長期投資: コンシューマーエクスペリエンス

コト消費への移行

消費者の行動が「モノ消費」から「コト消費」へと移行している。旅行やレジャーなどの従来型消費に新たなバーチャルセグメントを組み合わることが、本テーマの重要な投資機会と考える。

  • 消費者の行動が「モノ消費」から「コト消費」へとシフトしている。記憶に残る体験や楽しい体験への支出を増やしている。このテーマを構造面から推進しているのは主としてテクノロジーと社会だ。人口増加も消費拡大の重要な原動力である。
  • テクノロジーは我々の暮らしのあらゆる側面に変革を起こし、新たな体験を可能にする。コミュニティに属し、体験を共有したいとの人々の思いを背景に、ソーシャルメディアネットワークが著しい成長を遂げている。
  • 旅行やレジャーなどの従来型消費に新たなバーチャルセグメント(メタバース、ゲーム、eスポーツ、芸術・スポーツ・文化・エンターテインメントのオンラインイベント、ソーシャルメディア等)を組み合わることが、このテーマにおける重要な投資機会であると考える。

我々の見解

テクノロジーは、暮らしのあらゆる側面を創造的に破壊し、新たなバーチャル体験を作り出すことで、我々の働き方、遊び方、消費の仕方に大きな変革をもたらしている。デジタル経済の成長に伴い、過去20年で多くの伝統的なビジネスモデルが創造的に破壊されてきた。新たなテクノロジーサービスやオペレーティングシステム(OS)が数年のうちに次々と現れ、急速に浸透していった。

消費者行動の変化は世界各地で起きている。製品の消費の仕方、インターネットによる情報入手、ひいては購入の意思決定に至るまで、さまざまな変化が起きている。デジタルイノベーションと消費パターンの変化という2つのトレンドが、今後もデジタル経済の構造的成長を牽引し、投資機会を創出するだろう。

本レポートでは、発展する体験型のコト消費関連産業の現状を確認し、最近のパフォーマンスについて述べる。

コト消費への移行:テーマの概要

若い頃からデジタル製品に慣れ親しんだデジタルネイティブ世代は、親世代とは異なる消費パターンを示している。またこうした若い世代の行動が親たちに影響し、親世代の消費行動も変わりつつある。若者の間では、体験を共有したり体験に支出することは、モノを所有することよりも重要であると考える傾向がある。

このテーマでは、こうした消費パターンの変化に注目し、ゲーム、eスポーツ、オンラインフードデリバリー、ソーシャルメディア、その他デジタルチャネル、およびメタバースなどの有望なデジタル消費トレンドや、旅行・エンターテインメントなどの従来型の体験やレジャーといった「コト消費」への投資機会を探る。

ソーシャルメディア

新型コロナウイルスのパンデミックを受け、ソーシャルメディアに費やす時間が増えている。ステイホームとソーシャルディスタンスが続く中で、家族や友人との連絡手段、娯楽、ニュース・イベントの情報入手手段として、ますますテクノロジーが使われるようになった。

動画配信

動画プラットフォームも広く使われており、UBSエビデンス・ラボの調査では、回答者の89%が毎月利用していると答えた。利用率は若年層で特に高い。ゲームのライブ配信プラットフォームの人気も高まっており、スターやプロeスポーツプレイヤーのゲーム中継や「エキサイティング」なライブ動画の配信で、数百万人の視聴者を惹きつけている。

広告の機会

ブランドから消費者へのコミュニケーション手段として、ソーシャルメディアとソーシャルネットワークの重要度が高まっている。「周りの人が勧めている」、「ソーシャルメディアで見た」などの書き込みや発言が消費者の購入判断に影響を及ぼすようになった。例えばインフルエンサーのキム・カーダシアンのソーシャルメディアのフォロワー数は2億9,000万人超にのぼる。1回投稿すれば数百万の「いいね」がつき、商品の推奨の後押しとなる。

業界内の情報やUBSエビデンス・ラボの調査によると、米国のプラットフォームにおける広告のエンゲージメント(ユーザーの反応)とモメンタム(勢い)が上昇している。広告を見て何らかの行動(クリックして閲覧する、問い合わせるなど)をとったり宣伝された商品を購入したユーザー数が増えている。また、エンターテインメント配信にも機会があるとみる。ケーブルテレビを解約して動画配信サービスを利用する人が増えており、広告主側も、広告付きのエンターテインメント配信にシフトしている。

