Monthly Letter 12月号

次に来るのは?

2022年は前半と後半で景色が変わると予想する。年初は経済成長率とインフレ率が高い状況が続き、後半に入るといずれも正常水準へと低下するだろう。

昨年の今頃は、新型コロナウイルスのワクチンの有効性はまだ不明であった。当時のメディア報道をみると、世界がいかに新型コロナウイルスを恐れていたかがわかる。そして、世の中の動きがいかに速いかということも。ちょうど1年前のマンスリーレター「次に来るのは?」では、あまりに悲観的な見方が市場に織り込まれていると結論付けた。今日、VIX指数や株価といった市場センチメント指標をみると、当時のような恐怖の多くが市場からはすでに払拭されたように思われる。だが、こうした恐怖がないにもかかわらず、いや実はないからこそ、「来年はどうなるか?」という疑問に答えることは容易ではない。

2022年を迎えるにあたっての大きな疑問は、高騰するインフレ率と経済成長率に、政策当局がどう対応するかだ。我々が最近発行した「Year Ahead 2022:新時代のディスカバリー」の中で、次に何が来るのか、そして現時点での最高の投資機会は何かについて見解を示している。詳しくはYear Ahead 2022も是非ご一読頂きたい。

2022年は前半と後半で景色が変わると予想する。年初は経済成長率とインフレ率が高い状況が続き、後半に入るといずれも正常水準へと低下するだろう。各国の中央銀行は金融緩和策の規模を縮小するが、過度な引き締めには慎重になる可能性が高い。短期的には、破壊的技術と温暖化ガス排出量実質ゼロ(カーボン・ネットゼロ)への移行が次第に市場に影響を与えようとしており、最も重要な投資トレンドになるだろう。

経済成長率が高い状態で2022年が始まることから、ユーロ圏株式や日本株式といった世界の経済成長からの勝ち組に注目する。ただし、成長率が正常水準へと低下すると有利になるヘルスケア・セクターも推奨してこのポジションとのバランスを図る。各国の中央銀行が低金利を維持しており、インカム収入を重視する投資家もインカム目標の達成が困難になるが、非伝統的な利回り商品に投資機会が見出せる。

長期テーマの中では、カーボン・ネットゼロへの移行が順調に進んでいることから、グリーンテックを有望と考える。さらに、今後10年では人工知能(AI)、ビッグ・データ、サイバーセキュリティの3つの主要技術が非常に重要になると考え、注目している。

前半と後半で景色が変わる1年は、景気敏感株から

我々は現在、現代史の中でもかなり高水準の経済成長率を経験している。牽引しているのは経済活動の再開と過剰貯蓄の取り崩し、そして企業の在庫補充だ。2021年の世界の経済成長率は6%と予想する。2022年に入ってもこの勢いは衰えず、世界の経済成長率は前半を通じて過去平均を大きく上回ると予想する。1-3月期(第1四半期)と第2四半期の平均成長率は前期比4.9%と予想する。

ところが、経済活動が完全に再開し、過剰貯蓄の大半が消費され、緊急の景気刺激策が縮小するとともに、経済成長の牽引力が弱まるだろう。つまり、2022年は時間の経過とともに経済成長率が鈍化し、後半の前期比経済成長率は平均で3.5%にとどまると予想する。

この「前半と後半で景色が変わる1年」という投資テーマは、地域レベルでも変わらない。上期には、先進国が新興国よりもはるかに高い成長率を達成すると予想する。ワクチン接種が新興国よりも早く進み、ある程度の感染再拡大は容認する姿勢などが経済にプラスに働くとみられるからだ。ところが、第2四半期以降は、中国の経済成長の加速に牽引されて新興国の成長率も回復に向かうだろう。

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本稿はUBS AGが作成した“Monthly Letter: What’s next?”(2021年11月18日付)を翻訳・編集した日本語版として2021年11月24日付でリリースしたものです。本レポートの末尾に掲載されている「免責事項と開示事項」は大変重要ですので是非ご覧ください。過去の実績は将来の運用成果等の指標とはなりません。本レポートに記載されている市場価格は、各主要取引所の終値に基づいています。これは本レポート中の全ての図表にも適用されます。
Mark Haefele

最高投資責任者
UBS Global Wealth Management

Mark Haefele

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プリンストン大学で学士号、ハーバード大学で修士号と博士号を取得。フルブライト奨学生として、オーストラリア国立大学で修士号を取得。ソニック・キャピタルの共同創立者および共同ファンドマネジャー、マトリックス・キャピタル・マネジメントのマネージング・ディレクターを務め、チーフ・インベストメント・オフィスが設立された2011年に、インベストメント・ヘッドとしてUBSに入社。

ハーバード大学にて講師および学部長代理を歴任。市場動向ならびにポートフォリオ管理に関するハフェルの見解は、CNBC、Bloombergをはじめグローバルなメディアで定期的に取り上げられている。

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