House View Weekly

不確実性に備える

株式市場は、ウクライナ情勢悪化の報道および中央銀行の利上げペース加速への懸念からボラティリティ(変動率)が高まった。

今週の要点

不確実性に備えてヘッジを検討する

株式市場は、ウクライナ情勢悪化の報道および中央銀行の利上げペース加速への懸念からボラティリティ(変動率)が高まった。

ウクライナ東部ドンバス地方へのロシアの大規模攻撃により、当面は停戦が期待できない状況となった。一方、米国の金融市場では、米連邦準備理事会(FRB)高官のタカ派的なコメントを背景に、先物市場が約260ベーシスポイント(bp)の利上げを織り込んだ。これは、1994年の利上げ局面を上回る引き締めペースである。

また、欧州中央銀行(ECB)でも高官から早期利上げを支持する発言が続いている。ECB政策委員会メンバーのナーゲル独連邦銀行(中銀)総裁は、資産購入が6月末に完了すれば、「7-9月期の初め」に利上げ着手の可能性もあると述べた。

不確実性が高まる中、投資家にはヘッジを強化し、ディフェンシブな株式ポジションを組み入れ、ボラティリティ(変動率)を抑制する戦略を検討することを勧める。

ヘッジファンドは1-3月期に堅調なリターンを示し、株式および国債をアウトパフォームしたことから、分散効果とディフェンシブ性が改めて確認された。マクロ・ファンドの1-3月期のリターンは、四半期リターンとしては1993年以降で最大となった。

当面のボラティリティ上昇局面を乗り切るには、相応の流動性を確保する以外に、投資を継続しつつ急落リスクの抑制も期待できるダイナミックアセットアロケーション(動的資産配分)戦略なども検討できる。

要点: 我々の基本シナリオでは、マクロ経済上の逆風は強まっているものの、景気後退は避けられると想定している。しかし、ボラティリティの高止まりが予想されることから、投資家はヘッジを強化し、株式ポートフォリオにディフェンシブ銘柄を組み入れることを勧める。

コモディティには上昇余地が見込まれる

この数週間でコモディティ価格高騰の動きが弱まってきた。北海ブレント原油価格は、足元3月末の水準を下回って推移している。UBSブルームバーグCMCIの1-3月期のリターンは22%となったが、これは主にエネルギーがけん引した。ロシア産コモディティの供給混乱もかなり落ち着いてきており、天然ガスの輸出は継続し、4月の石油販売は増加し、金属輸出も総じて減少していない。

しかし、コモディティ市場全体の上昇局面が終わったとは考えていない。4月のCMCIのリターンはすでに4%に達し、エネルギー、産業用金属、穀物に対して引き続き上昇圧力がかかっている。

エネルギーについては、ロシアの輸出は今のところ続いているが、欧州がロシア産天然ガス、原油、石炭の輸入依存度を引き下げる動きを強めている。一方、世界の石油供給能力拡大の動きは引き続き限定的である。OPECプラスはパンデミックに伴う減産の巻き戻しについて慎重姿勢を堅持しており、米国のシェールオイル・ガス企業も規律ある掘削を維持している。

同様の供給制約は他のコモディティでもみられる。原油高の影響で、欧州の産業用金属、特に精錬でエネルギーを大量に消費するアルミニウムや亜鉛の生産コストも大幅に上昇している。また、ウクライナ危機の影響は、世界有数の穀物輸出国であるロシア、ウクライナ双方の農産物輸出にも及んでいる。

要点:コモディティ指数の今後6カ月のトータル・リターンには10%の上昇余地があるとみている。このため、投資家にはコモディティの買いポジションを維持し、特に市場環境に適応した機動的なアクティブ・コモディティ戦略を勧める。

1–3月期決算は銘柄選別の必要性を浮き彫りに

米国の2022年1–3月期決算シーズンは好調なスタートを切った。S&P500種企業のうち決算を終えたのはまだ4分の1程度だが、そのうち8割近い企業が利益予想を上回っており、こうした底堅い決算がさらに続くと予想している。我々は、2022年の1株当たり利益(EPS)成長率を約10%と予想しており、総じて好調な1年になると見込む。

だが、ここまでの決算は、銘柄選別が必要であるとの見方を我々の裏付ける内容でもある。

米電気自動車大手の利益が過去最高を記録したことは、第1四半期の業界全体の電気自動車(EV)販売台数が前年同期比120%近く増加するとの予想(調査会社EVvolumes.com調べ)と一致する。これは、電化、カーシェアリング/配車サービス、自動運転等を含むスマート・モビリティに向けた幅広い流れの一環とみている。

魅力的なバリュエーションとディフェンシブ性を備えたヘルスケア・セクターも好調なスタートを切った。決算発表を終えた企業はまだセクター全体の10%に満たないが、現在のところ全社が利益予想を上回っている。

一方、動画配信大手は会員数が減少に転じたため、決算発表後に株価が3割強下落した。この決算がサブスクリプション・サービスに対する力強い成長見通しに影を落とすものではないと考えるが、現時点では個別銘柄ベースの投資判断が有効だろう。

要点我々の基本シナリオではS&P500種株価指数は年内上昇すると想定しており、年末の予想を4,700ポイント(現在は4,270ポイント)と予想してはいるが、銘柄は厳選した方が良いだろう。ディフェンシブ銘柄や、5Gやスマート・モビリティなど長期的な成長見込みのあるテーマに注力することを勧める。

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本稿は、UBS AGが作成したUBS House View-Weekly Global (2022年4月25日付)を一部翻訳・編集した日本語版として2022年4月26日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。

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