House View Weekly

高まる株式市場の不確実性

投資家がウクライナ紛争の影響、コモディティの供給混乱の可能性、対ロ制裁強化への懸念を強めたことから、先週は世界の株式市場の変動性が一段と高まった。

今週の要点

高まる株式市場の不確実性

投資家がウクライナ紛争の影響、コモディティの供給混乱の可能性、対ロ制裁強化への懸念を強めたことから、先週は世界の株式市場の変動性が一段と高まった。我々の基本シナリオでは、夏までに停戦となり、北大西洋条約機構(NATO)とロシアの非難の応酬は沈静化するとみている。制裁は、エネルギー供給の即時停止を迫るのではなく、世界のエネルギー供給網からロシアを徐々に締め出すことになると考える。このため、北海ブレント原油価格は6月に125米ドル/バレルまで上昇した後、12月に105米ドル/バレルまで下落するなど、エネルギー価格は年後半に低下すると予想する(訳注:北海ブレント原油先物は7日朝、一時1バレル当たり140米ドル近くまで急伸)。

そうした状況ではあるが、2022年の米国企業の利益成長率はプラスを維持すると見込まれ、3月7日時点で4,328の水準にあるS&P500種株価指数は年末には4,800近くまで上昇すると我々は予想している。

しかし、ロシアのウクライナ侵攻により株式市場の不確実性は一段と高まった。不確実性の背景にはプーチン大統領の狙い、今後の制裁の範囲、軍事衝突の行方、NATO非加盟国の防衛政策、中国の想定されるスタンス、コモディティ価格、世界の景気・物価、中央銀行の金融政策など、多くの要因が挙げられる。

こうした不透明感の強い環境下、投資家には足元のポートフォリオの資産配分を見直し、株式の保有比率を長期の戦略的資産配分目標に沿ったものに戻すことを勧める。

要点:株式の戦術的(短期的)スタンスを「推奨」から「中立」に変更する。ユーロ圏株式も、域内の不確実性の高まりと、経済成長率および企業業績予想の下方修正の可能性を踏まえ、同様に中立に変更する。中国株式市場は、他のアジア諸国の株式市場に比べると引き続き魅力度が高いと考える。

中央銀行は成長リスクに敏感に反応

先週は国債利回りも大きく変動した。エネルギー価格が上昇し、ウクライナ紛争の影響を巡る不透明感が高まる中、投資家は中央銀行の金融引き締めペースを再評価した。2月中旬に2%超の高水準を付けた米国10年国債利回りは1.73%で週の取引を終えた。

ドイツ10年国債利回りは1日の下げ幅としては2011年の欧州債務危機以来の大きさを記録し、欧州中央銀行(ECB)の利上げ観測は後退した。週初に+0.16%の水準にあったドイツ10年国債利回りは、週末には-0.10%とマイナスに戻った。

FRBおよびECBの高官は、ウクライナ紛争により金融引き締めのペースが鈍化する可能性を指摘した。FRBのパウエル議長は金融引き締めを「慎重に進める」必要があるとの考えを示し、ECBのパネッタ理事は、政策調整はウクライナ危機の影響をみながら「慎重にステップを踏むべき」と述べた。

しかし、こうしたコメントは、取り巻く環境を含め全体的に捉えることが重要である。FRBの金融引き締めについて、市場は依然として年初よりも速いペースを織り込んでいる。先週、パウエル議長はFRBが3月から「一連」の利上げ局面に入るとの見通しを示した。また、FRBはインフレが「さらに高まるか、または長期化するようであれば」50ベーシスポイント(bp)の幅で利上げを行う用意があり、労働市場は「著しく逼迫」しており、価格上昇は「幅広いモノやサービスに広がっている」と同議長は付け加えた。

要点:中央銀行は警戒感を示しているが、投資家には引き続き利上げに備えることを勧める。

コモディティによるヘッジを維持する

コモディティ価格はさらに上昇した。ブレント原油価格は7日に一時1バレル当たり139米ドルと、2008年以来の高値を付けた。その後125米ドルまで下落したものの、本稿執筆時点で年初来60%超の上昇だ。また、卑金属(ベースメタル)および農産物も上昇するなど、コモディティ価格は総合指数レベルでも年初以降大きく上昇している。

しかし、価格は上昇しつつも、さらに急騰する可能性はあり、足元の状況では、コモディティは地政学リスクのヘッジとして引き続き有効と考える。

ロシアに対する制裁はエネルギー輸出には及んでいないが、その可能性は残っている。週末、ブリンケン米国務長官は、ロシア産原油の輸入禁止の可能性について、米政府は欧州と「非常に積極的に協議」していると述べた。そうした措置が取られる前であっても、ロシアの金融システムに対する制裁および更なる追加制裁への不安が影響を及ぼしている。エネルギーを直接対象とする制裁が原油の到着前に科せられる可能性を恐れて、銀行は輸出信用の供与を拒否し、買い手はロシア産原油の購入を回避していると報じられている。ロシアの一部銀行が国際銀行間通信協会(SWIFT)から締め出されるなど、決済網は混乱しており、コモディティのサプライチェーンは悪影響を受けるとみている。

要点:ウクライナ紛争およびそれに伴う対ロ制裁は、天然ガス、パラジウム、原油、小麦、肥料、工業用金属など様々なコモディティに影響を及ぼし、価格はさらに急上昇する可能性がある。また、投資家にはロール・リターンを考慮することを勧める。コモディティの先物カーブがバックワーデーション(期近物価格が期先物価格を上回る状態)なので、今年はエネルギーと農産物を牽引役に、コモディティとしては最大5%のリターンが期待できると考える。

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本稿は、UBS AGが作成したUBS House View-Weekly Global (2022年3月7日付)を一部翻訳・編集した日本語版として2022年3月9日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。

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