ポートフォリオの中で今後3~5年の支出分を賄う流動性戦略を確保しておくことで、当面の資金ニーズに対応でき、損失の確定を回避することができる。また流動性戦略の資金が十分にあれば、投資家は残りの資産を長期的な資産形成に充て、短期的な投資機会を捉えることができる。

UBS Wealth Wayは、お客様がUBS Financial Services Inc.、およびクライアント・アドバイザー(お客様担当)とともに、様々な時間軸において、それぞれのニーズと目標を明確にし、実現する上での指針となるLiquidity. Longevity. Legacy.戦略(流動性戦略、老後戦略、資産承継戦略)を組み入れた考え方です。この考え方は、資産構築あるいは何らかの投資利益の達成を約束または保証するものではありません。すべての投資商品は、元本の全額を失うリスクを含む損失リスクを伴います。

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本稿は、UBS AGが作成した“CIO Alert: Markets rally as Fed hikes rates”(2022年5月4日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年5月6日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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