マンスリーレター2月号

大気圏への再突入に備える

現在、FRBによる経済と市場のソフト・ランディングの実現性に対する不透明感が高まり、1年以上ぶりに市場ボラティリティが高まっている。

2022年は、これまでの高成長、高インフレの環境から、緩やかな成長と適度なインフレの世界へと移行していく見通しである。昨年のマンスリー・レター9月号では、この転換を大気圏外から帰還する宇宙船にたとえ、起こり得る2つの可能性を示した。好ましい軌道においては、成長率が高水準を維持しながらインフレ率は急速に低下していく。一方、厳しい軌道では、成長率が鈍化する一方でインフレ率は高止まりする。我々は、インフレ懸念が高まったときには、グロース株や巨大ハイテク銘柄よりも景気敏感株、エネルギー、金融セクターなどを中心にポジションを構築することを勧めた。

現在、FRBによる経済と市場のソフト・ランディング(滑らかな着陸)の実現性に対する不透明感が高まり、1年以上ぶりに市場ボラティリティ(変動率)が高まっている。昨年12月にオミクロン変異株の感染者数が急拡大して以来、経済成長の鈍化とインフレ率に対する不安が株式市場の重石となってきた。ロシアとウクライナ間の緊張もこうした懸念に拍車をかけている。

市場はすでに年内に計4~5回の利上げを織り込み、最初の利上げを3月と予想している。我々の基本シナリオでは、現在予想されている利上げ幅は経済成長を妨げるものではなく、金融引き締めによる市場へのマイナスの影響は企業の増益基調によって十分に相殺されるとみている。ロシア・ウクライナ情勢は、いずれ安定し緊張が緩和するとの見方を基本シナリオとしている。

悲観シナリオでは、高インフレ率に対する不安から、FRBは市場が現在予想しているよりも積極的に利上げを進めると想定している。この結果、株価バリュエーションが大きく低下するだけでなく、企業利益も金融環境の引き締まりと消費者需要の軟化の影響を受ける可能性が高いと想定される。ウクライナ・ロシア危機が激化してコモディティ価格が急騰すると、状況はさらに複雑化する可能性がある。

楽観シナリオについては、株式市場がこのように混乱しているときに想定するのは難しいが、インフレ率が後退し始めれば、FRBは金融環境に対応して柔軟に政策を運営するとの見方が市場に戻るかもしれない。過去の動きを振り返ると、経済成長が堅調であれば、利上げサイクル中でも市場は好調に推移した。オミクロン危機はピークを過ぎて行動制限を緩和している国もあり、サービスセクターの成長が再び刺激されるだろう。さらに、FRBによる引き締め観測は強いものの、量的緩和策による市場への資金供給は続いており、これが景気拡大を支えていることも忘れてはならない。FRBのバランスシートは引き続き毎月600億米ドルずつ拡大しており、現在の規模は8兆9,000億米ドルにまで膨らんでいる。一方、中国は金融緩和政策を積極的に続けている。

流動的な市場要因も散見されるため、現在は単純に「買いまたは売り」と言い切れない投資環境である。以下は現状を踏まえた我々の主な投資見解である。

– a)景気敏感株への投資を継続する:市場のボラティリティは高まっているが、経済成長は今年前半は引き続き堅調に推移する見通しである。したがって、景気敏感株は引き続き好調なパフォーマンスを上げると予想される。具体的にはユーロ圏、エネルギー株、コモディティ市場など世界の経済成長の勝ち組となるセクターを勧める。

– b)ディフェンシブ銘柄を一部組み入れる:今年はボラティリティの高まりと成長鈍化に備えるため、厳選したヘルスケア銘柄、高配当銘柄、ダイナミック・アセットアロケーション(機動的な資産配分の変更)といったディフェンシブ戦略も一部に組み入れてバランスを取ることが重要である。

– c)金利上昇に備える:今後数カ月では金融セクターが金利上昇の恩恵を受け、バリュー株がグロース株をアウトパフォームすると予想する。さらにFRBが予想以上に積極的に利上げを行えば、これらの追い風は一層強まるだろう。株式と債券の相関性が高まる環境下では、ヘッジファンドのようなオルタナティブ投資(代替投資)も勧める。

– d)ハイテク株のボラティリティ拡大を利用する:今年に入り多くのグロース株が大幅に下落した。我々は、この下落局面を長期的な利益成長が見込める企業への投資機会と捉えている。特に、人工知能(AI)、ビッグ・データ、サイバーセキュリティといった創造的破壊技術の分野が有望とみている。

– e)カーボン・ネットゼロ(温暖化ガス排出量実質ゼロ)に向けたポジションをとる:エネルギー移行は、今後10年の主要なマクロ経済トレンドの1つである。ウクライナ・ロシア間の緊張が及ぼすエネルギー供給への影響が懸念されているが、コモディティを組み入れることは地政学的リスクへのヘッジになり得る。

11月に「Year Ahead 2022:新時代のディスカバリー」を発行して以来、グロース株よりも景気敏感株とバリュー株を推奨するという我々の投資判断は好調な成果を上げている。

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本稿はUBS AGが作成した“Monthly Letter: Approaching reentry”(2022年1月27日付)を翻訳・編集した日本語版として2022年2月1日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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