ドル円

強弱綱引きでボックス圏にとどまる

ドル円は2月半ば以降、ロシア・ウクライナ情勢の急速な悪化にもかかわらず、非常に狭いレンジで取引されている。

  • ドル円の見通しは、2022年6月を1米ドル=118円に据え置いた上で、2022年9月を従来の116円から118円、12月を従来の116円から115円に修正し、新たに2023年3月の見通しを115円に設定する。
  • ドル円はこれまで米連邦準備理事会(FRB)のタカ派姿勢に支えられて来たが、今後、世界のリスクセンチメントが急速に悪化した場合には、110~112円水準へと大きく調整する可能性を排除できない。
  • 円ショート(売り持ち)や円建て借入のポジションを持つ投資家には、1米ドル=118円以上での利益確定を勧める。

タカ派のFRBと市場のリスク回避センチメントの間でボックス圏にとどまる

ドル円は2月半ば以降、ロシア・ウクライナ情勢の急速な悪化にもかかわらず、114.5円~116.5円という非常に狭いレンジで取引されてきた。2月の動きが落ち着いていたのは、ドル円以外にも、米ドル/スイス・フラン(0.915~0.93で推移)や米国10年国債利回り(1.85%~2.05%で推移)といった安全通貨や安全資産にも共通している。対照的に株式市場は、地政学的緊張が高まって以降、比較的強い下落圧力にさらされている。ドル円が底堅く推移している理由の1つとして、FRBがタカ派姿勢を維持している点が挙げられるだろう。ロシア・ウクライナ情勢が悪化しているにもかかわらず、FRB高官は引き続き利上げの可能性を示唆している。

以上を踏まえ、我々はここから短期的に1ドル118円に向けて若干の円安ドル高が進むとの見通しを継続する。とは言え、今後数週間は、ロシア・ウクライナ情勢の展開が市場を大きく左右するだろう。そのため、世界的にリスク回避の動きがさらに強まった場合、ドル円が急落(たとえば112円以下に)する可能性は排除できない。特にFRBの金融引き締めのペースと幅に対する市場の期待が低下し始めたときにはその可能性が高くなる。

年末に向けて日本国内で円への追い風が予想されるため、ドル円は118円が天井になる可能性が高い。日本では、生鮮食品を除くコア消費者物価指数(CPI)が1.5~1.7%に上昇する (通信料金の値下げの影響が消え、原油価格がまだ上昇するため) ことが予想され、また黒田日銀総裁の任期満了(2023年4月)が近づいていることもあって、2022年後半から2023年初めにかけて、何らかの金融引き締めの素地が整う可能性が高い。日銀が政策を変更するとの見通しが引き金となって、ネットの円売りポジションが買い戻され、さらなる円安に歯止めがかかる可能性がある。

投資判断

見通し:2021年は円に対して米ドルが103円から115円へと大きく上昇したが、2022年はボラティリティ(変動幅)の上昇を伴いながら横ばいで推移すると予想する。

レンジ:FRBの金融引き締め姿勢からドルは118円に向けて上昇する余地があるが、リスクオフの地合いを受けて113~115円に下落する可能性もある。

リスク要因:ロシア・ウクライナ情勢が世界経済の見通しに重大な脅威となることが判明した場合には、ドル円は一段と大きく調整し、105~110円のレンジにまで下落する可能性がある。

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本稿はUBS AG Singapore Branch および UBS Switzerland AG が作成した“USDJPY: Stuck between hawkish Fed and risk-off sentiment”(2022年2月28日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年3月1日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。

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