日本株式

コロナ後の正常化に備える:2022年の回復期待は残る

日本の経済活動再開の恩恵を受けるセクターは国内で最も過小評価されているセクターの1つであり、2022年の投資先としての魅力が高いとの見方を維持している。

  • 日本では、旅行、外食、その他の娯楽など、経済活動の再開に関連する分野での需要が高まっている。例えば新幹線の乗車率は、足元で2019年の水準の60%を超えるまでに回復している。
  • だが、(これまでのところ)企業利益の回復が緩慢であることや、来年以降も新型コロナの新たな変異株であるオミクロン株が影響を及ぼす可能性があることなどから、投資意欲は依然として弱い。オミクロン株の感染が大きく広がる可能性は否定できない。
  • ただ、デルタ株が流行した時と同じく、オミクロン株への対処方法が明らかになれば、投資家の期待は改善するだろう。我々は、日本の経済活動再開の恩恵を受けるセクターは、国内で最も過小評価されているセクターの1つであり、来年前半に状況がより明らかになれば、海外投資家もその魅力に気付くだろうと考える。

2021年2月、国内のワクチン接種率が高まり、新型コロナウイルス関連の行動制限が緩和されるとの予想に基づき、我々は日本の経済活動再開の恩恵を捉えるテーマ「日本の正常化に備える」を設定した。当時の日本のワクチン接種率は多くの国々に大幅に後れを取っていた。しかし2021年7月以降、ワクチン接種率の伸びは加速し、現在は大半の国の水準を上回っている(図表1参照)。

不要不急の外出と県境をまたいだ移動を避けるよう求めた緊急事態宣言が発令され、デルタ株の感染拡大や、1日の新規感染者数が8月に2.5万人に達する中、宣言は幾度か延長された。だが1日の新規感染者数が大幅に減少(12月はおよそ100人)すると、緊急事態宣言は最終的に9月末に解除された。

日本では、旅行、外食、その他の娯楽など、経済活動の再開に関連する分野の需要が高まっている兆しが数々見られる。例えば、新幹線の乗客数は直近で2019年の水準の60%超まで回復している(図表2参照)。日本の経済活動再開の恩恵を受ける銘柄は、TOPIXと比較して企業収益の回復ペースが遅いことや、国内サービスへの繰延需要がほぼ2年に亘って積み上がっていることなどを勘案すると、投資先としての魅力が高いと考える。

日本の経済活動再開関連セクターとハイテク企業とを比較すると、ハイテク企業の収益は、コロナ禍での旺盛な需要を背景に力強く回復し、株価も極めて好調に推移した(図表3、図表4参照)。一方、経済活動再開関連銘柄は、企業収益の回復が日本企業全体に大きく後れをとっており、株価パフォーマンスも大きく下回っている。

我々は、日本の経済活動再開関連銘柄は、2022年の投資先としての魅力が高いとの見方を維持している。それは、日本株式市場全体に大きく後れを取っており、2022年に企業収益の回復が見込まれるからだ。

とは言え、投資意欲は依然として弱い。主として企業利益の回復が(これまでのところ)緩慢で、来年以降オミクロン株の感染拡大が影響を及ぼす可能性があるためだ。オミクロン株感染が大きく広がる可能性は排除できないが、3回目のワクチン接種を行うことで対応できるかもしれない。さらに、新型コロナに対する新たな武器である、抗ウイルス薬が2022年初めに実用化される見通しだ。

抗ウイルス薬は、既存のワクチンとは異なりスパイクタンパク質をターゲットにしていないため、スパイクタンパク質が既存の変異株とは異なる新たな変異株に対する有効性を疑う根拠はないと考える。

政策支援については、岸田政権は、感染状況の落ち着き具合に応じて「Go Toトラベル」と「Go Toイート」のキャンペーンを来年早々に再開すると発表した。「Go To」キャンペーンは旅行と外食の費用を助成する全国的なプログラムで、一部の地方自治体はすでに独自の地域的な助成プログラムを開始している。日本政府は、日本の総雇用の約9%を占める、外食・宿泊・その他の娯楽産業を全面的に支援すると考える。

最良のシナリオは、既存のワクチンと追加接種が日本におけるオミクロン株の感染拡大を抑制することだ。第2のシナリオは、改良型ワクチンを新たに2回接種することが必要になるというもので、これには3~6カ月の準備期間を要するだろう。デルタ株流行時と同様に、オミクロン株の対処方法が明らかになれば、投資家の期待は改善するはずだ。我々は、日本の経済活動再開関連セクターは、国内で最も過小評価されているセクターの1つであり、来年早くに状況がより明らかになれば、海外投資家もその魅力に気付く可能性が高いと考える。

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本稿は、UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント株式会社が作成した“Japanese equities: Be ready for Japan’s normalization: A wild card for 2022”(2021年12月17日付)を翻訳・編集した日本語版として2021年12月21日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます
居林 通

UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント株式会社
チーフ・インベストメント・オフィスジャパン・エクイティリサーチ・ヘッド

居林 通

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2006年9月にUBS証券株式会社にアナリストとして入社。以来、日本の株式、経済動向を分析し、国内・海外に発信している(UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント株式会社の営業開始に伴い2021年8月に同社に移籍)。以前は1992年から2003年まで国内大手投資信託にてアジア株および日本株のファンドマネージャーを経験、その後2003年から2006年までヘッジファンドにて日本株の運用などに携わった。
日経CNBCなどにコメンテーターとして出演する傍ら、日経ビジネス、日経新聞、ロイターなどの各種メディアでも解説記事、インタビューなどを通してUBSの投資見解を提供している。現在の連載は週刊ダイヤモンド「株式市場 透視眼鏡」、日経ビジネスオンライン「市場は晴れ時々台風」。2001年エモリー大学ゴイズエタビジネススクール(米国アトランタ)にてMBA取得。

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