ゲーム、eスポーツ

ミレニアル世代へのエクスポージャーを求めるなら、ゲームとeスポーツに投資

ゲームとeスポーツは、するのも観るのも楽しいだけでなく、投資家にとっては急成長を遂げる市場に投資する手段ともなる。ゲームの人気はサッカーに次いで世界で2番目に高い。ゲームやeスポーツを対象とする市場調査会社ニューズーによると、世界のビデオゲームプレイヤー人口は2021年は約30億人に上り、バスケットボールや野球、アイスホッケー、テニスの観戦人口を上回った(図表1参照)。膨大な関心を引き付けているが、eスポーツはまだ発展の初期段階にある。UBSが(UBSエビデンス・ラボの調査結果に基づき)独自に分析したところ、ビデオゲームに費やされる時間は増加傾向にあることが示された。この結果は、成長するゲーム・eスポーツ産業が提供する魅力的な投資機会に対する我々の確信を裏付けるものである。

ゲーム:世界的に魅力的な市場

2021年の世界のビデオゲーム市場は極めて好調だった。パンデミック下でデジタル化が加速する中、年間売上高は1,800億米ドルに上った。ニューズーは、世界のビデオゲーム市場が年率平均約9%で成長し、2024年までに2,200億米ドル規模に達すると見積もっている(図表2参照)。ビデオゲーム市場の中でも最大のセグメントはモバイルゲームで、昨年の年間売上高は930億米ドルだった。それにコンソールゲームの500億米ドル、PCゲームの370億米ドルが続く(図表3参照)。また昨年はアジア太平洋地域の売上高が880億米ドルとなり、世界全体の50%を占める形となった(図表4参照)。その中で中国の売上高は456億米ドルに上り、アジア太平洋地域全体の52%を占める。世界のプレイヤーの55%はアジア太平洋地域におり、この地域の重要性が示される。2番目に大きな地域は北米である(世界売上の24%、世界のプレイヤー人口の7%を占める)。欧州(世界売上の18%、世界のプレイヤー人口の14%を占める)と北米のゲーム市場は成熟しており、成長率は相対的に低い。最終市場の観点から見ると、PCゲームとコンソールゲーム(PCやゲーム機でプレーするもの)は、モバイルゲーム(スマートフォンでプレーするもの)にシェアを奪われつつある。

ここ数週間でゲーム業界の統合が進んでおり、大手企業が大型買収を発表している。案件額は、合わせて約900億米ドルにのぼる。統合の目的は、知的財産、多角化、規模拡大、メタバース事業などである。

モバイル 「新しい」世界:目覚ましい成長を期待

2019年にニューズーらが共同で行った調査によると、モバイルユーザーの2人に1人が過去1週間以内にゲームアプリを開いている。ゲームアプリはソーシャルメディアとオンラインショッピングアプリに次ぐ人気アプリセグメントだ。若いモバイルユーザー(18~20歳)の間では、この割合はさらに高くなる。2019年の調査では3人に2人が過去1週間以内にゲームアプリを開いており、使用頻度の高いアプリの上位2番目となった。これを別の角度から見ると、広告主にとっては若者にアピールするにあたっては動画配信やスポーツアプリよりもゲームに高い勝算があるといえる。そしてゲームをするのは若者だけではない。ゲームプレイヤー人口の年齢分布と、その他アプリのユーザーの年齢分布にはほとんど差がない。

モバイルゲーム市場が急速に成長し、ゲーム市場売上高全体の約52%を占める(図表3参照)までになった1番の理由は、スマートフォン技術の発展である。ニューズーによると、モバイルゲーム市場は今後数年に亘り2桁台前半の成長率で拡大すると予想されており、極めて魅力的な消費支出先となっている。UBSエビデンス・ラボの調査によると、スマートフォンゲームに多くの時間を費やすと回答した人の割合は、中国の71%に対して米国では50%だった。モバイルゲームプレイヤー人口の割合がすでに高いことがわかる。

新たな販売チャネルで利益率を促進

ゲーム市場はここ数年で変化を遂げている。ゲーム会社が超大作を毎年リリースし、実店舗小売りに販売を大きく依存していた時代は終わりつつある。現在は、収益化の機会が何層もあるメディア消費型のビジネスモデルを採用している。インターネットインフラの向上、帯域幅の拡大、ストレージ費用の低下がデジタル配信への移行を支援し、従来の小売販売チャネルと比べて高い利益率が得られるようになった。

主な例としてコンソールゲーム市場が挙げられる。バリューチェーンから小売店を排除し、その代わりにゲーム会社自身のオンラインプラットフォームからゲームをダウンロードすることで、ゲーム会社の粗利益率は50~60%から70~80%に向上しうると見込まれる。現在のゲームのダウンロード率は約50%だが、今後3~5年で60~70%になり、利益率を大きく押し上げると推定する。

