エネルギー

原油供給の混乱で需要鈍化の見込み

世界の余剰生産能力が限られるなか、原油価格のさらなる上昇は原油需要の鈍化を引き起こし、年後半には米シェール業者の増産を促すだろう。

  • ロシア産原油の輸出と生産が急減しつつあることから、ブレント原油価格の6月末予想を1バレル当たり125米ドル(従来は95米ドル)、9月末を同115米ドル(同95米ドル)、12月末と2023年3月末を同105米ドル(同100米ドル)に引き上げる。
  • 世界の余剰生産能力が限られるなか、原油価格のさらなる上昇は原油需要の鈍化を引き起こし、年後半には米シェール業者の増産を促すだろう。

ロシアのエネルギー輸出はいまのところ、世界的な制裁対象とはなっていないが、それでも輸出は減少している。将来的な制裁や風評被害を恐れて、ロシア産原油の買手が自主的に購入を制限しているためだ。ロシアの貯蔵能力が限られるため、こうした輸出の減少もまた遅れて生産縮小をもたらす可能性がある。

ウクライナに侵攻する前、ロシアの原油輸出量は日量470万バレル、石油製品は日量280万バレルだった。エネルギー情報調査会社エナジー・インテリジェンスの推計によると、原油は日量150万バレル、石油製品は日量100万バレルほどが影響を受けている。影響を受けるのは、タンカー経由での原油輸出のみであり、パイプライン経由での原油輸出(日量約180万バレル)は影響がないということだ。

石油輸出国機構(OPEC)加盟国と主要産油国で構成する「OPECプラス」の余剰生産能力が限られるなか、原油価格の一段の上昇は必至だ。1バレル当たり125米ドルになると、世界の石油支出額は国内総生産(GDP)の約5%に上昇するとみられる。この水準になれば、需要の伸びが鈍化するとともに、年後半には米シェール業者が増産に転じる可能性がある。どの程度まで価格が上がれば需要の伸びが鈍化し始めるかは、米ドルの水準(大半の石油が米ドル建決済のため)とエネルギーに対する補助金によって異なる。我々は需要鈍化の目途は1バレル当たり125米ドルとみているが、混乱がさらに激化するか長期化する場合には、価格が一段と上昇することもあるだろう。イランと主要国が核合意再建について数日中に合意するとの観測があり、短期的には価格変動(ボラティリティ)が高まる可能性はあるが、ロシア産原油輸出量の急減による影響は大きく、原油価格の下落は一時的と予想する。

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本稿はUBS Switzerland AG、UBS AG Hong Kong Branch、UBS AG Singapore Branch が作成した“Energy: Crude oil: Supply disruptions require demand destruction ”(2022年3月4日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年3月7日付でリリースしたものです。本稿の末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本稿に記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本稿中の全ての図表にも適用されます。

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