ドル円

ドル高進行に過熱感

想定をはるかに超えた円安ドル高が進行している。この足元の変化に合わせ、ドル円の見通しを修正する。

  • 想定をはるかに超えた円安ドル高が進行している。この足元の変化に合わせ、ドル円の見通しを、2022年6月末を130円(従来は122円)、9月末を126円(同120円)、12月末を124円(同118円)に修正する。
  • 日本の政府・金融当局による口先介入では、急激な円安に歯止めをかけることができていない。短期的に市場が日銀のハト派姿勢継続を引き続き試す可能性がある。
  • 4月27~28日に開催される次回の金融政策決定会合で、日銀が何らかの為替安定政策を示すかどうかが市場の主な注目点になるだろう。

ドル円相場は日本の政府・金融当局による口先介入を重視せず

想定外に急速な円安に対する警戒感が日本の政府・金融当局の間で高まっており、鈴木財務大臣や黒田日銀総裁が相次いで過度な円安による悪影響について懸念を表明した。だが、過去にも日銀の根本的な政策転換を伴わない口先介入だけでは為替を反転できなかったことを市場は認識しており、相変わらず円安の流れが続いている。そのため、たとえ日銀が1ドル130円に達した辺りで為替介入を実施したとしても、その後日銀が国債利回りの上昇を容認するなど具体的な金融引き締め策を講じない限り、円安を食い止められる可能性は低いだろう。

4月27~28日に開催される金融政策決定会合が、日銀が円安への対抗策を講じる機会になる。我々は、日銀が10年国債利回りの上昇を容認することで、金融引き締めを行う可能性を排除しない。その場合、現在0%から±25ベーシスポイント(bp)としている10年国債利回りの変動許容幅を拡大するか、操作対象年限を10年債から5年債に短くするかのいずれかが考えられる。日米金利差とドル円の過去の感応度に基づくと、日本の10年国債利回りが20~30bp上昇すれば、ドル円は安定するか、さらに2~3円ほど円高方向に進むとみられる。だが、ドル円については両方向のリスクがある。4月28日の政策決定会合で日銀が政策変更を見送った場合、為替市場では円売り圧力が強まり、1ドル130円を超える可能性がある。

投資判断

見通し:新たな基本シナリオでは、ドル円の天井を130円近辺と予想する。ドルは円に対して日米金利差では説明できないほど上昇している。また、日本が入国制限を緩和し、海外からの観光客が増えれば、円買い需要が高まると予想する。これにより国内の物価上昇圧力がさらに強まり、日銀に政策引き締めを促し、長期的な円の上昇を下支えするだろう。

レンジ: 130円を超えるドル高は為替介入を招く可能性があるが、日銀が現状の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)を維持する限り、この水準がドルの上値とはならないだろう。

リスク要因:日銀が金融政策を変更せず、足元のドル高円安基調が変わらない可能性がある。また、米国金利が上昇し続けると、投機筋が円のショート・ポジションを積み増す可能性もある。

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本稿はUBS AG Singapore BranchおよびUBS AG Hong Kong Branchが作成した“USDJPY: In overshooting mode”(2022年4月20日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年4月21日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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