ゲームのビジネスモデルにみられるもう1つの変化と企業にとっての大きな機会として、サブスクリプションサービスが挙げられる。大手企業の大半がサブスクリプションサービスを提供している。サブスクリプションモデルは、単にゲームを販売する場合よりも、より安定的で予測可能な売り上げとキャッシュフローを生み出すと我々は見ている。普及率が上昇し、サブスクリプション料金が引き上げられれば、PCゲームとコンソールゲームを合わせて何倍もの収益が得られるだろう。クラウドベースのゲームは「コンソールを持たない」ゲーマーにとっての参入障壁が下がるため、さらなる売上増につながりうる。

UBSエビデンス・ラボの最新調査では、大手ゲームサブスクリプションサービスの認知度の顕著な上昇と普及の加速が明らかになった。ただし、回答者の29%はサブスクリプションサービスを利用していないため、まだすべての企業に伸びしろがある。サブスクリプションサービスに月30米ドル超を支払ってもよいと考える回答者(定期的にゲームをする人の中での)の数が多いことも、投資機会を裏付けている。

クラウドゲームはゲーム産業にとって重要なアプリ

eゲーム産業における最新の創造的破壊と成長の機会は、クラウドゲームである。クラウドテクノロジーによって、好きな場所で、どんなスクリーンや接続機器(コンソール、タブレット、携帯電話、PC等)でもゲームを楽しむことができる。アプリを切り替えるには停止ボタンを押すだけでよい。このテクノロジーがあれば高価なハードウェアを購入せずにすみ、その分の費用をソフトウェアとサブスクリプションに回すことができる。また、ゲームの支出構造も変わるかもしれない。ゲームを購入したり、コンソールにダウンロードしたりする代わりに、一定期間レンタルし、ゲーム内の支出を増やすことが考えられる。このテクノロジーの恩恵を受けるのは大手クラウド事業会社だろう。また、ゲーム中継サービスのほか、広告会社もゲーム内広告を通して恩恵を受ける可能性が高い。企業はクラウドゲームの分野に成長機会を見出しており、コンテンツ獲得とコミュニティの構築に多額の投資を行っているようだ。

eスポーツ 数十億米ドル規模の新産業

eスポーツは、バーチャル空間または現実空間でプレイヤーがゲームをプレイするのを観戦するイベントである。このeスポーツも同様に素晴らしい数字を示している。ニューズーによると、2021年のeスポーツ観戦者数は4億6,500万人だった。新型コロナのパンデミックが落ち着けば有観客のライブイベントが再び盛り返し、eスポーツファンは現実空間のeスポーツイベントに戻って来るだろう。各種ブランドにとっては、こうしたイベントを後援することがファンとつながる機会になる。

ニューズーによると、eスポーツファンの数は2021年末までに2億3,600万人に達したと見られる。この数は年間8%のペースで増加し、2024年までに約2億9,000万人に達すると予想される。同社は、2021年のeスポーツ産業の総売上は10億米ドルを超え、うち60%をスポンサー料が占めると見積もる。新型コロナの感染拡大も、世界的なゲーム活動を加速させる要因となった。さらにはゲーム産業のサブスクリプションサービスとダウンロードへの転換に拍車をかけた。

世界的なオンラインゲームの2021年ワールドカップは、開催されていれば賞金総額は3,000万米ドルだった。非常に多くの観客と接触できるため、広告主はこの市場に強く注目している。

eスポーツのビジネスモデルはまだ発展の初期段階にあるが、機会は大きいと見ている。ニューズーは、eスポーツの2021年の売上高が前年比14.5%増の11億米ドルに成長したと推計する(図表5参照)。売上増に最も大きく寄与したのはスポンサー料で、放映権収入、ゲーム会社収入、グッズ、チケット、デジタル事業、配信がそれに続く(図表6参照)。ゲームコミュニティの規模(ゲーマー数は30億人を超える)と年齢層(ほとんどがミレニアル世代)を考えれば、広告・放映権・グッズの市場は数倍に膨らむ可能性がある。ニューズーは、eスポーツの市場規模が2024年までに16億米ドルに拡大すると見積もっている(図表5参照)。

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本稿は、UBS Switzerland AG、UBS Financial Services Inc.が作成した“Longer Term Investments: Consumer experience”(2022年4月1日付)の一部を翻訳・編集した日本語版として2022年4月14日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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