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原油価格下落で株価反発

S&P500種株価指数は9日に2.6%の大幅高となった。背景には、7日に十数年ぶりの高値を付けた原油価格が9日に下落したことがある。

何が起きたか?

S&P500種株価指数は4営業日続落後、9日(水曜日)に2.6%の大幅高となった。背景には、7日に十数年ぶりの高値を付けた原油価格が9日に下落したことがある。ブレント原油価格は11.9%安の1バレル当たり112.71米ドルまで反落し、コモディティ価格高騰による世界経済への影響懸念を和らげた。米国に先行する欧州市場では、ストックス欧州600指数が4.2%高で取引を終えた。上昇していた安全資産は下げに転じ、金は2.4%安の1オンス当たり1,995.2米ドルとなり、DXYドル指数は0.9%下落した。

債券市場ではリスクオンムードの強まりを受け、また10日に2月の米消費者物価指数(CPI)統計の発表とECB(欧州中央銀行)の理事会を控えていることから、国債の利回りが上昇(価格は下落)した。米10年国債利回りは、7日に1.67%まで低下したが、9日は前日比9ベーシスポイント(bp)高い1.94%となった。ドイツ10年国債利回りも10bp上昇して0.22%となった。フェデラルファンド金利先物市場では米連邦準備理事会(FRB)の利上げ織り込みが進み、年内に25bpの利上げを6回以上、2023年半ばまでには合計で8回以上を予想している。

投資家センチメントの改善は、8日にウクライナが北大西洋条約機構(NATO)の早期加盟を断念する可能性が報じられたのに続き、ゼレンスキー大統領の側近の1人が、ウクライナは安全保障の確約を条件に政治的な中立化についてロシアと議論する用意があると発言したことが背景にあると考えられる。対するロシアも7日、ロシアのペスコフ大統領報道官がロイターとのインタビューで、ウクライナが憲法に中立性を明記し、クリミアをロシア領と認識し、ドネツクとルガンスクを独立国家として認めるならば、ロシアはこれ以上の領土権を主張せず、キエフの明け渡しも要求しないと述べた。

市場の反発は、株価が4営業日続落で売られ過ぎていた反動もあると考えられる。さらに、米国のロシア産原油・ガス禁輸措置と欧州諸国による段階的なロシア依存削減はすでに足元の相場に織り込まれているとのトレーダーの見方も反映しているとみられる。

この状況をどう解釈するか?

我々の基本シナリオでは、対露エネルギー制裁によって、エネルギーの流れが突如強制的に止まるのではなく、グローバルなサプライチェーンからロシアが段階的に排除されることを予想しているが、9日の一連の動きはこうした見方を裏付けるものと考える。何らかの形で停戦に至れば、ロシア産エネルギーに対する追加制裁の可能性は低くなるだろう。また、米国はロシア産化石燃料の輸入を禁止したが、ロシアからの原油輸出のうち米国向けはわずか8%程度である。一方、欧州向けは約6割を占めるため、EU(欧州連合)のアプローチとしては今後も段階的なロシアエネルギー依存の削減になると考えられる。

基本シナリオでは、ブレント原油価格は6月までは1バレル当たり125米ドル前後で推移するが、9月には同115米ドル、12月には同105米ドルまで下落すると予想する。数カ月にわたるコモディティ価格上昇は、経済成長と企業業績にマイナスの影響を及ぼす可能性が高い。しかし、2022年通期では企業業績は堅調な伸びを示すとの我々の見通しには変わりない。基本シナリオにおけるS&P500種株価指数の年末の予想値は4,800とみている。

一方、悲観シナリオでは、欧州諸国が米国の禁輸措置に追随するか、紛争によって供給が混乱するか、あるいはロシアが輸出を停止することにより、ロシア産エネルギーの欧州への流れが突如途絶すると想定する。このシナリオでは、原油価格が1バレル当たり150米ドルを突破し、欧州ではガスが配給制になるかもしれない。これが現実化すれば、欧州の経済成長と企業業績への下押し圧力が2023年まで続くだろう。この場合のS&P500種株価指数の予想値は3,700とみている。

投資見解

相場の変動が激しい状況が続くものと見込まれるが、9日の株価反発は、市場が一気に方向転換しうることを改めて認識させるものであり、単純にリスク資産を売ることはウクライナ危機への対応として最善ではないとする我々の見解も裏付けた。我々は、長期リターンを重視しつつ、ダウンサイドに対するプロテクションを提供する戦略を推奨する。

不確実性が高まる環境下、市場のボラティリティを切り抜けるために投資家には次のような投資行動を勧める。

1.ポートフォリオのヘッジを強化する。株式の保有比率が長期の戦略的資産配分を超えている投資家には、株式の配分を中立に戻すことを勧める。ポートフォリオのディフェンシブ性を高めるにはその他の方法も考えられる。ウクライナ情勢を勘案すると、コモディティ全般が効果的なヘッジとして引き続き機能すると考える。我々が現在推奨しているエネルギー株は、コモディティ価格がさらに高騰した場合に、その恩恵を受ける可能性が高い。また、グローバル・ヘルスケア・セクター、ダイナミック・アセット・アロケーション戦略などもポートフォリオの下落を軽減する手段として検討できる。短期的には米ドルも効果的なヘッジとして機能すると考える。

2.エネルギー移行を捉えるポジション。米国はロシア産原油の輸入禁止に踏み切り、EUもロシア産天然ガスへの依存度を下げる計画を打ち出した。各国の動きはエネルギー安全保障と自給への取り組みの重要性が高まっていることを示すものであり、こうしたトレンドは今般のロシア・ウクライナ危機により拍車がかかっている。エネルギー自給の動きは炭素排出量削減への長期的な取り組みとも合致することから、グリーンテック、空気浄化・炭素削減技術等への投資に追い風になると考える。

3.オルタナティブ(代替)投資で分散化を図る。ウクライナ情勢やインフレ懸念を背景にポートフォリオのボラティリティが増大している。こうした環境下では、様々な地域、セクター、資産クラスに投資を分散させることがさらに重要となる。ヘッジファンドは、株式や債券だけでなく様々な投資対象に分散が可能であり、ポートフォリオのボラティリティを低減する効果も期待できる。また、ボラティリティの高い局面や弱気市場でアウトパフォームを目指すヘッジファンドもある。さらに、プライベート市場への投資も長期リターンを確保するうえで有効と考える。

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本稿は、UBS AGが作成した“Stocks rebound as oil prices retreat”(2022年3月9日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年3月10日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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